そこに熱意はあるか
あなたの会社には「経営理念」があるでしょうか。私の経験上、個人事業主など小規模な事業所では「経営理念」自体がない場合が大半で、従業員が10人以上になってくると、理念のような言語化された経営者の考え方が徐々に表れてきます。
私自身、「経営理念」は事業活動に必要不可欠なものだと考えています。経営者の価値基準が明確に言語化されており、企業の本質、根幹、軸となる最重要な要素と言っても過言ではないでしょう。
ただし、「経営理念」が全社的に浸透し、現場での実践につながっていればの話です。残念ながら、「経営理念」が絵に描いた餅になっている会社が多いのも事実です。カッコいいことが書いてあっても、結局は単なるお題目で、実践が伴わない会社をいくつも見てきました。
酷い場合は、つくった経営者ですらすでに理念を忘れたり、あるいは違う目標を見つけてほったらかしにしていたり… そんな状態では、社員が理念をベースに実践するわけがありません。むしろ理念が害悪になり、理想と現実のギャップが会社を蝕んでいきます。
また、従業員には崇高な理念を押し付けて、経営者自身はまったく理念に基づかない行動や言動を取ることも実は少なくありません。こうなると当然社内はぎくしゃくし、不協和音を奏で始めます。
お客様は離れていき、優秀な従業員から辞め始め… 求人をかけてもなかなか来ず、採用してもすぐに辞めてしまう… まさに悪循環が延々と続いていきます。
こうならないためには、経営者自身が熱意を持って理念の追求、つまり事業のすべてを自分事として捉え、時代、環境、法規制などものともせず、「社員がついていきたい」と思える実践をするほかありません。
この点、企業経営の今を見ると、「社員の自立」や「自走式組織」など、現場でも自ら考え動くことが重要視されています。これはもちろん大事なことですが、忘れてならないのは経営者の理念や実践があって初めて、自分勝手ではない社員の自立が実現するということです。
すでに熱意もなく、理念も形だけ、自分は違う目標に向かって好き勝手に動いている経営者のもとで働きたい人がいるでしょうか。確かに組織が自走するための仕組みは重要です。しかし、仕組みだけで組織は動きません。仕組みに魂を入れるのは他ならぬ経営者なのです。
「経営理念」も「仕組み」も経営者が率先して実践することで命が吹き込まれます。スピリチュアルな話でも何でもありません。仏作って魂入れずの言葉通り、熱意を持った愚直な実践こそが、物事が上手くいく方法の最たるものです。
経営者の皆さん。今、本当にやりたいことは何でしょうか。それは周囲の人に伝わっているでしょうか。そしてそれは言行一致、有言実行になっているでしょうか。自分に嘘をつかず、胸を張ってやりたいことをやれる状況をつくりましょう。経営者の熱意は顧客を引き付け、社員の成長にもつながる最高のエネルギー源となります。
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