「強み」で切り裂く危機突破法
スポットでの面談の時、目の前の社長が笑顔で「私どもの強みは〇〇でして・・・」と具体的な〇〇が出た時、わたくしどもでは言葉にはしがたい、ある種の緊張が生じます。そしてむしろ弱々しく、自信のない感じで「自社の強みが全くわからない」「自社には優位性などない」と沈んだ社長の表情に、知ったふりをせずに「わからない」と直視できる社長の強さに共感します。
多くの社長が誤解していますが、自社のことはわからないのが当たり前です。わかるわけがないのです。それは自分自身のことがわからないのと同じ仕組みです。自分自身の後ろ姿を、おのれで見ることができないのと同じです。近すぎて客観視することができないのです。
とはいえ「新しい商品=イノベーションは組み合わせである」というのがわたくしども商品リニューアルの根本思想です。ですから、自社の「今ある資源」をどれだけ客観視し、再発見し掘り起こすことができるかがキモになります。大切なことはどこに「目」を持つか、なのです。
斯く言うわたくし自身も洋菓子メーカーにいた頃、自社の魅力や強みについて迷走し、企画がブレる経験を重ねてきました。例えば2000年(平成12年)の頃、世の中はカリスマパティシエブームでした。東京近郊の人気菓子店が華やぎ、オーナーパティシエがマスコミを賑わしていました。彼らが創るスイーツは繊細なデコレーションで、人の手で生み出される「アート」そのもの。自社スイーツの3分の1ほどの大きさで、倍以上の価格で、行列ができていました。
一方、自社のような洋菓子メーカーの創るスイーツは真逆です。例えば看板商品の「シュークリーム」であればひとつ100円ほど。子供から大人まであらゆる世代に買っていただくための大衆向け商品づくりを目指しています。工場の巨大ラインでポコポコと、どんどん生産されるスイーツに、凝ったデコレーションは不要です。できるデザインを標準化し、スタンプ化することが求められます。
商品開発の現場では、カリスマパティシエたちが生み出すような繊細なデコレーションは「できない」。生産効率からこのフルーツは「使えない」、高すぎてこの原材料は「無理」などと、自社の「できない」ことばかりが目について、隣の芝生が「青」く見えたものでした。
ご相談にいらっしゃる中小企業経営者の多くが、上記のように考え方の悪循環に陥っています。「競合他社に比べ、ウチには強みはない」「特別言えるような優位性はない、ただの〇〇です」という決まり文句があります。自社の強み、優位性を視る時「お客様の目」になって視ることです。想像することです。
話を戻しましょう。洋菓子メーカー時代、カリスマパティシェブームの中、その真逆をゆく自社の商品戦略において、どんな強みや魅力があるのかわからず迷走した時期がありました。お客様から視たときどう映っているのか、お客様の「目」になることが抜け落ちていました。
お客様、といえども一人の人間です。カリスマパティシエのスイーツばかりの毎日では飽き飽きてしまいます。時には和スイーツを食べたい日もあります。スイーツではなくてヘルシーなサラダ、温かなスープが好い日もあるでしょう。商店街の焼きたてコロッケに変わる日もあるはずです。どうにもお腹がすいてしまって、スーパーの袋入り菓子パンをパクつく時もあるでしょう。
人はバランスをとって生きています。甘いものや辛いもの、苦いものを大量に食べたら、無味無臭のお水を飲んで、刺激を調えます。「ばっかり」には耐えられないのです。「バランス」をとろうとするのが自然です。
翻って、社内は「自社商品ばっかり」の日々です。自社ばっかりの視野狭窄が、隣の芝生という妄想を生み出します。しかし、ひとたび一生活者にもどれば、自社もある、Y社もある、S社も、と世界は広がっていきます。お客様はそうしたモノやコトであふれる世界で、バランスをとりながら、心をゆらゆらさせています。
お客様にとって商品やサービスを選ぶ本質は「商品力」です。衣=ファッションであれば、今を生きるお客様が「すてき」と感じること、食べものであれば、今を生きるお客様が「おいしい」と感じること、住=ライフスタイルであれば、今を生きるお客様が「ここちよい」と感じることです。「あの会社って〇〇だよね!」の〇〇の本質をとらえて、その魅力を最大化させていく商品戦略が求められています。
お客様が「あの会社って〇〇だよね!」と喜んでくれたとき、口コミしてくれたとき、だれかに噂してくれたとき、それが自社の魅力を考える上での大ヒントです。自社の内側から生まれたストロングポイントと、現場のお客様の「〇〇だよね!」が真逆であったりします。一方、合致することもあります。後者は、かなり客観視できている状態です。
自社の強みとはSWOT分析に現れてくるような単純なものではありません。お客様の目になって想像する。お客様の声をヒントとし、鉱脈を掘り当てることです。一社一社の基盤があります。商品に昇華させるまでの工程があります。一社一社にふさわしい考え方、やり方があります。それらを上手に配合していくのが第三者の腕にかかっています。
コンサルタントの頭脳を活用すれば、その時間が大幅に短縮されます。手に入れたい未来がグンと近づきます。第三者を上手に活かすことで、プライスレスな価値を手に入れることができます。信頼して任せられる軍師、良き第三者との出会いがとても大切です。
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