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銀行活用で新規開拓コンサルタント

株式会社結コンサルティング

代表取締役 

銀行活用で新規開拓の仕組みづくりを行うスペシャリスト。31年間の銀行員経験で、法人4,000社以上を担当、審査部担当者としての企業審査は1,000社超の実績を誇る金融のプロフェショナル。
売上が倍増した雑貨メーカー、バックメーカー、新事業を立ち上げた化粧品メーカー、更には海外進出に成功した事例など、累計で100社以上の会社を成功に導いた実績を持つ。

「最近、利益率が低くなってきており、収益を確保するためにも川上に守備範囲を広げようと思い、守備範囲を広げるための設備投資もしようと思うのですが、何か注意しておくべき点等ありますでしょうか?」──地元中小建設関連事業の経営者の方からのご相談です。

セミナーでも「大手との新規取引獲得で収益を確保するとともに、既存の取引先の収益状況を確認して取引条件を見直す」ようにお伝えしていますので、このようなご相談が増えてきています。

確かに、川上に守備範囲を広げていくというのは方向性として正しいのですが、企業としてのビジネスモデルや組織がある程度できていることが前提ですので、これらが十分でない場合には、それ以前の前提を整えることが必須となります。

特に、建設関連事業を営まれていいますので、建設業特有の何層にもなっている「ピラミッド構造」を考えておかなければなりません。スーパーゼネコンと呼ばれる5社を頂点に、全国展開する大手ゼネコンが50社程度、中小規模の地方ゼネコン2万社がそれに続きます。それらゼネコンの下請けとして、内装・電気・屋根・塗装・鉄筋といった施設を管理する専門工事業者があり、さらにその下請けとして実際の設備工事を施工する協力業者がいるといったピラミッド型の下請け構造になっているのです。

今回ご相談いただいた経営者の方の場合は、実際に設備工事を施工する協力業者ということでしたので、より川上に位置する専門工事業者になるために必要となってくる設備投資をしたいとのことでしたので、方向性としては十分に納得できます。

しかし、この経営者の方が、営業、施工、事務・管理対応と全てを担っている状況であり、組織としての体をなしていません。

「なぜ、何から何まで社長が対応しているのですか?」とご質問したところ、

「私がやらなければ、人を手当しなければならず、それでは赤字になってしまいますので・・・」とのご回答をいただきました。

前回のコラムでもお伝えしましたが、中小企業の場合は大企業に比べて、従業員1人当たりの労働生産性が低いので、このままの状態では川上には行くことができません。現状、協力業者として3〜6百万円程度の工事が中心ですが、専門工事業者となるのであれば1億円前後の工事になってくるとのこと。

それだけではありません。より川上の専門業者として機能するには、設備投資だけでなく営業、企画、設計、積算、施工、調達、事務・管理対応・・・というようにそれぞれのプロセスを各担当責任者がキチンと管理していく必要があります。このため、この経営者の方が全てをカバーすることはできないですし、万一カバーできたとしても、ゼネコンから専門工事業者として受注することはできません。

これまでは協力業者ということでしたので「早く・安く」が求められていましたが、ゼネコンが専門工事業者に求めているものは「安全・安心の施工だけでなく、現場管理や各種打ち合わせなども含めて、きっちりとした仕事をしてもらう」ことなのですから、全く求められることが違うのです。これらをきちんとこなしていく体制を整えなければなりません・・・

このように、この経営者の方が考えていることを実践するには、かなり高いハードルがいくつかありますが、経営者の仕事は「稼ぐこと」ですので、どんなに困難であったとしても覚悟を決めて乗り越えていただきたいと思います。

現状認識として、(協力業者のままでは)利益率が低くなってきており、収益を確保するためにも川上である「専門工事業者」に守備範囲を広げることで、対象顧客を専門工事業者から大手・中堅ゼネコンに変更する。そうすることで、工事単価は3〜6百万円程度から1億円程度にと大幅に増加するため、労働生産性が大幅に向上。

また、対象顧客を変更するために、顧客に提供する商品・サービスの価値も、これまでの「早く・安く」から「安全・安心の施工だけでなく、現場管理や各種打ち合わせなども含めて、きっちりとした仕事」と大きく変えるとともに、この会社ならではの特徴・特色を打ち出すことで、顧客満足度を向上させる。

そのために必要となる「組織」を早期につくりあげることができれば、これまで頑張っても数億円しかいかなかった売上を20〜30億円にすることが可能になるだけでなく、付加価値を大幅に増やすことで利益率も大幅UPが見込めます。売上高が倍増以上、更に利益率が大幅UPして掛け算するのですから、最終的な利益は数倍になる計算になります。

ここまでお話ししたところで、「正に、私が目指している会社の形です。何としても実現したいのです!」とこの経営者の方からコメントがありました。

経営者の方の覚悟・決意が揺らぎないものであることが十分にわかりましたので、私からは「これは、どの業界にも言えることですが、中小企業が生き残るためには、高価格・高級品で勝負することと、一つの業界のみで勝負するのではなく、現在の技術を活用して複数の業界にまたがる商品・サービスを展開する必要がありますので、今から考えておいてください。そして、社長の目指している会社を早期に実現するためには、経営計画書が必要です。と申し上げました。

「経営計画書ですか?今回、作成したものを持ってきていますので見ていただけませんか?」とのことで、経営計画書を拝見しました。

「もったいないですね・・・失礼ながら、これは単なる数字のお遊びです。社長の目指されている会社の形はどこに記載されていますか?社長は経営者として、具体的に何をなされるのですか?私は、社長からいろいろと伺いましたのでイメージできますが、従業員の方にこれを渡しても、「ただ目標の数字だけが社長からおりてきた・・・」としか感じられないのではないでしょうか?」と感じるままにコメントさせていただきました。

数字のお遊びは不要。経営計画書は、できるだけ下記項目について押さえておいてください。

<経営理念>
 事業に対する基本姿勢(ミッション・ビジョン・バリューなど)

<社長として目指したい会社の未来像>
 経営理念の具現化(どういう事業をやり、5年後・10年後の売上、利益はどうするのか)

<経営計画>
 どのようにして未来像を実現するかの具体策(短期:具体策を明示、長期:プロセスを明示)

(事業モデル、対象顧客、商品・サービス、取引先、販売促進、未来事業、内部体制、共通言語、など)

<重要項目の実施計画>
 具体策をどのように実施するかのPDCA

<計数計画>
 売上、利益、設備、人員、資金調達、などを短期・長期で計画するとともに、目標となる資金繰り・貸借対照表を策定

大枠のみをお示ししておりますので、大したことないと思われるかも知れませんが、本気で経営計画書を策定するのは非常に大変ですし、基本的には経営者しか策定できませんので、経営者の方々は大変ご苦労をされながらつくられます。

そして、経営者の方々が悩みに悩んで策定された具体的な経営計画書を、経営者から従業員に自分の口から直に説明し、一緒に未来の会社像を実現するために協力を依頼するのです。単なる数字のお遊びではなく、経営者の魂が入った経営計画書がどれほど従業員を奮い立たせるか、ご自身で実感してください。本当の意味で、「経営者の醍醐味」が味わえるはずです。

あなたは経営者として、どのような会社にされるおつもりですか?
そのための最短距離を駆け抜けるために、具体的な経営計画書を策定してみませんか?

 

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