自分が居なくなった後、会社はどうなる
昨今、中小企業を中心として事業承継問題がクローズアップされています。経営は好調で、息子が次の経営者に決まっている、というような会社はごく稀で、後継者がいない、長期的な市場が確保できないなどの悩みを抱えた会社のほうが圧倒的に多いと言われています。
「この先、会社をどうすれば良いのか」を考えている経営者は少なくないと思いますが、「自分が居なくなった後、会社はどうなるのか」について明確なビジョンを持てている経営者は決して多くありません。その差の分だけ明確に社会課題が存在していることになります。
従業員の中から後継者を探すと言っても、制度面・人材面で難しい、社外から経営者を連れてくるにしても人的ソースが不十分、となると結局M&Aくらいしか有効な対策は考えられない、というような思考が働き、それなら話が具体的になってから相談すれば十分だろうと考え、ついつい結論を先送りしてしまいがちになるわけです。なぜそうなるのでしょうか?
この原因は、実は検討すべき将来像がしっかりと描けていないことにあります。自分が元気であるならば、やりたいこと・やれること・やるべきことを考える中でおのずと会社の将来もしっかりと考えることができるのですが、「自分が居なくなった後」のことというのは意外にも考えをまとめづらいものです。理由は簡単で、「自分がそこにいないから」、つまり自分が居なくなった後の会社は、今の自分にとって突然ヨソの世界の話になってしまうのです。
考えを進めるためには、多少頭の中を再整理する必要があります。ここでカンタンにそのシミュレーションをしてみましょう。自分が居なくなった次の朝のことを想像してください。かなりの確率でいつもと同じように朝が来て、社会が動き出し、会社の門が開き、社員が出勤してくるはずです。設備はいつものように稼働して、いつものように仕事が流れてゆく。その景色は長年あなたが手塩にかけてきた「あなたの会社」そのものであるはずです。
あなたのいる・いないに関わらず、あなたがお世話になり、あなたが貢献してきた社会は厳然としてそこにあります。そして社会の負託に応えるためにあなたが手掛けた事業もまた、そこにあり続けている可能性がとても高いということです。
あなたがいなくなった翌日も、その翌日も景色はたぶん大きく変わることにはならないでしょう。だとするなら、30年後にはどうなっているでしょうか?あるいはどうあってほしいと思われますか?
この思考プロセスを経ると、未来の会社がヨソの世界の話ではなくなると言う変化が起こります。「30年後、社会はこうなっていると思う。その前提で、当社にはこんな役割を果たしていてほしい。」そうです。この絵が描ければあとはいつもの意思決定と同じこと。そうです、すべてはビジョンの可視化にかかっていたのです。
何時かわからないその日がまだ来ていない以上、あなたの会社には今、あなたがいるのです。だとしたらその責任において、30年後を真剣に考えることはおかしくもなんともありません。むしろそれこそが明日に責任を持つ経営者の取るべき態度だということを、改めてしっかりと認識してください。
今日を生きるものの責任として、30年後に思いを馳せる経営者を当社はいつでも全力で応援しています。
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