事業変革とは、実際には、何をするのか。4つの事例から解る、そのインパクトの大きさに私も驚く!!
住宅工事業K社の新オフィスを訪問しました。
そのオフィスは、駅前のビルディングの中にあります。
そこでは、10名ほどの社員が働いています。パソコンに向かう者、そして、一つのテーブルで3名ほどが打ち合わせをしています。
私は、K社長に言いました。
「正に、オフィスですね。」(笑)
K社長は、顔を私に向け、言います。
「はい、夢にみたオフィスです。」(笑)
次にK社長は、下のフロアーに私を連れていきます。
「ここが、コールセンターの部屋です。」
5名ほどの女性が、耳にヘッドマイクをつけ、電話対応しながら、キーボードを打っています。
3年前の工事会社の面影は全くありません。
「事業変革」、経営の世界では、頻繁に使われる言葉です。
しかし、それが実際にどういうものなのか、解っている人は多くはいません。そして、それ以上に、それをどのように行うのか、そのプロセスを解っている人は殆どいません。
事業変革、それは、字のごとく事業をがらりと変えてしまうことを意味します。
その後には、それまでの事業の気配は微塵も残りません。そして、組織の形も、大きく変わります。会社のありとあらゆるものが、変わってしまうのです。
以下に、事業変革を成功された4社の事例を挙げます。
この4社とも、「停滞を抜けたい」とご相談を頂きました。
「年商〇億でとまっている」、「これ以上成長するイメージがない」と言われました。
停滞の理由は明白です。
事業モデルの限界に来ているのです。
売上げを増やそうとしても、その事業モデルでは、無理というところまで来ているのです。これ以上進むためには、事業モデルの変革が必要になります。
コンサルティングの内容を説明すると、次の質問がよくあります。
「先生、当社は変革できるのでしょうか。」
その顔には、不安と期待が入り混じっています。
私は、素直に答えます。「解りません。」
この段階では、私にも、「その事業をどのように変えるのか」、まったく想像が付いていないのです。「こうやったらうまく行く」というアイディアが有って、仕事を受けることなど殆どありません。その考えが有ったとしても、その通りに行ったことは皆無なのです。
その状態からのスタートとなります。すべての会社が、何も無いなかでの、スタートとなります。社長の絞りだしたアイディアと経験、私の持つ大きくなる事業の条件と事例、それを材料にして真剣勝負のディスカッションを行います。
そこから何かが生まれます。その小さなアイディアを実際に動いて検証します。すると、色々な問題と共に可能性が見えてきます。それもビックビジネスの可能性が見えてくるのです。
そこからも仮説と実行を繰り返し、事業モデルを完成の域まで高めていきます。同時に、信念を固めることになります。それを成し遂げたのが次の4社となります。
事例A社:町の歯科医院を3店舗展開していた。
自社で編み出した必勝パターンを一つのパッケージにし、それを同業者である歯科医院に提供する、いわゆるFCビジネスである。
いままでは、医院長先生と医療スタッフという組織であった。FCビジネスでは、別会社を立ち上げ、社員を雇う。社員の主な仕事は、マーケティングと営業、サービス開発、加盟店のフォローである。3年経過の今100店舗となり、4名で月700万円の粗利高を上げるようになっている。
事例B社:元々は、飲食店やホテルなどの、ユニフォームの販売と管理、クリーニングを行っていた。
変革後は、「ユニフォームの管理の仕組み」を売る会社になっている。
この変革の過程は、当然、楽なものでは無かった。売上げの主がまるっきり変わるのである。前は、ユニフォームの販売と月々の作業料であった。後にはシステム(定額)の使用料になるのである。
いままでの本社は郊外の高速道路近くにあり、組織の構成は、クリーニングやその運送に関わる作業スタッフが中心であった。現在、都心への移転の予定がある。BtoB営業の経験者と、システム開発部員の獲得に急いでいる。
事例C社:システムの受託開発業。大手1社の売上げの割合が非常に高い状態であり、年々その単価は悪くなっていた。
しかし、文句を言える関係ではない。
現在は、老人介護施設向けのパッケージシステム業への移行の途中である。
この冬まで、自社で集客販売し、現場施工まで行ってきた。いよいよ「代理店での販売、協力会社による施工」という次の段階に移る。
現在、全国展開を見越し、代理店・協力業者の開拓とその管理の仕組みを急ピッチでつくっている。先日の経営発表会では、「自社はメーカーになる」と社員に発表した。
事例D社:ホームページ、カタログ、看板など、販促物作成を主としてきた。
このコラムの読者はよくご存じのことであるが、「クリエイティヴ」、「一回きりの売上」、そして、「相手合わせ」、そのままやっていれば苦しくなるばかりの業種である。案の定、社長も社員も疲弊しきり、業績も毎年ギリギリ黒(実質、赤)であった。
既存の雑多なニーズの中から、ある業界向けのサービス(サイネージとシステム)を開発した。当初その販売からメンテナンスまで自社で行っていたが、レンタル機器大手数社と提携した。自社の固定費を上げず、かつ、業界のシェアをスピードで取りに行っている。
組織構造は、レンタル機器会社への営業、商品の開発と更新、サポート、物流、事務部となっている。機器自体は、自社仕様で中国企業に製作を委託。
これらの会社では、事業モデルを大きく変革することに成功しました。
それに合わせ、組織も大きく変わりました。
まさに、事業の定義が変われば、組織も変わるということです。そこで働く人もガラリと変わってしまったのです。
この4社に共通して言えることは、大きくは次になります。
- ビジネスの川上に行った。自分たちの企画をつくり、自分たちで値決めをし、自分たちで売る。まさにメーカーである。
- 自分たちのコアコンピタンス(核)が、企画と販売であることを自覚した。
- そして、ビジネスの座組みをつくる。自分達で抑えるべきところを抑え、そして、その他の多くを外注する。その座組み構築こそが自社の業である。
- その外注を上手に使う。外注業者の選定、依頼、管理(品質、納期)、そこに自分達のノウハウを積み上げる。
- 社員の多くは、知的労働者である。マーケティング、販売、企画、開発、システム、そして、仕組みを作る。一部、作業層を持つが、社内では明確に分かれている。
冒頭のK社も、事業変革を見事に成功させた会社です。
上記の5項目にすべてが当てはまります。
元々は、BtoC向けの住宅の修繕を受ける会社でした。
問い合わせがあると、社長自ら訪問し、要望を確認します。カーポートからリフォーム、水回り、基本何でもやります。
昼は、営業と現場を見て回っています。夕方事務所に戻ってから、材料や工事部隊を手配します。夜遅くに自宅に戻り、翌朝出社すると見積もりの作成です。
そんな毎日に疲れていました。組織の構成は、現場で作業する社員が多くをしめていました。深夜天井を眺めている時に、「自分一人ではもう無理だ。」と口から出た翌日に、当社に電話を入れました。事務所に来られた時のK社長は、目は滲み、体全体が浮腫んでいました。
あれから、3年が経ちます。
見事に事業変革をやり遂げました。
今の事業も、住宅に関する工事業であることに変わりありません。
しかし、内容は全く違います。工事の多くを外注業者に任せています。一部、自社に工事部隊がいますが、それは外注業者を上手に使うためです。(外注価格の適正化と標準化とその管理)
2名の女性スタッフと社長で、マーケティングや販促物作成などの業務をやっています。最新のSNSなどのノウハウは、コンサルタントを入れています。
その結果、WEBからの引き合いが8割という成果を出せています。
その問い合わせを受けたり、お客様をフォローしたりするのが、コールセンターの役目です。また、外注業者の手配もします。訪問調査から提案、契約、受注後の施工をお願いしています。
K社長は、一度は、このコールセンターを外注化することも検討しましたが、結局、内製化することにしました。マーケティング、外注の品質コントロール、そして、このコールセンターこそが自社のコアコンピタンスであると考えたのです。
このコールセンターの責任者に、エースの女性社員を任命しました。その彼女が、マニュアルや仕組みをつくります。コールセンターのスタッフの指導やイレギュラーに対する指示をしています。そして、また、それを仕組みに反映していきます。
このコールセンターも、仕組みをつくる社員と作業をメインとするスタッフの2層に分かれています。その部屋が、別のフロアーにあるのです。
K社は、今月から、他のエリアに商圏を拡げる段階に移りました。
そのエリアの外注業者の獲得と教育は済んでいます。次は、WEB広告のエリアを拡げていきます。それを、またコールセンターでさばいていきます。一年後には、また、エリアを拡げる予定でいます。
これが、『事業変革』です。
事業モデルの変革が、何もかもを変えてしまいます。
やる事業が変われば、必要な部署もその機能も変わるのです。当然、必要となる社員も変わるのです。そして、それに適した場所に移ることになります。
結果的に、社長のステージも、その日々の動きも、変わってしまうのです。
当然ですが、その変革の起点は、社長の中にあります。
そのスイッチは、どの社長の中にもあるのです。
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