決断と実行 ~経営者がコンサルタントを使う理由~
先日、久しぶりに子ども達とそのお友達と一緒に食事をする機会がありました。きっかけは、夏休みだから…とか、たまには飲みたいから…とかではなく、息子の同級生が私に会いたいと言っているから…でした。もうじき20歳になろうという若者が私に何の用事?と聞くと、「起業したいと考えていて、ぜひお母さんに会いたい」とのこと、何とも光栄なお話です。
彼は息子が小学生時代からの大の仲良しで、わが家にもよく遊びに来ていました。良い会社に就職が決まり、大きな車を購入してドライブを楽しんでいると聞いていましたので、何か心境の変化でもあったのかな?と思いながら早速会うことに。聞くと、就職した会社には何の不満も無くて、むしろいつもよくしてもらっていて感謝しているとのこと。しかし、「今、自分は19歳。一生このまま生きていくのはあまりにもつまらない、自分で事業を興してみたい!」と考えたのだそうです。
彼のお父さんも経営者で、「思うようにやってみたらいい」と言ってくれているそうですが、自分の頭の中があまりにぼんやりとしていて、何から手をつければ良いのかわからないから相談に来ました…と天使のような笑顔で話してくれました。私自身は、もともと会社員をしながらの起業でしたので全くのゼロから始めるのはとても大変だと思いますが、まあ、事業は興すことよりも継続することの方が遥かに難しいので、何かしら彼の役には立てるのかな~と思ったり。
まずは起業したいと思ったきっかけと、どんな自分になりたいのか?という未来像から聞くことにしました…。ちなみに。普段からわが家の息子には「若いうちに色々なことに挑戦してドンドン失敗しなさい」と奨励している母親なので、その路線でしかアドバイスできないことは良く知って来ているんでしょうね?と確認。(笑)
この青年との話の続きは、また別の機会にお伝えしたいと思いますが、このやり取りをしながらある経営者のことを思い出しました。今から3年前、営業力の強化と、幹部の育成をしたいとおっしゃる社長に頼まれてコンサルティングに入った会社での出来事です。
その会社は創業から十数年が経ち、売上も社員もある程度安定していましたが、何か新しいことを始めようというアイディアが出ない、新しいことを受け入れる風土がない、今あるものを守ろうとする固定概念が強い、そういった企業風土に社長は不満を感じているようでした。確かに、部長や課長はみんなまじめで一生懸命仕事をするし、お客様から言われた仕事は完璧にこなす技術も持っている、でも、お客様が思ってもみないことを提案しようとしたり、社内に新しい風を吹かせたりという発想に欠けていて、新たなサービスの開発や顧客開拓が進まないのだそうです。
私もサラリーマンの経験が長いのでその感覚はよくわかります。今やっていることを一生懸命磨いていけば、仕事の効率は良くなるしお客様にも喜ばれる。何より自分がミスを犯す確率が各段に低くなります。いつものことをいつも通りにやる…これは組織づくりや仕組み化には欠かせない要素なので大切ではあるのですが、思考が停止するという一面も持っています。幹部の育成(特に権限の委譲)が進んでいない組織にありがちな特徴です。
そこでその社長が考えたのが、外部の人間を呼んで来て、一緒に(半ば強制的に?)新たな風を吹かそうという発想です。
私たちコンサルタントが経営者から必要とされる場面は大きく3つあると思っています。1つ目は、冒頭の息子の友達のように、新しく何かを始めたい時…そのやり方について指導して欲しいと考える時です。2つ目は、今の事業を大きくしたい時…1のものを10にしたい、10のものを100にしたいなど、今のやり方を繰り返した先に期待する答えが無い場合には、大きくやり方や考え方を変えていく必要があります。そして3つ目はやめる時・終わらせる時です。長く続いてきた事業であればあるほど、「終わらせる」ことは非常に困難です。
普段、営業のコンサルティングと言えば1つ目か2つ目(ほとんど2つ目)のご依頼が多いのですが、先ほどの社長は、2つ目をやりながら3つ目を考えている…そんな感じでした。もちろん「事業を終わらせる」ことは考えていませんでしたが、「長く幹部の地位に安住しているその考え方を終わらせたい」との思いがあったようです。
コンサルティングに入ってまず行なうことは、現状を知ることと未来を描くことです。それを社長と幹部が一緒に行うことで、やるべきことが見えてきます。その営業戦略づくりから実際のやり方までをご指導するのが私の役割なのですが、現状から未来を描く段階で社長や幹部の役割の重さに改めて気づく人が大半です。そして、実際の行動計画を立てて実践するようになると、益々自分の立場の責任の重さや行動力の大切さが身に染みてきます。これは社長も同じです。なぜなら、描いた未来は誰のものでもなく自分たちのものであり、そこに向かうためには、やり方は誰かが教えてくれるかもしれませんが、一歩一歩前に進んでいくのは間違いなく自分たちの力でしかいないと思い知らされるからです。
そのことを実感できると、初めて「自分ごと」になります。
外部の力を借りるというと、何か先生的な人を呼んで来てお任せする…と考える経営者もいらっしゃるようですが、そんなことはありません。どこまでいっても会社は社長や社員やそこに関わる全ての人のものです。私たちコンサルタントはそのやり方・考え方をお伝えするだけなのですから。しかし、その「やり方・考え方」は十数年という長い時間とお金をかけて実践してきた貴重なノウハウです。それを社内の人間だけで何とかなるのか…と考えた時、早く実現したいと考える社長が使う「近道キップ」のようなものなのかもしれません。
ちなみに、先ほどの会社では、適材適所に相応しい人材だけを残し、そうでない人物には別のポジションで頑張ってもらう…という結論を社長が導き出しました。そうすることで、事業も活性化し、各々のやりがいにもつながると判断したのだそうです。
現状に満足はしているけれど、「何か違うかも?」と感じた時。外部の力を使ってみるという選択肢もあるかもしれません。社長の仕事とは、常に決断することであり、その判断材料を持つことなのですから。さて、皆様の会社ではどうでしょうか?
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