壊れる前に自ら壊す
私は仕事をするうえで(生活をするうえでも)常に念頭に置いている法則が一つあります。それは「エントロピー増大の法則」です。何だか怪しげで面倒くさそうなネーミングですが、そんなことはありません。物理学の熱力学分野における大原則の一つであり、自然界のすべての物質がしたがう、超重要なルールなのです(どう考えても面倒くさそうですね…)。もし初めて聞いたという方は、絶対に知っておいたほうが良い法則ですので、そのまま読み進めていただければ幸いです。
「エントロピー増大の法則」とは、「物事は放っておくと乱雑、無秩序な方向に向かい、元には戻ることはない」という法則です。もっと簡単に言えば「カタチあるものみな壊れる」ことわざで言えば「覆水盆に返らず」となります。エントロピー自体の意味は「乱雑さ」で、それが増大するという一方向にのみ進み、決して逆行はしないことをこの法則は表します。
コーヒーにミルクを入れれば徐々に混ざり合い、時間が経つにつれ熱は冷めていき、カップを落としてしまうとコーヒーはあたりに飛び散り、カップは割れてしまいます。この一連の流れは、自然に任せて放っておいても、決して動画を逆再生するようにもとに戻すことはできません。雲が形を変えるのも、氷が解けていくのも、整理整頓された部屋が散らかっていくのも、すべてエントロピー増大の法則にしたがった現象になります。
そんな自然界すべての物質がしたがう「エントロピー増大の法則」に唯一抵抗する存在があります。それは私たち人間をはじめとした生物です。最終的には寿命を終えることによってエントロピーの増大に抗えなくなりますが、生きている間、生物はエントロピー増大の法則に先回りして自らを壊し、そして再構築をする「新陳代謝の仕組み」を作り上げることで身体という秩序を保っているのです。
さて、少々小難しい話が続きましたが、「エントロピー増大の法則」は、当然会社や組織、人間関係にも成り立ちます。世の中のどの会社も、放っておけば秩序は乱れ、人も仕組みもバラバラな状態になっていきます。
会社がエントロピー増大の法則に抗っていくためには、生物と同じように「新陳代謝の仕組み」を自らの内部に作り上げる必要があります。何もせず放っておけば、確実に衰退していきます。会社が健全な状態で、顧客に対し長く価値提供するためには、定期的に自らを壊し、新たな体制を再構築する仕組みを導入しなければなりません。
数年ごとにトップを交代するのはその最たるものです。また定期的な人事異動もそうでしょう。事業として今上手くいっていることでもあえて壊し、新たなやり方を取り入れることも重要です。外部人材の活用も有効な方法の一つでしょう。
「現状維持は衰退の始まり」はまさにエントロピー増大の法則に飲み込まれてしまう状況を表しています。私自身、今後も常に新たなことに挑戦する気概を持ち、実践を重ね、エントロピーを超越するような経営者、コンサルタントになることで、クライアントや関わる人に最大の価値貢献をしていきたいと思います。
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