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ダメな社員が残り、優秀な社員が辞めていく会社がやるべきこととは。

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

H社は、地方にある特殊設備メーカーです。
この春に、この地域のオフィス街の中心に本社を移転しました。

事務所を一通り案内したH社長は、席に着くなり口を開きました。
「2か月前に採用した3名のうちの一人が、退職になりました。」

私は、それをお聞きして言いました。
「それは、良かったですね。」

H社長は、答えます。
「はい、良かったです。辞めてもらうことの判断に、迷うことはありませんでした。」

狙った通りに、仕組みが機能した証拠です。


会社には、次の二つの仕組みが必要となります。
一つは、「人を辞めさせる仕組み」です。
そして、もう一つは、「優秀な人を留める仕組み」です。

どの社長も、言います。
「今の世の中、そう簡単には人を首に出来ませんよ。」と

その通りです。

だからこそ、「人を辞めさせる仕組み」が必要になるのです。
それは、「入社時から数か月の間に発動する仕掛け」となります。この短期間が勝負になります。この数か月で、辞めてしかるべき人には、辞めてもらわなければなりません。

我々会社が、「辞めてほしい社員」は、以下の二つになります。
『態度が悪い』か、『基礎能力が無い』かです。

このどちらも、我々が持つ仕組みに乗ってもらうことはできません。
「遅刻する」、「ダラダラ歩く」、「笑顔で接客できない」。
これらのように態度が悪い場合には、お客様にサービスを提供することはできません。また、チームで働くことができません。

また、「入力ミスが多い」、「手が遅い」、「人と話すことが苦手」。
これらでは、そのポジションにおける最低ラインの業務をこなすことはできません。

当然、訓練プログラムはあります。そのプログラムを受ければ、基礎的なことは身に付けることができ、何かしらの生産性をあげることができます。

当社の職場で理想となるマナーや、その職種で求められる態度などを、しっかり伝えます。そして、実際にやってもらいます。そのうえで、修正点を伝えます。それを、数回繰り返します。

また、一通りの「作業」を教えます。そのポジションにおける日常業務であり、生産の現場とも言えます。最初に覚えてもらう業務は、難易度の低いものとなります。マニュアルを使い説明します。そして、やってもらいます。ある期間の訓練で、「量」と「質」を満たしてもらいます。

この訓練の過程で、そぐわない人が観えてきます。
態度が直らないのです。または、明らかに基礎能力が足りないのです。
そこそこ適性がある人なら、訓練プログラムをクリアしていきます。それが出来ないのであれば、この先続けたとしても必ず問題を起こすことになります。
礼節を持って、その本人に、向いていないことを伝え、「退場」してもらうことになります。入社して間が無い事、そして、プログラムがあったことで、本人の納得も得やすくなります。

採用後数か月の訓練プログラムこそが、初期における「人を辞めさせる仕組み」なのです。

その後は、そのポジション(職種)を習得するまで、数年間こなしてもらいます。業種にも寄りますが、3年が一つの目安だと言えます。(技術系では5年)

その頃になると、次の「優秀な人を留める制度」が発動することになります。
・会社にとっての重要案件(新しい技術など)を担当する。
・仕組みの改善のプロジェクトに参画させる。
・OJT担当者として任命する。その前に、外部研修に参加させる。
・技術担当から営業担当へといった、思い切った配置換えを行う。

これらをすることによって、優秀な社員の退職を防ぐことができます。
優秀な社員は、「向上心」を持ちます。彼らは、絶えず「新しいこと」、「成長する環境」を求めるのです。逆に、彼らが嫌うのが、「退屈」です。成長していない自分を許せないのです。

彼らには、その機会を与え続ける必要があります。
与え続けることができる会社だけが、優秀な人を使えるのです。

そのためには、根本的に、その会社自体が成長している必要があります。
昨年よりも事業が進化しています。前年よりも、仕組みが改善されています。成長のために、経営計画書によりPDCAが回されています。

この状態に会社があるからこそ、彼らに成長する環境を提供することができるのです。会社の成長のサイクルに、彼ら「優秀な人」を巻き込んであげます。それは、彼らにとっては、大変幸せなことなのです。


2年前のH社には、その両方がありませんでした。
その当時のH社には、仕組みも経営計画書によるPDCAも、ありませんでした。社長自ら現場を回し案件をこなす、そして、気がつくと一年間が過ぎていたというのを繰り返しているような会社です。

入社した社員は、「彼に仕事を教わってくれ」と先輩に付けられます。
OJTと呼んでいるものの、実質の丸投げです。仕組みが無いので、体系的に教わることもありません。そして、態度に言及されることもありません。
基本は「見て盗め」です。

その結果、H社は、次のような状態にありました。
・社員の戦力化に時間がかかる。入社から1年経っても独り立ちしない。
・顧客の要望をくみ取れない営業担当、丸写ししかできない設計、ミスを繰り返す組立工程。明らかな能力不足や適性が無い人がそのポジションにいる。
・粗悪な態度の社員がおり、職場の雰囲気を悪くしている。

これらは、訓練制度が無いために起きる事象です。そのため、「居てはいけないレベルの社員」を作ってしまっていたのです。

そして、会社は、成長している状態とはかけ離れています。経営計画とその運用は、全く出来ていません。
すべてが行き当たりばったりなのです。当然、改善のサイクルに社員を巻き込むことも出来ません。そんな状況です、優秀な社員は、とっくに社内には居なくなっていました。

当時のH社は、ダメな社員が残り、優秀な社員が去った会社なのです。
私が最初にH社を訪問した時の雰囲気の悪さを、覚えています。
壁は薄汚れ、色あせた安全ポスターが貼られています。社員は、来客の姿を見ても、まともに挨拶もしません。誰もがダラダラ歩いています。

その面談の際に、H社長は言いました。
「社員教育に力を入れてきました。しかし、成果が出ないのです。」
このマズさは、私のコラムの読者の皆さんなら、よく知る通りです。
これらの施策も、雰囲気を悪くしている要因であることが予測できます。仕組みも成長サイクルもない環境での社員教育は、社員を疲弊させます。

あれから2年をかけて、仕組み、そして、組織を整備していきました。
徐々に、業績は上がり始めます。年商3億が、翌期には3億4千万円に、そして、翌々期には4億を超えるまでになったのです。

その過程で、社員の入れ替わりも起きました。
仕組みの整備が整うと、業務の基準や案件の見える化がされます。それにより、誰が何をしているのか、その量も質も、明確に見えるようになるのです。
その結果、仕組みに乗れない人(態度、基礎能力)が、辞めていきます。

そして、経営計画書により、PDCAが回るようになりました。各部が、仕組みの改善に取り組んでいます。これで、優秀な社員の期待に応えることができます。

このタイミングでの、採用活動です。今回は、いままでとは違うレベルの「人材」を取りにいきます。

3名が採用できました。訓練プログラムの結果、2か月が経過した頃に、1名から退職の申し出がありました。

H社長は、それを承諾しました。この2か月の状況から、能力不足が確認されていたのです。この2か月という短期間での判断は、会社にとっても、その本人にとっても、良かったことなのです。

「人を辞めさせる仕組み」、「優秀な人を留める仕組み」
それが回り始めたH社は、いま、「採用(調達)の仕組み」を作っています。

採用の仕組みができると、自社の望むタイミングで、人を調達することができるようになります。そして、自社で戦力化できる人を採用することができます。
ミスマッチを防ぎ、訓練期間の「退場」も減らせるのです。

また、その平均レベルを大幅に上げることができます。その中には、優秀な人材が含まれることになります。
その採用の仕組みの一環としての、今回の本社移転なのです。

(まとめ)
・仕組みと訓練プログラムを整備することで、人を短期間で戦力化できる。その一方で、初期の段階で合わない人に辞めてもらう機能を持つことになる。
・経営計画書によるPDCAサイクルを持つことで、会社は計画を持って成長することができる。そこに、優秀な社員を参画させることで、彼らの欲求に応えることが出来る。
・この仕組みをつくり、改善を続けることが、経営者の「人を雇うことに対する責務」を全うすることになる。

 

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