平均への回帰
コンサルタントとして仕事をする際、気を付けていることは多々ありますが、その中でも「平均への回帰」という考え方にはかなり重きを置いています。「平均への回帰」とは、例えばゴルフトーナメントで、初日に良いスコアを出した選手の多くは二日目にスコアを落とす現象です。今回の結果が良かったら次回は悪くなり、悪かったら次回は良くなる。つまり長い目で見れば結果が「本来の姿」に立ち戻っていくことです。
聞いてみれば「何を当たり前のことを」と思うかもしれません。ですが、この考え方を徹底するのは非常に難しいことなのです。なぜなら、私たちの頭は何にでも「因果関係」を見つけたがる強いバイアスがかかっており、「平均への回帰」のような単なる統計はうまく処理できないからです。私たちは進化の過程や自身の経験上で、「結果」には何らかの「原因」が存在することを自動探索するプログラミングがなされていると言ってもいいでしょう。
先のゴルフの結果についても、1日目良かったのは○○だったから‥ 2日目悪かったのは○○が影響を与えたから‥などと、いかにもそれっぽい理由を挙げ、結果の説明をしたくなりませんか? 実際の所、その最も妥当な説明は「初日はとてもラッキーだった」となります。この身も蓋もない説明に賛同される方は少ないでしょう。ですが、「平均への回帰」は、大半の場合で当てはまる事実なのです。
私がこの考え方を大事にしているのは、クライアントが良い業績を残した際、実は「たまたまラッキー」だったにもかかわらず、そこに自分が関わったからだという誤った因果関係を持ち込まないようにするためです。
もちろん多くの場合、クライアントは自分が関わったことで伸びています(それが仕事です)。しかしながら、その時期たまたまラッキーで‥ということは必ずあります。それをどこまで客観的に見られるかどうか、ここにプロとしての分かれ道があるように思います。
コンサルタントは必ずクライアントの現状把握を行いますが、その際、なぜこうなったのか、という因果関係を探すのはごく当たり前の仕事です。ここで失敗すると絶対に成果は出せません。その意味でも、クライアントの「本来の姿」を深く知ることは重要であると同時に、もっと重要なのはコンサルタント自身の「本来の姿」「本来の実力」を知ることです。今後も「平均への回帰」を念頭に、背伸びや勘違いをしない仕事をしていきたいと思います。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。