他者の成功事例をどう活かすかは、経営者の捉え方次第。
先週、九州のクライアントでのコンサルティングが終わった後、訪問での個別相談を希望された企業に行っていました。
広くて立派な応接室に通され、その会社のK社長との個別相談でひとしきりお話をし、一段落した時、「ここまでで何かご質問はありますか?」と問いかけると、
「先生、他にも成功事例はないでしょうか?沢山あればあるほどいいのですが・・・。」
成功事例・・・。
多くの経営者からビジネスパーソンまで、みんな大好物な代物ですよね。かくいう私も大好き・・・とう捉え方ではないのですが参考にすることはあります。だからこそ、世の中には成功事例だけを集めた書籍も人気だったりしますし、ネット検索しても、様々な成功事例が紹介されています。(もちろんネット情報は何らかの誘導のためであることが多いですが)
当社でも自社セミナーや個別相談、コンサルティング現場でも、当社の成果によるものから他の成功事例、時には失敗事例をお伝えるすることは多々ありますが、なぜ、成功事例をお伝えしているのか?
その理由は、成功事例を真似すればきっと成功しますよ!と言いたいためでは決してありません。
重要であると認識いただきたい部分を、より判りやすくお伝えするために、よりご理解いただくために、事例も用いながらお伝えしています。
セミナーのような複数の方々を対象にする場合では、より一般的な事例や、当社が実際に行った事例などをお伝えしますが、個別相談や実際のコンサルティングでは違います。
その企業の事業や、取り扱う商品・サービス、これから力を入れていくブランドや商品に対して、参考になるであろう事例を個別に用意したりします。
ちょうど個別相談日の直前、日経MJにマーケティング業界で有名な神田昌典氏(私も講演を受けたことがある)の連載コラムの掲載があり、私は興味深く読んでいました。
その冒頭では、こうありました。
“若手経営者が集まる講演会で、企業のデジタル変革の話をしたところ「事例を教えてほしい」という質問をされた。繰り返し同じ質問をされたので、私は困惑してしまった。他社事例を数多く集めたがる人ほど思考停止に陥り、変革をあきらめがちだ。しかし、なぜそこまで事例を求めるかを熟考すると、重要な視点が欠けていることに気付いた。それは「現状維持バイアス」だ。”
“現状維持バイアスは「変化や未知のものは避けて、現状を守ろうとする傾向」である。その傾向が強いほど変化できなくなる。私は若手経営者たちが想像以上にそれに縛られていることを見落としていたのだ。”
さらにこう続いていました。
”現状維持バイアスが生じる要因は「安定を優先する傾向」「変化に対するコストへの懸念」「変化による後悔や非難への恐れ」がある。若手経営者が抱える悩みはまさにこれだ。多くはオーナー企業の2代目以降で、自由に経営できずにいて、不用意に変化を起こすこと、先代や古参社員などから非難され、損失を出せば何を言われるかわからない。目先のことを考えれば、安定を優先した方が賢明だからだ。しかし、変革しなければ先がないこともわかっている・・・。”
先のK社長も3代目社長。K社長からのご質問は、まさに神田氏のコラムにあった若手経営者とまったく同じだと感じました。
「K社長、事例はあくまでも参考であって『よしっ!次はウチ独自の商品やサービス、ブランドを展開して成功するぞ!』となっていただきたいのです。」
「独自の商品やサービス、ブランドを目指すなら、当社は全力をあげて支援しますよ。」
成功事例を求めることが悪いわけではありません。
他者の成功事例を知って刺激をもらい、独自の商品やサービス、ブランドを展開するとなっていただきたいのです。
成功事例を真似たりするだけではどう頑張っても成功事例の会社以下にしかなりませんし、最新事例!といわれてもすでに世の中に登場している以上、その時点で新しくはないのです。
そして、当コラムでも何度かお伝えしている"隣の芝生は青い病"。
芝生を青く豊かに綺麗に力強く育てて成功事例を作った会社が、そう見えるものです。
この裏側には必ずといっていい程、泥臭い、ものすごい努力があり、また失敗も数多く経験してきて、ようやく素晴らしい成功事例となった今、他者から羨望の眼差しを受けているのです。
他者真似だけで成功を簡単に手に入れらないことは、真の経営者ならよく分かっていらっしゃるはずです。
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