自分よりベテランを一言で動かすには?
「リベンジ需要」の波に乗って、各社一気に業績を上げていきたいところ
「〇〇しなさい」
「今こそ□□だ」
めったにない千載一遇のチャンスをものにできるんだぞ! と促しているのに
「ハイ わかりました!」 とイキイキと動き出す社員がいる一方で
「・・・・・・・」 何の反応も示さず、いつも通りに黙々と仕事をする社員が・・・
「私はこの手の人間を扱う事には慣れてるんですが、不安なのは各部署長、各店長なんですよね」
ある企業の社長と雑談を交わしていた際にポロっとおっしゃったことです。
「若いリーダー達は、自分よりベテランの部下をうまくマネジメントでき、数字を上げてくれるのか?」
社長がこのように不安に感じられたのも理由があります。
実はその企業は過去に、ベテラン社員、ベテランスタッフをうまく統率できなかったせいで、何度か会社がとんでもない目にあってるからです。
それは
・優秀なリーダーが何もかもを背負いすぎて潰れてしまい、会社を去ってしまったり
・会社の方針とズレた、イレギュラーだらけの店舗が何店も生まれてしまい、復旧にものすごい時間とコストがかかったり
・1人のベテランの機嫌を損ねてしまった結果、全メンバーから総スカンをくらい「それは私達の仕事ではありません」状態となって部署自体がマヒしてしまったり
など。
「伊東さん、リーダーが新人や中堅でも、自分よりベテラン社員やベテランスタッフを簡単に動かせるようにするには・・・何かいい方法ってあるんでしょうか?」
私が応えたのは
チェーン本部として、ベテラン社員、ベテランスタッフらがリーダーの前でどうしても「自分の考え」を言わなければならない、逃げる事ができない「場」を用意してあげることです。
どの企業にも経験豊富なベテランは次の2種類しか存在しません
1.会社の方針に忠実に従うベテラン
2.会社の方針は無視。常に自分の考えを優先し、我が道を行くベテラン
会社に害を与えてしまうのは「2」です。
そしてこの「2の特徴」こそが、一見頑なで、一筋縄ではいかないベテランの弱点なのです。
会社の方針にあわせようとする努力をしない点
彼らにこう質問してみてください
「今後、あなたはどうやって数字を上げていく予定ですか?」
きっとその返答には、会社の方針、社長の意志など眼中に無く
「まるで小学生の夏休みの計画だ」 と言えるほどのチープな返答が返ってくることでしょう。
普段から
「オレ最強」
「自分の感覚は優れているんだ」
「自分がいるから会社はやっていけてるんだ」
などと勘違いしています。
日々刻刻と変わっていく市場と、それに合わせた会社の方針、社長の指示など、一切気に留めなくとも「やっていけてる」と勝手に思っていますから、その辺の力がすこぶる退化しています。
よって、彼らの考え、計画を彼ら自身の口から直接聞き出すことさえ出来れば、どんなにリーダーが新人中の新人であったとしても 「それは違いますよね?」 などとすぐに 「化けの皮」 を剥がすことが可能なのです。
しかし、彼らも自分の弱点をよくわかっています。
「もし自分の考えを言ってしまったら、誰かに指摘され痛い目を見るんじゃないか?」
自分の考えは簡単に発言してくれません。
リーダーと相対した時、自分が不利になる言葉は言わないようにとあの手、この手で回避に全力を尽くします。
・時には 「・・・・・」 とだんまりを決め込んだり、
・よくある手は 「今忙しいんで後にしてもらえますか?」 とそそくさとその場から離れたり。
だからといって下手にマネジメントしてしまうと
「なぜ今それをやる必要があるんですか?」
などと、たちまちリーダーの揚げ足を取って反論してきたり、
「じゃあこの仕事はやらなくてもいいんですか?」
逆ギレされたり
また、自らが発する生産性ゼロの反対意見に
「俺はリーダーを論破してやったぜ」
などと自分に酔いしれたり、それを周りに
「どうだ! 俺は物言う従業員だぜ!」
「凄いだろう」
などとアピールしたり・・・
いかに彼らの考え、プランを口に出してもらう「場」を用意できるか?
ここがマネジメントのポイントです。
ある多店舗展開企業A社の事例です。
結論からいいますと、A社は「場」をうまく用意できたことがきっかけとなって利益倍増が実現できました。
A社は業績が悪化してきたこともあり、先代がリタイヤ。若社長が後を継いだのです。
一刻も早く会社を立て直したいところですがマネジメントがなかなかうまくいきませんでした。
その理由は先代が 「長く勤めている者ほど権力がある」 という方式で経営していたからで、若社長よりもベテランばかりの従業員たちは簡単には指示に従ってくれなかったからです。
業績悪化の要因はまさにここなんじゃないか? 社長が分析していたのは
・考えている人ほど手足を動かしている
・自分を変えられない人ほど手足を動かさない
「この状況はおかしい!」
そこで「場」を用意したわけですが、A社はそれでどう変わったのか?
目論み通り各ベテランが会社の方針に従ってくれるようになったのですが、社長が一番驚いたのは「陰で真面目にコツコツ努力して会社を支えてきた社員やスタッフ達からの反応」です。
「長年の気持ちのつかえが取れました」
「スカッとしましたよ」
など歓喜の声が次々に上がってきたことです。
一見社長だけの孤独な闘い。 味方なんか存在しないんだ。
「この一手が失敗したら全員が会社を去ってしまうかもしれない」
とまで思って腹をくくっていたのですが、何も動こうとしないベテランが目立つ陰で、人一倍動き回って自らの身を削りながらも今まで会社を支えてくれていた人達が社長を熱く支持してくれました。
それからA社は
・考えている人ほど手足を動かさず、頭を動かす仕事をしている
・自分を変えられない人ほど手足を動かす
と変化し、今までと逆転したのです。
「あの大先輩の〇〇さんが、自らお勧め販売を実演してくれて売上UPにつながりました」
「話がすぐにまとまったのは、重鎮の□□さんが自ら取引先を駆けずり回ってくれたからです。あの人が汗をかいてる姿は初めて見ました」
なぜ、A社は新たな投資やプラスの労働力を得ずとも利益倍増が実現できたのか?
秘密はここです。
もともと会社に眠っていたエネルギーを活性化させたから
いくら勤務歴が長くとも、
いくら実績を積み重ねてきた者であっても、
重要なのは 「会社の方針、社長の意志に沿って考えているか? 動いているかどうか?」 です。
それを簡単に実現できるマネジメントの仕組みが整っている企業ほど他社を圧倒できるのです。
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