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『三大都市圏』注文住宅事情(その1)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

あたらしい「収益構造」

 

ネット社会になっても、一部の住宅情報誌は低価格化、フリーペーパー化しながら進化しています。求人・アルバイト情報誌の如く安いのに、フルカラーで情報も厚くなってどんどんコスパが上がっています。なぜ、こんなことができるのでしょう?

ひとつには、「ポータルサイト※1」への掲載や「住まいの窓口※2」への登録などの合わせ技で収益を得る仕組みになっているからです。これを全国レベルで展開、規模によって様々なコストを吸収した上で収益を上げている訳です。

※1:「ポータルサイト」とは、様々なコンテンツへの入口(玄関口)となるWebサイトのことで、「インターネットを使ってホームページを見るとき、最初に表示されるWebサイト」のことをいいます。

※2:「住まいの窓口」とは、無料・中立で様々な情報収集・住宅会社選びができるといった相談カウンターを持つ店舗です。住まいの窓口を通して成約した場合、完成保証やメンテナンス保証などが無料で加入できたりします。気に入らなかった住宅会社を断る場合も代行してくれるそうです。なんとも「親切」なことです。。。

「フリーペーパー」は駅などで無料で配布されるものですが「広告掲載料」として掲載企業からそのコストは回収されます。「ポータルサイト」も情報掲載料はもちろん有料で、閲覧数の増大した現代では雑誌掲載よりも高額に設定されている場合もあります。また「住まいの窓口」も相談者は無料ですが、成約時には住宅会社から「成功報酬」として契約金額の数パーセントの手数料を受け取る仕組みになっています。

彼らには全国から日々多くの情報が集まります。その情報量を活用して様々なメディアを並行運用することで、有効な課金システムを構築しています。そして、住宅会社に代わって顧客のファーストコンタクトを集め対応することで、収益額を増やしています。その分、住宅会社は粗利益を減らすことになります。「広告宣伝」の域を超えて「販売代理」に近くなってきているということです。

 

住宅情報誌に見る『情報混濁戦略』

 

各地域版の「住宅情報誌」の誌面を見ていると、一次取得者向けの強力な『情報混濁戦略』が伺えます。それは、その構成からもはっきりと傾向が現れています。大まかに構成はこのようになっています。

①建築家・有名ビルダーによる実例紹介グラビアページ
②地域の関連情報、手順や注意事項満載のハウツーページ
③地元の住宅会社紹介ページ

①には予算関係なし、エリア関係なしの目を引く実例が目白押しです。当然ながら建築費などの情報は掲載されていません。散々「夢」を膨らませてもらう場所です。おそらくは、掲載無料で素敵な実例を全国から集めて載せているのではないでしょうか。ここに出てくる事例の多くは「価格決定権」を持つ会社のものです。

②を構成する要素の一つは、雑誌本体が流通する各地域の事情に沿った情報です。土地価格の相場や、助成金情報、そのエリアで住宅を建てた人へのアンケート結果などです。もう一つの要素は、一時取得者が住宅取得に向けて、何をどのような順番で進めていけばいいのかを整理して教えてくれるハウツー情報です。

体系的にわかりやすくまとまっているのですが、住宅会社にコンタクトを取る前段階で「ポータルサイト」や「住まいの窓口」にやってくるようにうまく設計してあります。ローコスト且つリスクを回避しつつ、賢く住宅会社を選べるように見えますが、最初から選択肢が限定されていることには気づかないように書かれています。

③は有料広告にあたるページで、誌面の大半を占めます。雑誌仕立ての「チラシの束」です。フリーペーパーといっても掲載料金はかなり高額です。決まったフォーマットにあてはめられた記事は比較しやすいようにレイアウトされていますが、会社の個性は消されていきます。

ここに登場する実例写真は巻頭を飾るものとは別世界の現実的なものです。ここに出てくる事例の多くは「価格決定権」を持たない会社のものです。「住まいの窓口」で紹介してもらえる住宅会社はここのメンバーが中心です。

 

3大都市圏「土地価格」比較

 

「住宅情報誌」は各地域版として別々の編集内容で販売されています。全国的な「住宅情報誌」のコンテンツは各地域版で①と②の地域情報意外は共通、③が各地域別のコンテンツです。③は「有料広告部分」ですから、各地域毎で違うのはあたりまえですが。

その中でも②の各地域毎の情報は比べて見てみると面白いので、以下に紹介します。

 

↑東京の「土地価格相場」MAP(SUUMO注文住宅 東京で建てる2021夏秋 より)

 

↑神奈川の「土地価格相場」MAP(SUUMO注文住宅 神奈川で建てる2021秋冬 より)

 

↑大阪の「土地価格相場」MAP(SUUMO注文住宅 大阪で建てる2021夏 より)

 

↑兵庫の「土地価格相場」MAP(SUUMO注文住宅 兵庫で建てる2022冬春 より)

 

↑東海の「土地価格相場」MAP(SUUMO注文住宅 東海で建てる2021秋冬 より)

 

3大都市圏「購入者アンケート」比較

 

各地域毎の情報の中には、「購入者アンケート」の集計結果が掲載されています。これは興味をそそります。しかし、回答しているのは一部の人です。購入者として真に受けてはいけない部分もあるはずですが、統計データというものは真実を表しているか如く見えてしまうものです。

しかし、工務店経営者が地域毎の違いをざっと見るのには有効かと思いますので、紹介します。

 

↑東京の「購入者アンケート」結果(SUUMO注文住宅 東京で建てる2021夏秋 より)

 

↑神奈川「購入者アンケート」結果(SUUMO注文住宅 神奈川で建てる2021秋冬 より)

 

↑大阪の「購入者アンケート」結果(SUUMO注文住宅 大阪で建てる2021夏 より)

 

↑兵庫の「購入者アンケート」結果(SUUMO注文住宅 兵庫で建てる2022冬春 より)

 

↑東海の「購入者アンケート」結果(SUUMO注文住宅 東海で建てる2021秋冬 より)

 

 

いかがでしたか?
各地域版を並べてよく見てみると、こんなことも見えてきます。

東京→神奈川→大阪→兵庫→東海という順で、住宅ローン借入額や土地価格が下がっていっています。このあたりは妥当かと思いますが、東海地域は建築費用が2番目、親からの贈与額が3番目になっています。これは、やはりお土地柄でしょうか。回答数も東海のみ848と多く、他の地域は300を切っています。

土地から取得している比率は各地域ざっと80%強といったところです。東海のみ70%です。また、単純平均した土地価格(坪単価)は、東京77万円、神奈川65万円、大阪51万円、兵庫37万円、東海26万円です。土地価格マップを見ると、他の地域はある程度郊外の相場を反映しているようですが、東京で77万円の坪単価ではごく限られた地域でしか買えない水準ですから、あまり実態を反映しているとは言えないようです。

親からの贈与をもらえた人は、グラフをよく見るとざっと半数以下。「平均値」はもらえた人の「平均値」であって、みんなもらえている訳ではないのです。しかし誌面を見ていると、なんだかみんなもらっているように見えてきますよね(怖)

統計データは数値化されていますがら「事実」を反映していると言えます。とはいえ、恣意的なまとめ方や見せ方もできますので、そのデータを公表している人の立場や利害を知っておく必要はあります。その上で、他のデータとも比較して見ると色々なことが見えてきます。(国の統計でも「二重カウント」の報道がありましたよね)

たまには地元以外に目を向けてみることで、より地元の状況を的確に捉えることができます。

 

社長の会社は、どのエリアを対象にされていますか?自社のエリアの戦略を考える際、全国各地の様子を思考の下地にする習慣はありますか?

 

『三大都市圏』注文住宅事情(その2)につづく

 

 

 

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