シフトを決めてあげる必要はあるのか?
2月25日の大手町研究会終了後、参加者の方々とある飲食店を利用したのですが、そこはコロナ禍の不況なぞどこふく風と言わんばかりの忙しさでした。
聞けば今日だけではなくずっとこの調子で元気にやってきたとのこと。
商売は毎日こうありたいものです。
チェーンビジネスを行っていますと、時には嬉しいほど忙しい日はありますが、逆に悲しいほど暇な日もあります。
この客数の変化にあわせて企業はマネジメント面にどう向き合っているのか?
実はここから「その企業の利益が右肩上がりになっていけるかどうか?」大きな違いが生まれていきます。
かつて暇な日にはただ「仕事は見つけて当たり前」と言ってた時よりも、その後すこぶる有効な一手が打てて、以来今でも収益を上げ続けているチェーン企業のM社があります。
M社は地方でチェーンビジネスを行っていまして、店舗はというと行楽立地店ばかり。
平日と週末とでは客数は大きく変化し、売上も時には100万単位で変わってくるほどです。
各店長はそんな売上の起伏が激しい中、スタッフのシフトを決めていたのですが、当然簡単にはできません。
「たかがスタッフのシフトでしょ」と片付けてしまえる単純なものではないことは実際にご経験がある方でしたらその難解さはご存じでしょう。
・誰をどの時間に何時間配置したらいいのか?
はもちろん
・休日や勤務時間は協定内に収まっているのか
など労使のルールに則っていなければなりません
・本人たちの収入、休日の希望とのズレがないか
なども考慮されていなければなりませんし
今では
・残業時間はルール内に収まりそうか
は当たり前
・有給取得がどのくらい進んでいるのか
なども徹底されている企業もあるでしょう
しかしなんといっても重要なのは経営面です。
・売上に対して適正な人員配置がなされているか?
どの企業もコストの中で大きなウェイトを占めるのは人件費です。
シフトづくりはまさにその根幹。
いい加減につくられていますと企業の利益に大きく影響し、下手をすれば赤字になってしまうこともあります。
シフト管理業務の良いところは放っておいても担当者は手を抜けず、真剣にならざるを得ないところです。
もしもシフトをいい加減につくってしまっていますと、目が回りそうな忙しさなのに少人数で回さなければならなくなったりします。
当然
「店長、この日は地域でお祭りがある日ですよ。全然足りませんよ」
「120時間以上働いている日が4カ月連続になりますが、いいんですか?」
「先月末に休みがないから10連勤になっちゃいますよ」
など誰もが自らのことですからエラーに対して敏感です。
経営者からすればシフト管理は特に介入せずともそれぞれの部署できちんとルール通りにやってくれる手のかからない業務です。
しかしここでお気づきの方もいらっしゃることでしょう。
ある一部の側面だけは誰もがノーチェックだということを。
それは「人件費の過剰投資に異を唱える人はほぼいない」ということ。
売上の見込み以上に人数が配置されていますと働く人達は楽ができるからです。
もし真面目に
「店長、これだと人が多すぎませんか?」
と指摘してくれる人がいたとしても
「おい、余計なこと言うな」
なんてやりとりも陰で生まれていることでしょう。
その為、M社はそれまでこの問題に対して特段対策を打っていなかった為、気が付くのは月をまたいでからが多く
「あれ? 二か月前のこの店舗の利益はなぜこんなに少ないんだ?」
がよくあったそうです。
しかし過ぎた問題はどうしようもありません。
後から「一体どうなってるんだ!」といくら騒いでも覆水盆に返らずです。
チェーンビジネス経営者が会社の利益、規模を大きくしていきたいのであれば、あらゆる業務の自動化を目指すべきだと当社は常に推奨しています。
特にマネジメント面がそうなのですが、このシフト管理ももちろん含まれます。
M社の社長は「自社をもっともっと大きくしていきたい」
だからシフト管理さえも自動化は必要とご認識されていました。
ただ残念だったのは過剰な人員配置を恐れるがあまり自動化ではなくただの教育を進めてしまっていたことです。
「できる人ほどハイレベルな仕事をしなさい」
「社員が今やっている仕事こそスタッフができるようになるべきだ」
社長の指示を受けて全社員が動き出すのですが
シフト管理業務をスタッフに教えることは特に難航していたご様子でした。
「いいか、シフトづくりはここに気を付けて、これも考えてこうやって・・・」
「特に過剰配置はしないように!」
スタッフがいくら優秀だとしても慣れていなければ味方といえども
「シフト担当者の〇〇さんは何をやってんだ」
「回るわけないじゃないか!」
などとタコ殴りにあうもので、よほど忍耐強い人でなければ続けていけません。
これが何度か続いてしまいますと
「私にはムリです」
「辞めます」
せっかく育ってきたスタッフが定着せず経営数値も悪くなっていました。
M社の社長から
「伊東さん、シフト管理って他の企業はどうやってますか?」
「私は必ずしも社員がやるべきではないと考えているんですが」
私は
「そもそも誰かが全員のシフトを決めてあげる必要性があるのでしょうか?」
大まじめにお応えしたのですが、当時社長からはリアクションが薄かったことを覚えています。
きっと「何言ってるんだこの人?、面倒くさそうな人だな イラン質問しなきゃよかった」とも思われたのでしょうか?
ただ、幸いなことに後になってから
「この前伊東さんがおっしゃってたシフトを決めてあげる必要が無いとはどういうことですか?」と質問をいただきましたので話が進みました。
飲食店にはお客様が食べ終わった食器を返却場へ戻すセルフサービスの店舗があります。
あれと同じですね。
あの形態は世間に表れ出した時はお客様側としては非常に違和感を感じた方もおられたことでしょう。
しかしさすがに浸透している今となっては「客を馬鹿にするな!」と怒り狂う人はそうそういらっしゃいません。
もともとそれを始めた経営者は「うまい」「早い」「安い」にもっとウェイトをかけたい。
必死に考えた結果「そもそも配膳する必要が無いのではないか?」という結論に至ったわけです。
「凄いですよね。配膳、返却をお客様にやらせてるんですから」
「とんでもない発想ですよね」
それと同じです。
「そもそもシフトを決めてあげる必要が無いのでは?」
そこを突き詰め、形にできた企業はシフトを決めてあげる業務自体が存在しません。
そこにかかっていた労力、コストは利益につながり更なる新たなサービスをいち早く用意でき、お客様満足を得られる善循環がなされています。
数日後、社長から
「伊東さん、こうしてみました」
シフトは働いているスタッフ個人個人が決める形になっており、過剰投資も、人員不足も見事に回避される素晴らしい仕組みをお創りになっていたのです。
さらに不公平感、やらされ感、義務感も感じることがない程の徹底ぶり。
おまけに「もっと貢献したい」という人にはそれなりのリターンが約束されるほど事細かにできあがっていました。
創りが甘いと大抵「優秀で、真面目な人ほど損をする」という形になってしまうのですがそれもありませんでした。
つくづく世の中には「自分の想定以上のことを簡単に実現できる人がいるんだなぁ」と驚かされます。
そもそも今やっている仕事は本当にその人がやるべきなのか?
利益が右肩上がりの企業はあらゆる事を根本から考え直し、ゼロから創り上げられるクセが備わっています。
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