店長は社長
私事ですが、アパレル業界で仕事を始めて24年、また店舗経営者としては15年が経ちました。これまで12店舗の運営に携わってきましたが、コンサルタントの仕事に軸足を移すべく、徐々にスタッフたちに店舗を譲り、2022年2月いっぱいでメンズ店舗に関しては一区切りとしました。私自身、店舗運営にはほぼ関わらない状態となります。
店舗スタッフとしても、店長としても、経営者としても、この24年は本当に色々なことがありました。人生のちょうど半分、仕事人生としてはほぼすべての時間となりますので、何もない方がおかしいのかもしれません。
「洋服が好き」という軽い気持ちで始めた仕事でしたので、まさか四半世紀に渡るまで関わるとは全く思っていませんでした。入りたての頃はまだネット環境もそんなに整備されておらず、服は店舗で購入するのが普通でした。当時のアパレルスタッフは、人脈も豊富なファッションリーダーであり、ライフスタイルに関する貴重な情報発信源であり、良き相談相手、メンターでした。まさに今でいうインフルエンサー的「あこがれ」の存在です。
その実、現場はアナログでハードな仕事です。あっさり言えば肉体労働です。営業中は目をギラつかせたスタッフや関係者たちがお客様を取り合い、売上を競い、数字が良くても悪くても夜は飲みに行き、歓喜し、反省し、二日酔いの状態で店舗に立ち接客し、閉店後はまた飲みに行く‥のような状況が普通に展開されていました。
そういえば、20年以上前の話になりますが、某SCでは初売りの際、お客様を始め、スタッフも飲酒OKな時期がありました。今思えばその1日はかなりめちゃくちゃでした。お客様、スタッフ問わずいたるところで人が酔っ払い、フィッティングルームで寝ている人もいます。誰もレジの管理をしておらず、その日の売上は誰が計算し、レジ締めしていたのか‥ 今なら大炎上間違いなしの案件でしょう。
さて、そんな一面もあるアパレル業界ですが、私がこの仕事に関わって得た真理が一つあります。それは、アパレル店舗をはじめ、店舗ビジネスでは「店長」の存在が大きく、売上を左右するのは100%店長であると言うことです。もちろん、立地や通行客数等、外部要因によってある程度は左右されますが、それでも店長が変われば驚くほど店舗の雰囲気が、数字が変わります。
実際、私が見てきた中でも、売上が倍増するのは珍しいことではありません。スタッフの成長スピードも違います。周囲の店舗も一目置き、その店が話題の中心となります。たった一人が変わるだけで、その他の人やモノや周囲の環境は何も変わらないのに、一気に風景が変わるのです(逆のパターンもあります)。
もちろん、全員がそんなスーパー店長ではないし、なれるわけでもありません。全体の1割にも満たないでしょう。そもそも、あまりにすごい店長の存在は、功罪相半ばです。その後が続かないのです。その反動でガタガタになった店舗がいくつもありました。
繰り返しますが、店舗ビジネスは店長で左右されます。で、店舗ビジネス経営者が最もすべきは、店長のレベルのムラをつくらないことです。先述のようなすごい店長は必要ありません。私自身も決してすごい店長ではありませんでした。
これまで弊社から独立したスタッフも、ずば抜けてレベルの高い店長ではありませんでした。最低でも平均レベル以上あれば大丈夫です。地道な積み重ねで店舗の支持率(売上)を上げていくことが、目標達成への一番の近道だと私は思います。
人は任せると勝手に育つ側面もあります。それまでは今一つかな‥と思っていたスタッフが、店長として急成長することも少なくありません。独立に際しても全く同じことが言えます。このあたりの采配は難しいのですが、そこに経営者のセンスが表れると思います。
そして最も重要なのは、成長に見合った道筋が設計されていることです。店長のその先がなければ、その先は退職しかありません。私自身も、独立前の会社ではそうでした。のれん分けでも、FCでも、マネージャーでも、「その場しのぎではない仕組み」を作っておくことが肝心です。
あらかじめその道が見えていること。これは定着率アップにもつながり、店長ゴールの会社とは比べ物にならないくらい「店長」も育てます。この点、意識せず、無頓着な経営者も多いのですが、店舗ビジネスの成功になくてはならない視点です。業界を問わず言えることかもしれません。皆さんの会社ではいかがでしょうか。
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