VOL.14「分析(結果)」と「10年顧客戦略」
10年顧客が増える企業は「分析結果をあたたかく捉えて、未来を見る」、
たどり着けない企業は「分析結果を冷たく捉えて課題を見る」
前回VOL.13では、10年顧客戦略を進めるにあたって、お客様を「20:80の法則」(8割の利益は2割の上位顧客から得られる)ではなく、お客様全体をバランス良く捉える重要性についてお話しました。お客様を見込客・来店客・新規購入客・再購入客・固定客・10年顧客等に分けて考えることをお伝えしました。
お客様全体をバランス良く捉え後に各企業が、取り組むのが数値分析です。
顧客育成を目指す企業の中心になるのが、顧客を層別に分けてそれぞれの「人数」「購入回数(来店回数)」「客単価」「年間売上」等を分析する「顧客育成分析」です。
「顧客育成分析」以外にも、企業の規模・業種によって、「購入カテゴリー分析」「顧客離脱分析」「顧客離脱による売上算定」「ABC/デシル分析」「商品支持率分析」「商品バスケット分析」等の数値分析を行う場合が多いです。
今回のVOL.14では、10年顧客戦略を進めるにあたって、数値の分析結果の捉え方について、経営者にとって大事な2つの考え方をお話したいと思います。(スタッフ向けの具体的な分析の仕方については、また別の機会にお話しますね。)
ここで言うまでもなく、分析自体は部下にしてもらえばいい訳で、経営者にとって数値分析は、分析そのものが大事なのではなく、その結果をどう捉えて、どう未来に活かしていくかが大事になります。
今、ビッグデータが注目されて、購入履歴だけではなく、ソーシャルメディアの言語データ分析、インターネットの検索状況分析、ホームページの閲覧状況の分析等も進んでいます。数値分析がいくら高度にあっても、経営者にとっては本質的には分析結果であることに変わりはありません。もちろん、それも大事ですが…今回は分析結果の捉え方に焦点を合わせて、コラムをお届けしたいと思っています。
■分析結果の捉え方①「分析結果を現場事実を想い浮かべてあたたかく捉える」
分析結果は「数値」なので、経営理念、ショップコンセプトで表される「言葉」と比べると無機質に感じます。
ただここで大事なのは、数値の奥には、「人のココロの動き・人の努力」があった事実に想いを馳せて、深く捉えることです。
分析結果(数値)の奥には「お客様のココロが動いた事実」、「スタッフの努力の成果」があります。その現場事実(情景・場面と言い換えてもいいかも知れませんね)の積み重ねが集計数値として、分析結果で表れています。
ビジネスの数字は、単なる数字ではありません。数学の問題にある数字とは違います。「お客様・スタッフの想い・行動」がいっぱい詰まった数字です。人の体温がつまった、あたたかい数字なのです。
例えば、「固定客の人数」の欄に、30と書いてあったとします。
実際に30人のお客様ひとり一人が実在します(当たり前ですが)。
“齋藤さん、鈴木さん、佐藤さん、山下さん、小池さん…、担当者は◯◯だったなあ”そんな事実・情景を想い浮かべながら、30という分析結果(数値)を捉えて欲しいのです。
例えば、「購入回数」の欄に、5回と書いてあったとします。
実際に標準的なお客様が年間5回来ている、その事実を想い浮かべて欲しいのです。
1回目の来店で〇〇を買って、2回目の来店で〇〇を買って、3回目の来店で〇〇を買って、4回目の来店で〇〇を買って、5回目の来店で〇〇を買って…といった情景・場面を想い浮かべて欲しいのです。
例えば、「9月の第1週の売上」欄に、200万円と書いてあったとします。
実際に今月たくさん売れた商品を想い浮かべて、お店でその商品を選んでいるお客様、一生懸命に接客しているスタッフ、その商品を使ってお客様が喜んでいる事実・情景を想い浮かべて欲しいのです。
そんな分析結果の捉え方をすれば、「言葉」に比べると一見無機質な「数値」であっても、分析結果をあたたかく捉えることができます。冷たく捉えません。
このような現場事実・情景を想い浮かべる分析結果の捉え方は、10年顧客戦略を進める経営者にとって、とても大事です。なぜなら、経営者自身が本部スタッフ、現場スタッフと徐々にココロを近づけて、一緒に進めることが10年顧客戦略を進める上で不可欠だからです。
経営者が分析結果の「数値」を表面だけで捉えて、冷たく論評すると、本部スタッフ・現場スタッフのココロが近づきません。
分析結果の「数値」を表面だけで捉えて、冷たく論評する、その行動は経営者として間違っている訳ではないのですが、事実、本部スタッフ・現場スタッフのココロが離れていきます。だからこそ逆に怖いです…。
■分析結果の捉え方②「過去ではなく、目指していく未来を見ていく」
経営者の分析結果の捉え方で大事な2つ目は、分析結果を「未来」の実現に活用していくことです。
分析結果は本質的に「過去」の現場事実の積み重ねを数値で集計したものです。分析結果は「未来」を表していません。分析結果をベースにどんな未来に飛躍したいのか、その必要があるのか、考えることが大事です。
分析結果は、「過去」を客観的に示してくれて、これからの未来を考える一つのキッカケを与えてくれると捉えることが経営者にとって大事です。
その感覚が薄いと、分析結果を見て、部下に課題を明示して、短期的な解決を迫るという一般的なパターンに陥ります。経営者の目線が「過去」を出発点にしているので、部下の目線も「過去」に向かいます。
一時的なプロモーション的な対策で、短期的に数値を上げようという形になります。部下はそれでいいかもしれませんが、経営者がこのような考え方を中心にすると、企業は縮小均衡に向かって進むことになります。
経営者は、分析結果から未来を見つめる必要があるのです。
分析結果から見える「未来」。
いろいろな未来の形がありますが、そんな未来の形の一つが「10年顧客」です。「半年・1年・3年・5年・10年にわたって、お客様にずっと通い続けてもらうこと」です。
「10年顧客」という未来を掲げるならば、「10年顧客」がより実現すれば、「10年顧客」が今よりも進めば、分析結果がどんな数値になるのか、考えることができます。
具体的には、顧客層別に、「人数」「購入回数(来店回数)」「客単価」「年間売上」等の数値目標を立てることができます。未来を想い浮かべた後に出てきた数値目標は、体温のある、あたたかい数値目標です。なんとなく決めた無機質な数値目標ではありません。そんな「あたたかい未来の数値目標」を目指して、「過去である分析結果」を見ていくことが大事です。
未来を思い浮かべた上での数値目標と比べて、今どんな位置にいるのか、どのくらい足りないのか、分析結果を見つめていくことが、これからの時代の経営者の分析結果の捉え方です。
経営者(事業責任者)の皆さん、今、部下から上がってくる分析結果に対して、どんな考え方・捉え方で接していますか?
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