おウチから宇宙まで「なつかしい地球」の事業戦略
4年に一度開催されるスポーツの祭典・オリンピック。コロナ禍で一年遅れて開催される第32回東京オリンピックは「無観客開催」となりました。こうした出来事さえ「なつかしい地球」の記憶になっていく。そう予感させるのが米ヴァージン創業者らによる宇宙旅行のニュースです。
今朝(7月13日付・3面)の日本経済新聞に詳細が書いてあります。リチャード・ブランソン氏の映像はテレビなどで “お茶の間”に流れました。さらに20日には米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が有人飛行を予定しています。
メディアでは「民間人の宇宙旅行」「超高速航空」がキーワードになっています。多くの人が宇宙ものは、人類の“夢”であり叶ったのだな、という認識です。が、宇宙は夢の世界ではなく、ひとつの「産業」です。宇宙ビジネスの国際市場は38兆円規模であり、20年後には100兆円を超える超成長市場と言われています。
実際、宇宙ビジネスの内訳は「衛星サービス」が約4割でメインです。そのほか「地上設備」約3割、非衛星産業が約2割、「衛星製造」や「ロケットの打ち上げ」は合わせて約1割以下です。わたしたちがイメージする宇宙産業=ロケットという図式は、市場規模ではかなり小さく、思い込みでしかないのです。
現にヴァージンは、2022年から一般向けに宇宙旅行サービスを提供します。すでに予約受付が始まっています。価格は一人25万ドル(約2800万円)。だれもが宇宙に行くことができる価格ではない。が、歴史が示すように、生活者の方へと近づいてゆくでしょう。
地球から宇宙を夢見ていた時代の終焉です。これからは宇宙から地球を観る、観測する時代になります。わたしたちの暮らしは、地球・地球と宇宙の間・宇宙という三つのステージに広がっていきます。ゆえに近い将来、「なつかしい星=地球」といった視点が生まれ、様々な商品サービスの「価値」が変化していくと直感しています。
複雑であり、変化のスピードが速すぎる今、5年後や10年後を予測することは困難です。が、流れが可視化され、わかりやすい言葉で耳に入ってきた時、トレンド=時代の潮目が変わることはこのコラムでくりかえしお伝えしています。人間の「脳」や「宇宙」といった分野の研究成果が、新しい産業として立ち上がり可視化されている今、自社商品サービスがどんな価値を持つのか。意識的に考えていかなければなりません。アッという間に古くなり、腐り、淘汰される危機が迫っています。
今コンサルティングの現場では「安すぎる価格」に悲鳴をあげている社長がたくさんいます。コロナ禍から一年半が過ぎた今、顕著なのが取引先からの圧力です。S社のS社長もそうでした。取引先が提示する金額は下がる一方です。
S社長は顔を赤くし「コザキ先生、ホントにブラックですよ。嫌なら“他でやるからいいですよ”ですからね。ホントに悔しい!! 」バシッと机を叩かれます。売上は欲しい。がやればやるほど赤字になる。社員が疲弊し社長自身も疲弊していきます。S社長は思い切って赤字事業をやめることにしました。
コンサルティングの当初、S社の自社商品に対する誇りはとても低いものでした。「ウチの会社に“強み”はありません・・・」。社長がそう言うのです。そんな社長の前で社員は黙ったままうつむいていました。個別面談では「社員は不平不満ばかり言う」と社長が言い、社員は「話を聴いてくれない」と困っていました。
時間をかけて話を聴いていくと、ある時から「お客様から〇〇と喜ばれています」とか「自分たちは苦手だが、〇〇部門がよく研究してくれているから助かっている」等、見過ごしてしまうような小さな声がポツリポツリと出始めました。社員らの声に経営者の意識が覚醒しました。「社員は何も考えていない」という思い込みがあった、と打ち明けてくれました。
強みと弱みはセットであり、どちらか一方だけということはありません。自社の弱み、欠点、ダメなところがわかるということは、その反対もわかるのです。必ず、強み、長所、魅力に気づくことができます。自然の法則がそうであるように、光と蔭は一体です。どちらか一方ということはありません。着眼のコツがわからないだけです。
価格や量で勝負しないと決めたとき、S社はあらためて自社が提供する商品やサービスをみつめ直しました。自社のお客さまとは誰か? S社長は社員の話に耳を傾けながら、自分自身も生活者の一人であることに気がつきました。そして、社員1人ひとりが生活者であることに気がつきました。
「コザキ先生、うちの会社、実はこんなユニークな社員がいるのです」「〇〇〇に造詣が深い社員がいて、このジャンルも深ぼってみたらどうかと提案がありましたよ! 」と、S社長が弾けています。土気色だった顔色が明るくなり、まるで別人のようです。
S社長は「自社商品サービスに誇りを持ち、お客様からもリスペクトされる会社になりたい」と明確な目標、ビジョンを描き商品リニューアルに取り組んでいます。社長の思考は伝播します。社長が顔を上げると、うつむいていた社員が顔を上げはじめました。
地球と宇宙とその間の三つの市場が生まれている今、この地球=地上で活動しているわたしたちの商品サービスにおいて、その「価値」があらためて問われています。この「なつかしい地球」で、どんなビジネスをし、どんな商品サービスを提供する企業でありたいのか。S社に不足していたの商品哲学です。
ビジネスは止まることなく動いています。新しいフィールドが広がっています。商品リニューアルの根幹哲学は今ある自社の資源を根拠地に、自社の新しい「場」をつくること。自社のユニークを打ち出すこと、存在価値を再構築すること。過去のビジネスモデルで徳を得られないのであれば、あるいは生殺与奪の権を握られているのであれば、自社のフィールドを創ればいいだけ。それだけです。宇宙マーケット時代の未来、まさに“飯は天地とともにある”のですから。
宇宙から地球を見つめる時代です。自社の魅力、価値、強みを発揮して、自社のカラーを打ち出してゆきましょう。自社と自分を俯瞰しましょう。宇宙からみればあなたの会社が生み出す商品やサービスはキラキラと輝いているでしょうか? A社もB社も自社もみんな同じ? だとすれば非常にもったいないことです。
わたくしどもは、自社の色を打ち出し、強くやわらかく生き残っていく地球企業を応援する会社です。この美しい地球に存在するあなたの会社にはどんなユニークがありますか? 自社商品サービスにはどんな魅力があるでしょうか? この地球上で人の喜びにつながる商品サービスをつくり提供していく仕事は最高にエキサイティングです。今一度、自社商品の価値を再構築していきましょう。
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