「脱 下請」経営者が銀行を活用して、自力で稼げるようになる方法
「下請けという立ち位置から脱したい、と模索しているのですが、何に注意して対応すれば良いのでしょうか?」──前回のコラムをご覧いただいた、とある経営者の方からのご相談です。
前回のコラムでもお伝えしましたが、このご質問を受けるたびに「脱 下請」を目指す経営者の方が、オーナー社長なのか、雇われ社長(=会社員)なのかを確認した上で回答をさせていただいています。
オーナー社長であれば、覚悟が決まっていますので特に問題はありません。
コロナ禍で親会社の業績悪化で皺寄せがきたとしても、自力で新規大口受注先を獲得しようと率先して動き、覚悟を決めて全身全霊をかけて様々な策を実施されますので、寄り添って一緒に駆け抜けるだけです。
一方で悩ましいのが、親会社や大口受注先から出向してきた方が雇われ社長(=会社員)である場合です。
口頭では、「脱 下請」を目指したいとおっしゃるのですが、出向中で親会社や大口受注先にまだ在籍している場合、立場上、表立って「脱 下請」の活動をするのを躊躇される場合が多いのです。
このため、経営者としての覚悟が決まらず、大半は中途半端になってしまうのです。
出向しているということは、経営者といえども雇われ社長であり、会社員としての給料の一部(または全部)が出向元の親会社や大口受注先から支払われています。
また、一般的には片道切符である年齢や期間が経過すると転籍になるのですが、元の職場である、親会社や大口受注先に呼び戻される可能性もあります。
このため、表立って「脱 下請」の活動をしようとしても、親会社や大口受注先に目をつけられるかも知れないから、と、避けようとする相反する気持ちが働くのです。
もともと、現状維持バイアスで人間は変化を好みません。
現状維持でよしとする傾向が強いので、「元の職場に目をつけられては困る・・・」「別に、私が脱下請の活動をしなくても当面は問題が生じないはず・・・」など、言い訳を作って表立って「脱 下請」の活動をすること避る着地点を選択することがほとんど、と言っても良いでしょう。
あなたが自分自身の立場を、オーナー社長とした場合、雇われ社長(=会社員)とした場合で想像していただければ、このような心理状態になるのも頷けるはずです。
特に、現状維持バイアスは非常に強力です。
それを念頭において、どのように対応することが望ましいのかを考えてみましょう。
では、具体的にどうやって「脱 下請」をしたらいいのか、過去、私が実際に取り組んだ事例での対応をお伝えします。
1.「脱 下請」のために新規受注獲得リスト先の選別・リストアップ後、社内方針決定
2.親会社または大口受注先に対して、今後の発注見込を確認
3.回答結果に応じて対応(伝え方が変わるだけで、「脱 下請」は決定事項)
a:発注見込額が回復見込
今後、コロナと同様の事態が発生したときに備えて「脱 下請」の対応をする旨打診(表明)
b:発注見込額が低下傾向継続見込み
下請先としては、事業継続が厳しいために「脱 下請」の対応をする旨打診(表明)
4.新規受注獲得リスト先へのアプローチ開始
a:既に、経営者や営業担当者が新規受注獲得先との接点がある場合
経営者が先頭に立って営業推進
b:経営者や営業担当者が新規受注獲得先との接点がない場合
銀行経由のビジネスマッチングを活用しつつ、経営者が先頭に立って営業推進
5.新規受注獲得リスト先との契約締結・取引開始
6.受注先の見直し実施&その他の新規受注獲得リスト先へのアプローチ
(商品別の売上構成や利益貢献度などに応じて、ABC分析などを実施&見直し)
バブル崩壊後、日産自動車のゴーンショックの頃までは、「脱 下請」の申し入れに対し、親会社や大口受注先の一部からの反対や嫌がらせがあったこともありましたが・・・
経済産業省、中小企業庁や公正取引委員会が下請法の運用基準を改定し、法令順守を強く要請していること、さらに、今般のコロナ禍での影響等もあり、最近はそのような事例は聞かなくなりましたので、心配する必要はありません。
親会社が50%以上の議決権を持ち実質的に同一会社内での取引とみられる場合を除き、自社の「生殺与奪権」を、親会社や大口受注先に決して握らせてはいけません。
コロナ禍による非常事態宣言などで、既存の取引を守ることに終始し防戦一方になりやすい状況ですが・・・
「ピンチこそチャンス」、何としても「脱 下請」しつつ「販路拡大」に積極的にチャレンジしていきましょう。
平常時には、なかなか「脱 下請」にチャレンジすることは難しいものです。
しかし、コロナ禍で経済が低迷している現在だからこそ、親会社や既存の大口取引先とあまり事を構えずにチャレンジすることが可能なのです。
経営者であるあなたがきちんと「脱 下請」に舵を切って、経営権を手にしてください。
今だからこそ、商品別の売上構成や利益貢献度などに応じて、ABC分析などを実施しあなたの会社の受注先を常に見直すとともに、新規受注先へのアプローチでスクラップアンドビルドをしていきましょう。
「ニューノーマル」時代を乗り越えて、更なる発展をしていくためには、「脱 下請」が必須です。
あなたも「生殺与奪権」を取り戻し、経営者として思う存分活躍するために、「脱 下請」にトライしてみませんか?
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