300人以上と接してわかった後継者が陥りがちな罠とは?
後継社長は様々な組織改革に着手します。
それはすべて引き継いだ会社を成長させ、よりよい会社にし次代に引き継ぐためという
崇高な想いからのものといえます。
ですが、意欲的な後継社長ほど、実は陥りがちな「罠」があります。
今回はその「罠」の内容と避ける方法をお伝えいたします。
後継社長と創業社長の違いはなにか?
先日、経営者が集まる勉強会に、ゲスト講師として参加しました。参加者には創業社長・後継社長の方が同じくらいいらっしゃいました。
参加者の方々のワークショップの後に、総括としてコメントを求められました。
勉強会の内容は「リーダーに必要なもの」がテーマ。
そのなかで、ある経営者グループの発表が興味深い内容でした。
「リーダー」をトップリーダーと捉え、創業社長と後継社長との対比をしていました。
創業社長の特徴は
- 四六時中仕事のことを考えている
- 想いが強い
- 信念がある、など
後継社長の特徴は
- 仕事とプライベートを分けている
- 事業に対する思い入れが弱い
- 自分の信条は経営に反映されていない、など
もちろんこれはそのグループでの意見であり、一般的にそうだというわけではありません。
ただそのグループには、それぞれの立場の経営者がいて、正直な感じ方や捉え方をまとめたということでした。
私は2014年から5年半の間、後継者として会社の舵取りをしてきました。今現在は、創業者として経営しています。
双方の立場を経験すると、その発表の意味が実感値として把握できました。
創業社長も後継社長も、経営の原理原則は同じだと思います。
ただ、それぞれが感じる苦労の種類は、それぞれで違うというのが、私が経験者として断言できることです。
後継社長の組織改革がうまくいかない原因
このような参加者の皆さんの発表を受けて、20分くらいの総括、かつ、ミニ講義をしました。
以下、講義の抜粋です。
会社の経営に必要なことは、次の3つ。
- 目的・目標を掲げること
- 事業の戦略を立てること
- 実行する組織をつくること
これは創業者も後継者も同じですが、
後継者の場合
- 目的・目標は先代以前のものを変えないまま
- 事業の戦略も軌道に乗った事業を引き継いでいるため、改めて立案する必要もなく
- 実行する組織のよくない点を見つけ、その改善にテコ入れしている
ケースがほとんどではないでしょうか。
これまで300人以上の後継社長と直接経営について話してきました。
クレドをつくって唱和している、幹部研修プログラムを導入した、新卒採用を始めた、などなど。
このような改革の施策そのものを否定しているわけではありませんが、その8割方がうまくいっていない実態を見てきました。
その原因はどこにあるのか?
端的に言えば、
目に見えている3.組織改革ばかりに手をつけ、見えにくい2.戦略を疎かにし、自身の信念・信条が明確でなければカタチにできない1.会社の目的・目標をそのまま放置している
からではないでしょうか?
後継社長が引き継いだ会社を成長させるために、真っ先に取り組むべきは、後継社長が自身の信条を明確にして、1の目的・目標を自ら掲げることです。
1を明確にしたうえで、それに沿った2の戦略を立案し、最後に、それらの事業を実行するために必要な3の組織をつくり上げる、という順番です。
上から順番に下に降りてくる、というイメージです。
このように着手するのが原理原則でもあります。
このように、本来変えるべき順番で変えるのではなく、組織だけを変えてしまい、結果うまくいかないというのが後継社長が陥りがちな罠であると考えています。
8割方がうまくいっていないのは、後継者の信条がないのか、言葉になっていないだけなのか、また、当然、自分で商売(事業)をつくってこなかった方も多いので、目的・目標や、事業の戦略を変えることに着手せず、わかりやすい、やりやすい組織から着手してしまう。
その結果どうなるのか?
1の目的・目標や2の戦略は創業者“仕様”になっているのに、3の組織や社員に求めるものだけ後継者“仕様”になっているため、ミスマッチを起こしてしまい、組織も会社もよくならないという悪循環に陥ってしまうのではないか。
というのが私の結論です。
ほとんどの創業者は、1.目的・目標から順番に考えていきます。なぜなら、意識せずともそれが自然だからです。ヒトや組織の問題は会社が大きくなるにつれ起きてくる問題ともいえます。
さらに、後継社長にとって1.先代の目的・目標や、2.事業の戦略は変えられないもの、タブーだと思って手をつけにくいということもあります。
後継社長はこのような「罠」に陥らず、成長のための抜本的な改革に着手すべき、講義ではこんなことを伝えました。
先代以前のものをそっくりそのまま守り続けて会社を潰すよりも、後継者の責任において変えるものを積極的に変えて、引き継いだ会社を成長させるべき!
というのが私の持論です。
もし今回お話した内容に少しでも該当する後継社長がいらっしゃれば、まずは自分の信条・信念を言葉にすることから始めてみましょう!
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