組織づくりの最強のツールとは何か!?事例:ナンバー2が辞め、主力の6名も去った工務店
面談に来られた時の工務店H社長は、憔悴しきっていました。
前期は、社員22名で年商4億円、十分な利益も出ています。
H社は、過去5年売上げを伸ばしてきました。そして、社内も安定しています。
それが、ここ数か月で、一気に崩れてしまったのです。
実務の多くを取り仕切っていたナンバー2の、突然の退職でした。
そして、その後の数か月で、主力メンバーである営業と施工管理の社員の6名が辞めていきました。
そこまでの事情を説明したH社長は、言いました。
「また、一からやり直しです。」
私は、言わなければなりません。
「一からやり直しては、絶対にいけません。」
組織をつくるうえでの最強のツールが、経営計画書です。
経営計画書をつくり、運用をすれば、必ず組織は出来てきます。
組織の構成員が、正しく動くために必要なことは、
「自分が何をするべきなのか」を解っているということです。
自分は、今日どのような作業をするのか。
自分は、この作業をどのような品質で仕上げればよいのか。
自分は、どの仕組みについて改善すればよいのか。
自分は、どのような目標を達成すればよいのか。
其々の階層の構成員が、これらが解っていることで、組織はまともに機能するのです。そのため会社の至る所には、「伝えるための仕組み」を整備することになります。
作業場に貼っている「整理整頓」と書かれたポスターもそれです。
マニュアルもその一つです。手順や勘所の理想が記されています。
人事評価もその機会です。その項目には、社員としての態度や各階層の貢献のあり方が書いてあります。
会社の仕組みのかなりのものが、「構成員に伝える仕組み」だと言えます。
それらの施策によって、「構成員に正しく、何をするべきか」を浸透させているのです。
この認識が必要です。
この認識が無いと、「趣旨を満たしていない施策」が散見されることになります。整理整頓のそもそものイメージが統一されていないために、各員がバラバラの基準を持っています。人事評価で、「自己評価をさせていない」、「本人へのフィードバックの機会が無い」という状態になります。
その結果、これらの取組みは、本来の効果の半分も発揮されないことになります。
構成員には、何をしてほしいのかを正しく伝えること。伝えなければ動けない。
その仕組みを作ること。
年商数億の会社で起きている問題の多くは、上記の「認識が無い」ことに起因しています。
認識が無いから、マニュアルを作りません。だから、構成員は、簡単な作業しかできないままなのです。また、採用者の戦力化に時間がかかり過ぎるのです。
認識が無いから、方針書を作らないのです。だから、構成員は、いつまでも自分達で判断することができないのです。また、やる気も失っているのです。
そして、認識が無いから、経営計画書を作らないのです。
だから、構成員は、目標達成のために動かない(動けない)のです。また、仕組みの改善に向かわないのです。
彼らは、どのように事業を展開していくのか。どのように仕組みを作り変えていくのか。解りようが無いのです。そして、自分がそれに関わって良いのかどうかも、解らないのです。
何も解っていない、それが、仕組みの無い社員の姿なのです。
彼らに「何をするべきか」を伝える施策は、社内には多くあります。
その中にでも、特に重要となるのが経営計画書です。
「未来を変えるために何をするべきか」を伝えるものは、経営計画書しかないのです。
そして、それには、「誰」が、「いつまでに」も明確に書かれています。
マニュアルも規定も、これらは過去について書かれているモノです。過去からの蓄積であり、その結果の今日の動きです。あくまでも、「守ってくれ」なのです。
経営計画書には、「変えてくれ」が書かれています。
経営計画書が無い会社では、社員は未来づくりに参画できないことになります。
面談で、H社長は、肩を落とし言われました。
「また、一からやり直しです。」
ナンバー2と主力であった6名が、辞めたのです。当然、社内は、混乱を極めています。また、H社長も「現場」に戻ることになりました。
そして、来期の売上げの大幅ダウンは、避けようがありません。
私は、いまのH社長に言うべきか、一瞬迷いましたが、自分の役目と思い口を開きます。
「H社長、やり直してはいけません。いままでのやり方は、完全に間違っているのです。」
いままでは、ナンバー2を中心に組織をつくってきました。
ナンバー2の彼が実務を取り仕切ることによって、社長である自分が「現場」を離れることが出来たのです。これは、「ナンバー2がいないと回らない状態」をつくってきたことを意味します。
業務を回すのは、あくまでも仕組みなのです。誰か特性の人がいないと、回らないのは仕組みでは無いのです。人が変わっても、今日も同じように何かしらの生産がされていくのです。それが、取り組むべき方向です。
そこに、ナンバー2が加わります。その彼が、新たな方針や仕組みをもたらしてくれます。同じレベルで考え、意見を出してくれます。
あくまでも、ナンバー2の役目は、飛躍であり、スピードアップなのです。
ナンバー2が、日常業務を回すことはありません。それは、ナンバー2の役目では無いのです。日常の業務を回すのはあくまでも仕組みなのです。
H社では、ナンバー2が、業務の中心になっていました。各案件の進捗を管理します。その都度、部下に指示を出します。その部下も育てます。定例の会議も、彼が取り仕切ります。
これこそ、「人に仕事が付いている状態」です。
一見仕組みで回っているようで、全然だったのです。一人の人間が回していただけなのです。経営としては、もっともリスクの大きい状態だと言えます。
そして、若い社員は、そのナンバー2に心を寄せていました。
それは当然です。自分達に仕事を教えたのも、日常の指示もナンバー2が与えてくれるのです。実質、彼が「ボス」なのです。6名の社員は、自分達のボスが居なくなったために、会社を去っていったのです。
H社長は、改革を決意しました。
その取っ掛かりが、経営計画書の作成です。
(改革の始まりは、必ず経営計画書です。)
事業モデルの再構想を行い、それをまとめていきます。
本当に必要なことを残し、その多くを捨てていきます。絶対に達成すべき目標を定め、行動計画を練ります。各部への依頼事項から曖昧さを排除していきます。
その結果、3か月ほどで経営計画書が出来上がりました。
H社長は、言われました。
「これが、正しい経営計画書なのですね。」
そして、すぐに、その経営計画書を運用していきます。
まずは、月例会議の開催です。
H社長は、矢田に訊きました。
「先生、月例会議に参加させるような社員は今の当社にはいません。」
その多くが現場作業員だったのです。
私は、答えます。
「一人でも開催してください。」
その月例会議では、毎回、方針を再確認し、進捗と次の行動を明確にします。それをすることで、重要で、本当にやるべきことを確認できるのです。
それを一人でも開催していきます。そこに、計画にのっとり構成員を増やしていきます。
あの面談から3年が経ちました。
H社は、年商8億、社員数30名の会社になっています。
夜の会食の席で、少し酔ったH社長は、言われました。
「先生、経営計画書って本当にすごいですね。」
経営計画書によって、H社長自身、自分の「ブレ」が無くなったのを感じるようになっていました。また、現場・見積・手配に追われる日々でありながらも、時間をつくって、やるべきことに手をつけて行きます。それが、週に数時間しか取れない時もありました。
それを積み重ねていったのです。
今のH社にナンバー2は、いません。
それでも、日常業務は、坦々と回っていきます。そこには、仕組みがあるのです。そして、各部門や各担当が考え動いています。社員からH社長への業務改善の提案もあります。
社員は、「何をするべきか」解っているのです。
それも、「今日何をするべきか」、「未来に対して何をするべきか」を解って動いているのです。経営計画書が組織をつくり、構成員をそのように動かしているのです。
そして、経営計画書は、H社長にもその効力を存分に発揮しています。
H社長は、自分が「何をするべきか」を解っています。
社長として今月何をするべきか、社長として今日何をするべきか。H社長の中には、明確な指針があるのです。
経営計画書がH社長をも、変えてしまったのです。
正しい経営計画書の作成、正しい経営計画書の運用が必要です。
それさえあれば、組織が出来るのです。社員はもっと動けるのです。
そして、会社は、大きく飛躍できるのです。
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