虎の尾を踏め! “異端児”の成長戦略
2022年が幕をあけました。新春恒例のイベント「箱根駅伝」では、青山学院が総合優勝し、2年ぶり6度目の快挙で話題を呼んでいます。一方、お節料理の売れ行きや、初詣の人出がパンデミック前に戻ったというデータも出ています。警察庁の統計によれば、2021年を通してみると自殺者と犯罪者数が減少傾向にあり、生活者マインドには、少しずつ明るい兆しが出ています。
今年は、「元に戻った」という表現で語られる年になるでしょう。しかし生活者実感においては、「元に戻る」ことはないでしょう。なぜなら、ライフスタイルが大きく変化したことによって、生活者の心に変化が生じているからです。
例えば、日本ではマスクをすることが当たり前になりました。2年間のマスクをつける暮らしを続けたことによって、マスクは「顔のパンツ」と呼ばれ、若い世代を中心に「恥ずかしくてマスクをはずせない」という感覚が生まれています。
また、今まで当たり前のように乗っていた「車」も、ある調査によれば2人に1人が「乗る機会が減った」と言います。巣ごもり生活で、「体を動かすこと」が叫ばれ、ウォーキングがブームになりました。生活にとってウォーキングは必要なコンテンツ、車は「必要ではない」かもしれないという気分が高まっています。
2018年11月から始まった疫病の流行によって、戦後最大の経済的な急失速を体験しました。リベンジ消費が起きて、一見元に戻ったような売上も、表層のムードを言葉にしたまで。わたくしどもでは、2022年のキーワードは「自己意識の変容、そして意識革命」の年になると考えています。
一人一人の生活者が、より本質的なことに興味関心を持ち、行動していくと考えています。仕事とは何か、働くとは何か。人と人とのつながりや、豊かな暮らしとは何か。100年時代の人生とは、より人間らしい生き方とは。人間とは何か、「私」とは何か、といった本質的なテーマを潜在的に持って、新しい価値観を発見する時代だと考えています。
2021年12月26日に、東京・池袋の東京芸術劇場で、NHK交響楽団による「第9」のコンサートが行われました。開催にあたってさまざまな試練がありました。が、コンサート後のインタビューでは観客から喜びの声であふれました。
あるお客さまは、「パンデミック下で、一度もコンサートに行けなかった、解放された」という笑顔、「第9を聴いていると1年間のいろんなことが思い出された。音楽は不要なものではなく絶対に必要なものだと感じられた」と涙をにじませるお客さま。その様子は、今まで当たり前だと思っていた音楽の魅力を再発見した、これからは大事にして生きる、という心の叫び。心の革命のような強さがありました。
一人一人が大なり小なり、この2年間のうちに「心の革命」を果たしたのです。「これまで価値があると信じてきたものが、そうではなかった」という気づき。「当たり前だと思っていたが、尊い価値があった」という気づき。「真に私がほしいと感じるものを手に入れたい」、「私がたいせつだと感じたものを、心から大切にしたい」という気づき。
為政者、マスコミ、他人に急き立てられていたものではなく、この「私が」良いと感じたもの、信じられる何かに時間をつかい、出合っていきたい、という気づきが生まれていると確信しています。
テクノロジーは今後もますます進化してゆきます。気象変動の影響も深刻です。地球に生かされているわたしたちが総力で取り組む課題です。とはいえ、大きなマーケットは、地球から宇宙へと拡大しています。「知的労働者」がAI(人工知能)によって代替される時代が来ています。そして、人間の活動の場には新しいオプションが加わっています。「リアル」空間から、リアルでは無い「仮想空間」が浸透するでしょう。
こうした外部環境の変化と、人口の変化、構造の変化が複雑に絡まりながら、生活者の価値観が変化してゆきます。2022年も新産業が生まれ、衰退してゆく産業があるでしょう。複雑な時代の流れにあって、今考えることは、基本原則です。「自社ビジネスは何によって生存しているのか」。すなわち「自社の支配者は誰か」ということです。
わたしたちは、商品サービスによってお客さまとつながっています。お客さまこそが、自社の支配者です。社員もお客さまであり、社員の家族もまたお客さまです。社長だけでなく、社員も、お客さまも、この地球に生きる同じ「人間」です。戦後70年を経て、世界中に流行した疫病によって、わたしたちはこの当たり前のことに気がついたのです。
どんな時代であろうと、わたしたちはお客さまの心を想像し、お客さまの気持ちに立って、お客さまの喜びを創造することが使命です。人間とはどういう生きものなのか。人は、何をされたら嬉しいのか。人は、何をしたら嫌に感じるのか。わたしたちは、何に困っていて、何に悩み、何を辛く感じるのか。あなたは、何を、欲しているのか? そして自社が「何」を発揮したら、お客さまは喜んでくれるのか。幸せを感じてくれるのか? どうしたら、なにを提供したら、社会に必要とされる企業とみなされるのか?
自社商品サービスを、強靭な商品サービスにアップグレードさせましょう。目の前にいる、お客さまの笑顔を思い浮かべながら、自社の思い、事業をやるべき理由、使命、湧き起こる強い情熱を込めて、商品サービスをリニューアルしましょう。ユニークな切り口で、見たこともないような表現で、誰もが真似をしたくなるような斬新さをもって、既存商品の価値を磨き上げてアップグレードしてゆきましょう。競争相手のいない新しい世界、ウルトラニッチな世界で、業界の壁を突き破る異端児の道を進んでゆきましょう。
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