事業を変革する時に、最初にやるべきこと:設備メーカーH社長の、昔の顧客が切れないという悩み。
H社は、この2年半で設備メーカーに変貌しました。
ストライプのスーツが似合うダンディなH社長です。
席に座ったH社長からは、予想に反した言葉が出てきます
「私が、まだ忙しいのです。」
私は、その言葉を聞いて驚きました、
そんなはずが無いのです、仕組化(社員化)は相当進んでいます。
H社長は、言われました。
「社長(私)に来てほしいというお客様がいるのです。」
その言葉で私は理解することができました。
まだ、「過去のお客様」を切れないでいるのです。
『自社の提案が、誰かに刺さっていること』
この状態が、事業の始まりとなります。
自社には、何かしらの提案があります。
その提案は、「誰かの何かの課題(欲求)」に対してのものです。
そして、「何かしらの価値」を実現します。
当社で言えば、「年商数億の社長へ、当社の個別コンサルティングで年商10億円ビジネスへの変革をしましょう。」となります。
例
- 〇〇イベントの物販担当者様へ、当社の丸ごと〇〇パックで、口コミによる集客と客単価アップを実現しましょう。
- 大手ゼネコンの施工担当者様へ、当社の〇〇技術で、確実な工期と品質を実現しましょう。
- 裕福な50代のご夫婦へ、〇〇設備の買い替えでは、当社の確実な〇〇サービスで、この先10年、20年の安心を得ましょう。
この『提案』が、『誰か』に、刺さっているからこそ、事業は成り立つのです。
事業を起こす時、また、事業を大きく変革する時には、この『刺さるもの』を見つけることが第一歩となります。見つけるまでは、先に進めないのです。
『刺さっていること』、これに確信が持てることが重要です。
その確信があるからこそ、次は安心して「売ること」の構築に移ることができます。集客方法を色々試すことも、販促物をつくることもできます。営業担当の採用も視野にいれることができます。
そして、仕組みの整備に進めるのです。仕組みが有っても、「刺さるもの」がなければ、それは、大きな飛躍には繋がらないのです。
お客様に刺さるモノがない状態で、事業を行っている会社は、少なくありません。そんな会社では、当然ですが、非常に売るのに苦労をしています。
その結果、下記の状態になっています。
- 頑張って売り込みをする必要がある。(相手(それほど買う気が無い人)のモチベーションを上げる必要がある。)
- 人間関係を何としても維持する。訪問回数を増やす、会食など。
- 「値下げ」を要求される。当然、断れない。
- 広告の費用対効果が悪い。そして、その集めた見込客は、「感度が悪い(それほど強いニーズを持っていない)」、または、「金を払う準備がない」。
これは、資源の限られた中小企業には厳しい状況と言えます。
そして、当然、生産性は低くなります。
冒頭のH社は、2年半前、まさにこの状態にありました。
当時の事業は、いまのようなメーカー型でなく、受託開発型でした。
顧客の要望を聞き、それに対し企画提案し、生産から据え付けまで行います。
顧客は、年商数億円から大きくても十数億円の小規模事業者です。
その顧客先企業の担当者は、「社長」となります。
相手が社長であるため、社員では到底太刀打ちできません。どうしても、社長自らが対応することになります。
そして、その場で、意思決定がされます。その後は、すべてを理解しているH社長が、基本設計をすることになります。
その結果、H社長は、多忙を極めていました。すべての顧客や案件が、そんな状態なのです。そのため、年商3億が限界だったのです。社員数は20名ほどです。この規模を、4、5年続けています。
そして、H社長は、変革を決意したのです。
そういう意味では、H社のビジネスは、「刺さった状態」にあったと言えるかもしれません。「小規模企業の社長」には、十分支持をされていたのです。
お客様からは、「何でもやってくれる」、「考えて、提案してくれる」、「いざという時には、何とかしてくれる」と評判だったのです。
この状態でも、十分にビジネスとして成り立っていました。
しかし、儲かっていません。生産性は非常に低く、年商3億円ありながら、経常利益は1千万円ほどです。(役員報酬もそれほど取っていない)
そして、それ以上に、「社員は活躍していない状態」にあったのです。彼らは、社長のアシスタント的な業務ばかりなのです。そして、覚えた頃に退職を繰り返しています。当然です、自分が活躍できる会社ではないのです。
そして、何よりもこの規模に納得していない自分がいました。
H社長は、「社員が活躍し(自分が現場を離れ)、十分儲かる会社」を作ろうと決意したのでした。
H社は、『年商10億の条件を満たしていない』状態と言えます。
ある顧客には刺さっているが、『大きくなるビジネスの条件』を満たしていないのです。
H社長が、いまの規模で自分が前線で働くことを望めば、今の「刺さっているだけ」の状態で良いのです。しかし、「大きくしたい」と望むのであれば、その条件を獲得する必要があります。
その獲得すべき条件は、「クリエイティヴを下げる」、「手間とバランスが合っている(生産性1200万円以上)」、そして、「市場シェアをとれる」となります。
H社長は2年をかけ、この条件を完全に獲得したのです。
下記が、現在のH社の事業の状況です。
・顧客は、年商数十億以上の大手中堅企業。
・お客様企業のほうから問い合わせが来る。そのニーズは明確である。
・そのため、商談が早い。予算取りもしっかりされている。値引きもない。
・先方の担当者は、「社員」。当社の社員が相手をしている。
・営業と設計、製造の分業体制ができている(まだ、やや弱いが)
その結果、今期は、年商5億が見えています。
それでも、一件の案件が大きく、業務の多くは仕組みで回っているため、社内に混乱はありません。すべてが、静かに、坦々と進んでいきます。
その状態で、H社長の口から「私(社長)が忙しい」という言葉が出たのです。
その理由は、「過去客」にありました。
「過去客」からは、H社長指名で案件が入ってきます。それも、H社長の携帯電話にです。
その内容は、以下のものです。
「設備が古くなったから買い替えたい。」
「いま新製品を考えている。その相談にのってほしい。」
「20年前に入れた設備の部品の修理をしてほしい。」
これに応えるために、忙しかったのです。
H社長は、頭では十分に理解はしているのです。
経営効率を考えれば、それらは「断るべき顧客」なのです。「当社は、昔のような相手合わせのビジネスをしていません」そして、「昔のような安い価格ではやれません」と。
H社長は、それを「不義理」と考えてしまうのです。昔のH社を支えてくれたお客様です。
私は、役目として再度説明をします。これは、「世の大きくなった企業の多くが歩んできた道」なのです。選択肢は、「断るか」それとも「誰かを紹介するか(手切れの良いように情報提供のみ)」しかないのです。
経営のことを考えれば、「ズバッと切ってください」となります。
しかし、H社長の心も大切なのです。
H社長は、「解りました」と言いました。
いずれにせよ、H社は、成長のサイクルに入っています。来期の年商は7億円近くになるはずです。そして、H社は、この年末までに、その地域の中心のオフィス街に、営業と設計の部門を移すことを決定しています。
その時は、いずれにせよ、やってくることになります。
(要点)
- 「誰かの課題」に刺さる「自社の提案(サービス)」を見つけること。
- 大きくしたいと望むのであれば、それプラス、「大きくなる事業モデルの条件」を満たすこと。
- 事業モデルに確信が持てたのであれば、仕組みづくりに邁進すること。
- その後の成長の過程で、顧客の入れ替わりが起きる。しかるべき決断をすること。
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