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DXは知的財産権確保で盤石にするべきだ

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

サラリーマン時代、インターネットでの販売がまだ黎明期だったころのことです。今とは違って、どんな企業にとってもECサイトは自前でゼロから開発しなければならないものでした。今のようになんらかのプラットフォームサービスがあるわけでもなく、決済代行サービスもインターネット前提にはなっていない時代です。当時インターネット戦略の責任者だった私は、部下と苦労しながらWEBサイトの企画開発と運営に日々苦労したものです。しかし、非常に面白い体験もしました。それは、「インターネット販売モデルとそのソフトウェアの特許化活動」です。

当時「ビジネスモデル特許」というワードが流行りはじめ、「インターネットで新しい売り方とか施策やサービスを企画するなら特許出願はセット」というトレンドに業界全体が急速に広まりはじめていました。そこで我々も他社に先んじる為に特許を次々に出願し、インターネット販売とそのサービス全体を特許群で固める、という戦略出願活動を展開した訳です。自分で特許を書いていたにも関わらず、当時はあまりその重要性に気がついていなかったのですが、実はその中にいくつかユニークな売り方に関する発明が混ざっていました。もう20年近く前の特許ですが、これが今でもその会社で拡販の為の重要施策を実現するものだったのです。

だいぶ後になってから競合他社の担当者の漏らしたこんな言葉が聞こえてきました。「あの販売方法を真似したいが、特許で守られていてどうにもならない。ちょっと真似をすればすぐにばれてしまうので、工夫して回避することもできない・・・」というものです。こちらはあまり意識していませんでしたし、競合会社の人と腹を割って話しをする場などありませんでしたから、このような言葉が聞こえてきて心底光栄に感じたとともに、「特許化しておいて良かった」と胸をなで下ろしたものです。もしも当時特許出願をしていなかったら、もしも特許庁の審査で補正指令が来た時に特許化を諦めてしまっていたら、たちまち大手の競合他社がその売り方をまねし、体力に任せて価格勝負まで組み合わされ、事業は立ちゆかなくなっていたかもしれません。

以上はすべて20年前におきたことではありますが、現代のDX化においても知財化はセットで考えないとすぐ真似される危険性があるものなので、重要な教訓になります。例えば商品やサービスにおけるDX化は、当然その商品価値を高めるものとなり、事業的には売上や採算を大きく高める方策でもあります。もしこれが社内システムなのであれば、社外からその仕様や動きを見ることはできませんから、仮にそれを特許にしてしまうと「特許明細書が公開されることにより、密かにまねをされるリスクにさらされる」ことになってしまいます。

しかし商品やサービスのDXは違います。表から(つまりお客様から)動きや効能が解りやすく見えることにより商品価値が高まるわけですので、特許などで他社がまねすることを防がないとあっというまに競争にさらされてしまいます。しかも、これは会社の規模に全く関係ありません。小さな会社がユニークなDX化を実現した様を大企業が目にし、それが特許で守られていないことに気がつけば、(分別の無い真似の仕方はしないとしても)上手にまねをされて下手をするとその会社が先にやっていた様な告知もされてしまうかもしれません。こんなことになってしまっては、いくらユニークで独創的なアイディアを出したとしても意味がありませんね。

私が特許と格闘していた20年前にはソフトウェア特許やビジネスモデル特許を扱った経験がある弁理士さんは少数派でした。しかし、最近では弁理士の方々も多数の経験を積んでいらっしゃる様なので、気軽に相談にのってくださる先生もいらっしゃると思います。「良いDXのネタを思いつき、それを事業化するならば、まずは特許出願」です。特許の経験が無い経営者にとっても、DX化とセットで特許を考えなければならないことをご理解頂ければ良いと思います。

 

 

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