目線を高く
「ニシダ先生、SDGsをビジネスに活用するって、具体的にどうすれば良いんですか?」先日、とある地方の業界団体の研修会で講演させていただいた後、参加者のお一人だった社長さんが私を呼び止めてこんな質問を投げかけてきました。聞けば中小企業ながら、とある事業分野では世界屈指の実力を持っている会社なのだとか。
「簡単ですよ、しっかりSDGsに取り組んだ実績を行政にフィードバックすることを通じて、ルール作りに関与すれば良いんです。そうすれば、仕事をしやすい環境を作ることができるので。」エレベーターまでほんの数十秒、そんなやりとりを交わしつつ、個別相談のお申し込みを頂けることになったのですが、もしかすると日本にはこの会社さんのように、ルール作りに関心の薄い超優良企業がたくさんいるのではないかとみています。
しっかり自社の強みを養ってきた過去がもたらした高い市場シェアや他社に追随できない技術力、安定した品質や信頼性を武器に、堂々たる競争力を持っている。他方であくまで一サプライヤーであることに徹し、業界では知る人ぞ知る存在なのに、一般にはまるで知られていない。本業専心がモットーで、企業買収による事業の多角化など、経営力を前面に押し出した対応はまずもって考えない。ざっくり言ってしまうとそんな会社です。
そんな会社がクライアントからSDGsへの対応について聞かれた、というのが質問の背景だったようなのですが、この会社さんの場合、あきらかに本業専心が招いた視野狭窄がお悩みの原因だと思われます。製品や技術のことなら隅から隅まで知らないことはない、と胸を張れるメーカーとしての矜持は素晴らしいものです。でも、もしもその強みが社会的側面への気配りを怠ることの免罪符になっている、としたら?
安定した社会がまず存在して、良いことをまじめにやっていればその社会が自分たちを認めてくれる、というモデルは確かに今でもある程度通用します。その意味で日本は素晴らしい国なのですが、この会社のように世界から期待されているという場合は少し事情が変わってきます。
世界では自らの手で自らを助けようとするのが当たり前であること。まずこの点で認識のギャップを乗り越える必要があるのです。それさえ認識できれば、この会社も間違いなく一皮むけて強くなれるはず、エレベーターに乗り込むほんの数秒でしたが、私の心に去来したインスピレーションはそんな感じだったのでした。
世界を相手に自らの手で自らの道を拓こうとする会社を、当社は全力で応援します。
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