求められていることを正しく把握する
今年も残すところわずかになりました。来る2022年は日本経済にとって大きな変化の年になります。それを象徴するのが東京証券取引所で4月に予定されている市場区分の見直しだと言えます。現在の4区分(一部・二部・マザース・JASDAQ)をプライム・スタンダード・グロースの3区分に改めるというものです。
現在、一部上場企業は全部で2191社だそうですが、日経ESGの調査によるとその86%がプライム市場への上場を希望しているのに対し、ITメディアの予測によると3割ほどが上場基準を満たせないのではないかとされています。
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00003/120800027/
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2107/09/news153.html
これまでに比べても一段と厳しいとされる情報開示要求の中で、目につくものの一つが気候変動対策に関わるものです。温室効果ガス(GHG)の排出量や削減への取り組みなども、当然開示しなければならなくなります。
ここで問題なのが、外部からの調達によるGHGの発生です。標準的な考え方では、ベンダーである中小企業から仕入れた資機材や物品に関わるCO2発生量もScope3と呼ばれる括りで把握し、開示しなくてはならないとされているからです。
それまで、要求通りの納期・品質で製品を納めて入れさえすれば良かった中小企業にとって、「CO2発生量を報告せよ」という要求は新たな負荷となることが懸念されます。逆に、競合に比べてCO2発生を低く抑えられるとすれば、それが競争力の源泉となることも予想されます。
とはいえ、シンプルな事業構造が多い中小企業にとって、CO2削減は必ずしも簡単なものではありません。どう考えても加熱炉には燃料を使う必要がありますし、たとえ燃料の種類を変えてみたところで、必ずしもCO2が劇的に削減できるわけではないからです。
他に選択肢がない場合、だからと言ってさほど悲観する必要はありません。なぜなら競合他社も同様にCO2排出を続けていると想定されるからです。そうだとすると、重要なポイントは「削減」ではなくもっと違う何かであることが見えてきます。今一度、大手企業のニーズを振り返ってみましょう。そうすると、大手企業が直接的に求められているのは情報の「開示」であることがわかります。
勘の良い経営者はもうお気づきだと思いますが、ベンダーである中小企業が一番腐心しなくてはいけないのは、「削減」ではなく「情報開示」だということです。たとえCO2排出量が多い場合でも、それをしっかりとトレースして遅滞なく開示する。その中で、将来的な削減努力についても当然目配りをする。大手が評価するのは、ベンダーとしてのそんな態度であるはずです。
いきなりCO2削減ができないからと言って絶望しないでください。たとえ成績が良くなくても、正直にしっかり開示する努力の継続は必ず評価されます。そしてその継続の上にこそ、信用の花が開くのです。
顧客のニーズをしっかりと認識し、情報開示努力を進めようとする経営者を当社は全力で応援しています。
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