「良い人が採れない」と「自分に合う仕事がない」の共通点
経営者の相談に載っていると、人材のお悩みを聞くことが多くあります。コロナ禍の渦中でいったんは下火になった「人が採れない」問題も、アフターコロナの風景が見えて来るほどに再浮上。コロナ禍ではあっても順調に業績を伸ばしている企業は少なくなくて、「やはり人が足りない」という声は聞こえてきます。
先日、話を聞いたのはまだ若い社長。現場で即戦力になってくれる経験者を採用したいが、このご時世では難しい。「では、シニアは?」と尋ねると、少し考えたあとで「シニアを雇うことを考えるなら、むしろ外注に仕事を出す」と。
当たり前ではありますが、「自分より年上の経験者は扱いにくい」ということのよう。
かといって新卒の学生が採用できるかというとそれも難しく、ほどよい経験者も見つけられず、二進も三進も行かない様子です。
他方、シニアの皆様も自分にあった仕事が見つからないというお悩みを抱えておられます。「自分にあった仕事」とは、「自分の経験が活かせて、ある程度指導的な立場になれる仕事」とのこと。
数十年にわたる仕事の経験があり、もしかしたら現役時代はリーダー的な立場におられたシニアの皆様にしてみると、いまさら新しい仕事に手を出したり、誰かに指示されたりする仕事は考えにくいということのようです。
少子高齢化が進み、年金支給開始年齢は引き上げられ、アフターコロナの人材不足がささやかれる中で、明らかな雇用のミスマッチがあることを感じます。
人不足を悩む側も、自分に合う仕事がないとい嘆く側も、それぞれの事情と心情はよくわかります。でも双方が言い分を曲げないと、平行線を辿るばかりで状況は改善せず、自分の首を絞めるばかり。
若い社長の側は、異業種から比較的若い転職組の男性を受け入れて、自社で育てていきたいといいます。
「シニアがダメなら、女性はどうですか?」と水を向けると、「女性だと生産性が落ちる」と全否定。現場系の仕事なのである程度納得はできますが、トラックのドライバーや体を使う仕事に女性が多く進出している現状を鑑みると「もう少し柔軟に考えても良いのでは」という考えが頭をよぎります。
シニア社員の活用に関しては、少し前の日経ビジネスに成功のヒントが掲載されていました。それは、新天地で仕事を得たシニアの方が語った言葉で、簡単に言うと「過去の経験にこだわらず、必要とされる仕事をやる」ということでした。
「そんなことするくらいなら、むしろ、年金で暮らす」という方も多いでしょう。そのお気持ちよく分かります。そしてそれが可能であればそうするのが一番いいと思います。
でも人はパンだけで生きるのではありません。やはり誰かの役に立っているという実感がないと生きていけない。「退職した途端に10年くらい老ける」と聞いたこともあります。生きがいと仕事は表裏の関係です。
さて、何が言いたいかというと、「若い男性じゃないと、うちの仕事は務まらない」と考えている方も、「経験が生かせる指導的な立場じゃなければ仕事しない」という考えも、どちらも、過去から培われた根深い認識が未来へ踏み出す力を阻んでいる、ということです。
環境は変わっているのに、認識も思考も変わっていない。だからミスマッチが起こっているのです。「そんな選択肢はあり得ない」と思う前に、「そんな選択肢をとるとしたら、何が必要か」という観点で考えてみると、意外に新しい展開が見えてくるかもしれません。
人がいなければ仕事が滞るし、仕事がなければ経済的にも精神的にも生きていくのは難しい。ならば突破口は、認識を変えることです。変えれば次に打つ手が見えてきます。ぜひ一緒に考えましょう。
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