新規事業立ち上げは経営者の魂を込めろ!!!
「業績がいい企業の特徴が3つあることは理解したのですが、残念なことにウチの会社のマーケットは成長分野ではありません。成長分野でなければ、新規事業で成長分野へチャレンジをするべき・・・とのことですが、どういう点に気をつけていけばいいですか?」──と前回のコラムでご相談をいただいた経営者の方からのご相談です。
これまでやってきたことではなく、新しく事業をはじめる訳ですから慎重にされたい気持ちはよくわかります。また、従業員の手前、経営者として新規事業をはじめるからには失敗をしたくないのも当然の気持ちだと思います。
私からは、「新規事業立ち上げは起業するのと同じなので、致命傷にならない範囲でどんどんチャレンジしてください。その際、気をつける点はこちらを参考にされてください。」として、日本政策金融公庫の「創業の手引き」をご案内、チェック項目についてご説明させていただきました。
ご参考までに、「創業の手引き」から創業前のチェックポイントを抜粋すると下記の項目となり、まさに成長分野で新規事業をチャレンジする際のチェックポイントとなります。全部で9項目ありますが、起業時の各項目と新規事業立ち上げがいかに起業することと似ているかがおわかりいただけると思います。あなたが創業社長であれば創業時を思い出して、経営者としての魂を込めて爆進してください。(緑マーカー部分が日本政策金融公庫の「創業の手引き」からの抜粋です。)
1.創業する動機・目的は明確ですか?
(創業の手引き)創業する動機を整理し、事業の目的をはっきりさせます。創業する動機は創業してからの困難を乗り越える原動力となります。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業を立ち上げる動機は「(あなたの会社の商品・サービスの特徴・得意分野を活かすために)成長分野に進出して稼ぐ!」がメインですが、あなたの会社の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」(→過去のコラムはこちら)から再度事業の目的をはっきりさせましょう。新規事業の立ち上げですので、当然ながら幾多の困難が予想されますが、それを乗り越える原動力となります。
2.創業する事業について、経験や知識はありますか?
(創業の手引き)事業に必要な技術・ノウハウの習得には経験がとても重要です。 勤務時代に培った人脈や信用が、創業後の取引先の確保につながります。また、経営者には法律、経理、税務、労務などの幅広い知識も必要です。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業に必要な技術・ノウハウは、あなたの会社の商品・サービスの特徴・得意分野を活かすため問題ありません。追加で必要な技術・ノウハウは、その技術・ノウハウを持っている企業との提携や買収(M&A)で新規事業を前に進めましょう。あなたが経営者として培った人脈や信用が、新規事業でも取引先や提携先の確保につながります。また、既に経営者として法律、経理、税務、労務などの幅広い知識は習得済ですので、問題ありません。
3.ゼロから事業を始めることに不安はありませんか?
(創業の手引き)近年、後継者不在の企業から事業を受け継いで創業する方法が注目されています。事業をゼロから始めることに不安がある場合は、選択肢の一つとして検討してみましょう。
→(新規事業立ち上げの場合) 追加で必要な技術・ノウハウを持っている企業を買収(M&A)することも可能です。新規事業をゼロから始めることに不安がある場合は、選択肢の一つとして検討してみましょう。後継者不在であれば望ましいですが、あなたが経営者として成長分野の認識がある企業のため、他者との競合が激しい可能性が大きいので、費用対効果で判断してください。
4.家族の理解はありますか?
(創業の手引き)身近で信頼できる家族に理解してもらい、協力を得ることができれば、創業後のさまざまな 困難を乗り越えていくときの支えとなります。
→(新規事業立ち上げの場合) あなたが経営する会社の「ステークホルダー(=利害関係者)」に理解してもらい、協力を得ることができれば、新規事業のさまざまな困難を乗り越えていくときの支えとなります。具体的には、経営幹部、株主、金融機関、取引先などがありますが、あなたの会社の実情に応じて対応してください。
5.セールスポイントはありますか?
(創業の手引き)商品、サービス、技術、価格、それらの提供方法などに、顧客を引きつける何らかの特色を出せるか検討します。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業が対象とするマーケットで、商品、サービス、技術、価格、それらの提供方法などに、顧客を引きつける特色をどのようにして出していくかを検討してください。単純に、成長分野だからと何も考えずにはじめるのは上手くいきませんのでやめてください。
6.事業計画としてまとめてみましたか?
(創業の手引き)自分が想い描く事業のイメージを具体的に文字や数字で表してみましょう。創業計画書を読み返すと自分の計画を客観的に見ることができ、思わぬ落とし穴に気づくことができます。また、創業計画書は、第三者に事業内容を説明して協力を得るツールとなるだけでなく、創業後に事業の現状と見比べて改善点を検討する時にも役立ちます。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業に関する事業計画書を具体的に文字や数字で表してみましょう。事業計画書を読み返すと新規事業の計画を客観的に見ることができ、思わぬ落とし穴に気づくことができます。また、新規事業計画書は、「ステークホルダー(=利害関係者)」にこれからやろうとする新規事業内容を説明して協力を得るツールとなるだけでなく、新規事業開始後に事業の進捗状況を見比べて改善点を検討する時にも役立ちます。
7.売上高や利益などを予測してみましたか?
(創業の手引き)売上(収入)や経費(支出)を予測し、最終利益から家 計費の支出や借入金の返済が可能であるか検討します。今までの経験に加え、同業他社の実績なども参考にしましょう。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業での売上(収入)や経費(支出)を予測し、最終利益から諸経費の支出や新規事業にかかる借入金の返済が可能であるか検討します。あなたの会社の実績に加え、新規事業における同業他社の実績なども参考にしましょう。できれば、取引のある金融機関に「新規事業の事業計画でこのような予測をしてみたのだけど、新規事業で必要となる資金を貸してくれないか?」と打診してみてください。金融機関が計画の妥当性を確認してくれます。
8.自己資金は準備していますか?
(創業の手引き)創業にかかる費用を借入金に頼ると、創業後、毎月の返済が大きな負担となり、資金繰りが苦しくなる場合があります。そのようなリスクを軽減するためにも、創業を思い立ったら、着実に自己資金を蓄えるところから始めましょう。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業にかかる費用を借入金に頼ると、新規事業稼働後、毎月の返済が大きな負担となり、資金繰りが苦しくなる場合があります。そのようなリスクを軽減するためにも、自己資金の確保だけでなく、新規事業にかかる助成金や補助金を検討してみましょう。
9.創業場所や従業員は確保できていますか?
(創業の手引き)業種によっては創業場所が事業の成功可否を左右するほど重要です。また、優秀な従業員を採用することも大切ですが、創業してしばらくの間、人件費は重い負担となります。家族の協力、人材派遣会社、アルバイトなどの活用も検討してみましょう。
→(新規事業立ち上げの場合) 新規事業の業種によっては稼働場所が事業の成功可否を左右するほど重要です。また、優秀な従業員を新規事業のために採用することもあり得ますが、既存事業の業績が芳しくなくて人員が余るのであれば、余った人員の活用を検討してみましょう。最終的な責任は経営者であるあなたが取る前提で、信頼のおける人材に社内ベンチャーとして新規事業を任せてみるのもありだと思います。
このように、新規事業立ち上げと起業は極めて類似しています。
まあ、新規事業立ち上げが「第二創業」といわれているくらいですから、当然と言えば当然ですが・・・笑
そして、はじめにも申し上げたように「致命傷にならない範囲」でどんどんチャレンジしてください。
計画ばかり立てていつまで経っても起業しない人が多いことからもわかるように、新規事業でなかなか新しい環境に身を投じるのは難しいことは十分に理解しています。でも、あなたは既に経営者なのですから、コロナ禍などの環境変化で新規事業開拓が不可欠と判断されたのであれば、全身全霊をかけて新規事業開拓に邁進しなければなりません。
あなたの会社の商品・サービスを成長分野に活かすために他社との協業が必要であれば、是非ともビジネスマッチングを活用してください。どのように協業すれば成長分野で活躍できるのか青写真があれば、協力が得られてきっとうまくいくはずです。
何もせずに「茹でガエル」にならないように、「致命傷にならない範囲」でどんどんチャレンジしましょう。「座して死を待つ」のではなく、成功するまで何度でもチャレンジするために「致命傷にならない範囲」を決めておけばいいのです。アンテナを高くして、取引先・従業員・金融機関などからの意見も聞きながら不退転の決意で挑んでください。
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