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社長視点の持ち方

SPECIAL

社内独立店開コンサルタント

株式会社ストアブレインコンサルティング

代表取締役 

経営コンサルタント。アパレル、小売、飲食チェーン指導などに強みを持ち、店長再生から店舗最盛へとつなげていく独自の「社内独立店開」手法を指導する専門家。
自らは店舗を持たない「販売・運営」に特化した経営スタイルに、多くの異業種経営者、店長が注目。路面店から百貨店、都心型SC、郊外型ショッピングモール…など、多様なチャネルで成果を上げ、店舗の強みを引き出す天才と称されている。

最近訪問したクライアント先での一コマです。ちょうど決算も終わったタイミングで、社員さんも含めて過去3期の比較と今後のプランを共有するミーティングを行いました。当社はこの3年間、売上は横ばいでしたが営業利益は10倍以上となり、財務的にも安定してきています。

関わらせていただく私もうれしい限りですが、一方で、社員さんからはさまざまな視点の意見を聞くことができ、今後も油断することなく、成果につながるご支援を続けなければならないと気が引き締まる思いでした。

ミーティングでは3カ年の売上や粗利、人件費などの推移を図にしてホワイトボードに書きながら、どのような流れで現在に至るのか、また、ところどころで「なぜこうなったのかと思うか」と各自に質問をしながら社内全員で理解を深めていきました。

印象深かったのは、利益が伸びていることで「お金が余っている」と感じていたり、「もっと経費を使っても問題ない」と思ってしまう社員さんが数名いらっしゃったことです。当然社員さん達に悪気はありません。この点、利益=現金と思ってしまう部分は、誰でも誤解を生みやすいポイントですので、その場で改めてしっかりと説明しました。

おそらく多くの会社で同様の誤解が生まれ、社長と社員の立場による危機感のズレが起こっているのだろうな…と再認識しました。経営者の皆さんも面倒くさがらずに、重要な数字に関しては、時間を取って誤解のないよう丁寧に説明しましょう。

さて、今回のミーティングでは、終盤で社員の皆さんに「自分が社長であった場合、ここでどう経営判断するか」という問いをいくつか投げかけました。3期分の決算情報と今後のプランをもとに、「粗利を伸ばすために何をするか」「どのタイミング新たに社員を採用するか」「その他今後すべきことは」など、まさに経営判断ともいえる質問をし、考えてもらいました。

当然、これらの問いに正解はありません。しかも社長目線で考えたことがほとんどない社員さんが多い中、それでもうーんと首を傾げながら考え、何とか色々な意見がポツポツと出てきました。

それまでは社員さん達からは(何なら幹部からも)、社員を入れないと業務が回らないとか、担当店舗のエリアが広すぎて今の人員では限界、という意見が散見されていました。ところが、現状を踏まえた上で、いざ自分が社長となって考えると、「このままの人員でしばらく頑張ってみて、必要であれば採用を‥」「利益をもっと出したうえで設備投資を‥」という意見に変わっていきます。

このように、現状の情報をかなりのレベルまで共有したうえで、その後に視点を変える質問をすると、そこでようやく他人事から自分事に変わります。何も情報がないままでは「社長の視点」は絶対に持てません。何も知らない状態で社長の気持ちなどもわかりませんし、大半の社員にとってはどうでもいい「他人事」です。繰り返しますが、その「他人事」を「自分事」に変える第一歩が情報共有なのです。

ことほど左様に、経営者にとって、社員への情報共有は相当な重要かつ優先的事項です。現状を分かりやすく、自分にも関係のある話として丁寧に伝えると、多くの社員は自分事としてとらえてくれます。そこでようやく社長の考えや気持ちがなんとなく理解できるのです。

経営者の皆さん。もし社員の皆さんに「社長になったつもりで考えてみろ」というアドバイスをするのであれば、大前提として必ず現状の情報共有を行ってください。それがなければ、全く無意味な妄想、あるいは経営者への反発心を招きかねません。可能な限り、財務も含めた現状の詳細な情報を共有しましょう。

 

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