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交渉術を磨くよりも大事なこと

SPECIAL

社内独立店開コンサルタント

株式会社ストアブレインコンサルティング

代表取締役 

経営コンサルタント。アパレル、小売、飲食チェーン指導などに強みを持ち、店長再生から店舗最盛へとつなげていく独自の「社内独立店開」手法を指導する専門家。
自らは店舗を持たない「販売・運営」に特化した経営スタイルに、多くの異業種経営者、店長が注目。路面店から百貨店、都心型SC、郊外型ショッピングモール…など、多様なチャネルで成果を上げ、店舗の強みを引き出す天才と称されている。

当コラムでも何回も触れていますが、現在私はアパレル小売業からコンサルティング業へビジネスの軸足を移している最中です。それに伴い、アパレル店舗は基本的にスタッフに譲っているのですが、様々な事情でメーカーとの契約継続を取りやめる場合もあります。

当然メーカーとは契約書も交わしており、契約書の中で契約解除に関わる条項も決められています。しかしながら、簡単にやめさせてくれないメーカーが多いのも事実です。なぜなら後釜を見つけるのが結構大変なのです。もし後釜が見つからなければ店舗が継続できず、撤退せざるを得ません。メーカーにとっては相当な死活問題となってしまいます。

こんな事情から、「やめるんだったら次を見つけてね~」などと軽くのたまうメーカーの担当者もいます。こちらとしては契約通りに期限も守り、通達しているにもかかわらずです。もちろん次を見つけてくる義務はないのですが、それまでの関係性から、義務であるかの如く強く言ってくる場合も実際は多くあります。

経験上、仕事、プライベート関係なく何でも「関係を終わらせる時」に最も人間性が表れると私は考えています。今回のメーカーとのやり取りもそうですし、社員が退職を申し出た時なども同様です。プライベートにおいては、付き合っている二人が‥といったところでしょうか。

「関係を終わらせる時」に終わらせたい側は自分の意志で申し出る分まだいいのですが、終わらせられる側は大半が「え!?」と裏切られた気分になります(それまでの関係性にもよります)。

終わらせたい側が気を使って早めに言ったら「考え直せ」、なかなか言い出せず遅めに言ってしまうと「もっと早く言わないと対応できない」などと言われて、最悪の場合はダラダラと続ける羽目になることもあるでしょう。

だからといって「契約書通りにやっているのだから、誰が何と言おうと絶対にこの時期にやめます」と杓子定規な対応をすると、話がこじれて後々問題が大きくなり、相手が拗ねてしまって二進も三進もいかない状況になることも考えられます。

契約上の力関係を盾に、無理難題を言ってくるような相手は論外です。そこは強い意志で突っぱねることも必要です。が、こちらがあまりに強硬な態度に出ると先述のようにこじれる恐れがあります。自分の思うように事を運ぶには、ある程度の協力姿勢は見せるべきだと思います(まあ、お互いにですね)。

今回の場合、メーカーに対しては次の候補を見つけるポーズだけでも取るようにしたほうが、よりスムーズに事が運びます(もちろん候補がいれば紹介したほうがいいです)。相手があってのことなので、感情に任せるだけでは話が進みにくくなります。「大人な対応」つまり「感情を抜きにして相手が求めている行動や言動をある程度して見せること」は必要に応じて使った方がよいでしょう。とはいえ、感情的には「次を見つけてやめろ」というような会社には誰も紹介したくないと思いますが‥。

最後に、本当に良い会社の場合、退職者側が勝手に後任を紹介してくれることも多々あります。ここで言う本当に良い会社とは、社内、取引先等でポジション関係なくお互いが敬えるような関係性を持つ会社です。なかなかレベルは高いですが、交渉ごとに長けるよりも、私はそんな経営者、人でありたいと思います。

 

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