経営者なら知っておきたい銀行の選び方
「経理担当者から、「取引銀行が多過ぎて、無駄な事務処理があります。効率化のために、整理してください!」と言われてしまい、どのように整理したらいいのか悩んでいます。これまでの経緯等もあり、簡単に整理するというわけにもいきません。何かアドバイをいただけませんでしょうか?」──精密機器製造業の二代目経営者からのご相談です。
確かに、取引銀行が十数行と多過ぎて、無駄な事務処理で従業員が困っている状況では整理が必要と思われます。特に、日頃から「効率化」を標榜・実践されている二代目ですので、今回の申し出には何としても応えなければ示しがつきません。
しかし、どの銀行であれ、取引開始当初はそれなりの理由があったはずです。
・業績が悪化したときにメイン銀行が貸し渋り、そのときに緊急融資で助けてくれた恩がある・・・
・システムトラブルでメイン銀行が使えなくなった際、急遽、個別対応してくれた恩がある・・・
・新規事業をどうするかで悩んでいるときに、役に立つコンサルティング会社を紹介してくれた・・・
などなど、いろいろな経緯があったはずです。
私からは、「日頃の効率化の実践が、従業員の方にも定着して素晴らしいですね。整理の申し出をしてくれた経理担当者の方に、どの銀行を整理するのが好ましいのか星取表をつくってもらいましょう。その上で、経営者であるあなたが、これまでの経緯等を鑑みてご判断してください。
あと、ご参考までに、銀行と取引をするために重要な下記3点についても、ご配慮いただければ良いと思います。
①融資:決裁金額確認、決裁までの時間、融資条件
②決済:システム安定性、時限性、使い勝手、手数料
③情報:欲しい情報を届けてくれる=打てば響く、阿吽の呼吸が望ましい」と申し上げました。
整理の申し出をしてくれたということは、日頃から「効率化」を標榜・実践されている二代目経営者なら整理をしてくれるはずだと従業員の方が信じていることの証なのです。
ただ口だけで実践されていないのであれば、従業員は簡単に見抜きますし、そもそも銀行を整理するという面倒なことを経営者には言いません。この二代目経営者の日頃の活動が本物であり、いい会社をつくろうと必死になっていることが従業員の方にも伝わっているからこその申し出なのです。
今回の申し出に対応された後は、この二代目経営者の「効率化」標榜・実践に対する、従業員の方からの信頼が確信に変わりますので、忙しくても経営者としてきちんとした対応をしなければなりません。最終的に経営者として、従業員の申し出と異なる判断をした場合は、どのような判断をしたかの理由も説明し、きちんとした対応をすれば、「改善要望」が今後どんどん出てくるはずです。経営者の判断は絶対ですが、申し出内容と異なる判断をされた場合は、なぜそのような判断をしたのかを伝えてください。
でも、このようにきちんとした対応をしなければ、「勇気を振り絞って銀行の整理を申し出たのに、二代目は何もしてくれない。口ばっかりで、言っても変わらないなら、何も言わない方がいいよね。」と残念な結果になってしまいます。
なので、今後、同様の効率化・改善提案があった際には、どのような対応が望ましいかをきちんと確認し、(申し出内容と異なる判断をした場合には)経営者としてどのように判断したかの理由も説明してください。そうすれば、従業員の方から前向きな「改善要望」がどんどん出てきて、いい会社になるはずです。
銀行を選別する際に、ご配慮いただきたい3点について簡単にご説明します。
①融資:決裁金額確認、決裁までの時間、融資条件
取引銀行の支店長・部長の決裁金額は、店舗の規模等により決められています。
その金額までの決裁であれば、支店長・部長の決裁で完結しますので即断即決が可能ですが、その金額を超えると審査部の決裁となりますので決裁までに1週間程度またはそれ以上かかる場合があります。
更に、審査部の決裁権限を超える金額となると役員会議での合議・決裁となり更に時間がかかりますので、取引銀行の支店長・部長の決裁金額がいくらなのかを確認しておいてください。
また、融資条件として、適用金利、担保、返済条件などの融資条件で必須となるものがないかも確認しておけば、突発的な事象が起こった際でも慌てずに対応が可能となりますので、きちんと確認しておきましょう。
②決済:システム安定性、時限性、使い勝手、手数料
決済は会社の信用に関わる重要なものですので、システムの安定性は必須です。
できれば、メイン銀行だけでなく、サブ銀行でも振込などの決済ができるようにシステムを確保しておいてください。
また、振込などの手続きをする時限がどうなっているのか、経理担当者としての使い勝手は良いか、手数料体系がどうなっているのかも確認しましょう。
③情報:欲しい情報を届けてくれる=打てば響く、阿吽の呼吸が望ましい
お金に関することだけでなく、新規事業を検討する際の関連情報や海外進出する際の現地情報など、あなたが経営者として判断しなければならないようなときに、欲しい情報をタイムリーに届けてくれるか、その情報をもとに相談できるかどうかもおさえておきましょう。
各銀行はそれぞれシンクタンクなどと連携をしており、経営者が必要とする情報はほぼ全てカバーしています。経営者であるあなたが欲しいと思ったときに素早く届けてくれるかどうか、できれば阿吽の呼吸が望ましいのですが、そのような配慮や相談ができるかどうかをみてください。
わかりやすく言うと、「何か相談したいときに、どの銀行の担当者・支店長が頭に浮かぶか」つまりファーストコールをどの銀行にするかということになります。その銀行があなたの会社への関心度・アンテナが高いかどうか、相談できるパートナーになり得るかどうかで判断してください。
銀行の存在意義として最も重要な融資・決済・情報の3点について簡単にご説明しましたが、銀行には、ありとあらゆる金融に関する情報やノウハウが集積されていますし、銀行業としての対応を超えるものについては、関連会社で対応する準備が整っています。
商品・サービスを売りたいときにだけ来るような銀行ではなく、どの銀行があなたの会社のパートナーとして相応しいのかをご判断いただければ幸いです。
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