【感性を高める】飽きが来る融合、飽きられない融合
「コレとコレを足せば、新しい商品が出来る!」と考えておられませんか? そう言う物づくりをしていると、気付けば自分で首を絞める羽目になりかねません。まずは本文を読んで頂き、物づくりについて改めて考え直してみて下さい。
こんにちは、茶人・小早川宗護です。私は茶道裏千家の師範として30名の直弟子を指導しつつ、最もハイレベルな茶会、茶事をビジネスとして展開しております。
さて、新しい商品やアイデアを創造する際、何かと何かを掛け合わせると言う作業が必須になってきます。しばしば「1+1=2じゃない、1+1=3にも4にも10にもなるんだ」なんて言葉を耳にします。果たしてそういうアイテムは、長続きするのでしょうか。
私に言わせると、そうやって「ただ掛け合わせただけ・足しただけの商品・アイデア」と言うのは確実に廃るのが早い。何故そうなるのかはイマイチわかりませんが、今までの流行り廃りを見ていると、不思議とそういう傾向にあるのです。では、どのような物ならば生き残る事が出来るのでしょう。
音楽シーンに目を向けてみましょう。例えば歌手Aと歌手Bのコラボ作品と称される新曲が出たとして、その二人組が単独コンサートを開くほどに流行するのか?と言うと、極めて稀なケースを除き、まず有りえませんね。どちらかのコンサートにゲストで招かれて、一緒に一曲だけ歌うと言うのはあるでしょうが、二人がその後ペアとして活躍する可能性は限りなくゼロに等しいのは皆さんもお解りになると思います。
その反面、二人がペアとして一つのバンドを組み、新しい名称で活動したとします。その場合は前の例とはまったくことなり、「異質の両者の組合わせ」ではなく「新しいバンド」として認知され、大変喜ばれる可能性をはらんでおります。もちろん曲やその活動内容にもよりけりですが、ちゃんと王道を歩めば長く愛されると考えて良いでしょう。
では、これら二つの例がどうしてここまで異なった結果を生み出すのか。ギャランティーの問題などもあるかもしれませんが、何よりも「二人が一つのバンド(ユニット)の一員になった」と言う部分が重要なポイントだと私は考えております。二人の個性がただ融合するだけでなく、歌手Aと歌手Bと言う個人個人への着目から、一つのバンド(ユニット)への着目と言うふうに、目線が移動するところがミソです。
要は単なるコラボであれば「1A+1B=2AB」に過ぎません。しかしバンド(ユニット)になった瞬間、「1A+1B-1α=1β」と言う構図が出来上がるのです。単に足すだけでなく、不要な要素を引き算してあるところがポイントですね。消費者は結果として、「1β」と言う名の全く新しいバンド(ユニット)としてその2人の歌手を見ることになるのです。
もちろん、コラボの場合は2人が互いの個性を主張しあいます。しかしバンド(ユニット)の場合は2人が互いの個性を認め合い、互いに一歩引くことでより良い要素、つまり1βを生み出すことが出来るのです。無論ギャラは折半でしょうから、経費も随分楽になることでしょうね。
おおよそ世の中の物づくりにおいて長く愛される製品と言うのは、かならず引き算を忘れてはおりません。足し算だけで出来上がった商品・企画は、一時は流行るかも知れませんが、しょせんろくな結果を生み出さないと考えられるのです。
大手企業、とくに金融業界がM&Aや合併などでやたらと長い企業名を持ちたがりますが(三○東京U○J銀行、メットラ○フア○コ生命など)、消費者からすれば「長ったらしい名前だ」と言う印象しかありませんし、実際社内では合併前の組織が一切崩せず、一体となった仕事が未だに出来かねていると言う話もよく聞きます。そもそも異質で反目し合う1Aと1Bを強引に足して1αを引き忘れているからこそ、いつまでも一つの組織に纏まろうと言う気持ちになれないのでしょうね。
足して足して足しまくった上にどのような引き算を行うのかは経営者のセンス次第です。しかし少なくともちゃんと引き算を行ったうえで「1β」を生み出すことほどファン作りにおいて必要なものはありません。あとは新しく出来た1βがどれだけ売れるか、どれだけ愛されるかによって、一流か二流かが決まります。
「足せば新しいものが出来る」と思い込んでいる物づくりや企画は、三流以下の物づくり、企画と断言出来ます。
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