「改善事例を真似て業績が上った話を聞いたことがありません。成長企業が改革の柱とするのは事例ではなく○○です!」
「先生、いろいろやったんですけど、人時売上を上げるのに、近道なしということですね。」とあるチェーンの社長さんの一言です。
聞くところによると、これまで人時売上について社内会議で、話し合いを続けてきたものの、全く数値が変わってこない。
たしかに人時生産性改善は、外からは見えにくく、改善手法などの情報量も少ないことから、手間ひまかけてやったものの、残念な結果に終わってしまっている。というのはよく耳にします。
他社の好事例をちょこっと真似て、利益が2倍3倍になるのであれば、国内企業のほとんどで社員給与が1.5倍~2倍になってもおかしくないはずですが、この巣ごもり特需でもできなかったことですから、それがいかに難しいことなのか想像できるといえます。
なぜ、人時生産性とこれだけ騒がれているのに、多くの企業でうまくいかないのか?
理由はシンプルで、人は「自分のことは見えない」ということです。問題の渦中にいると、回り状況が見えず、想いだけが先行して冷静な判断ができなくなるからですが、自らの姿を俯瞰することで、その姿や置かれた状況から、はじめてとるべき行動が見えてくるといえます。
言い方をかえますと、実態を正しく把握し進むべき方向が、明文化されたものさえあれば「悩む」「探す」「やり直す」といった、時間ロスは最小限で済む。ということです。
企業訪問し、メンバーの方とお目にかかると「現状で手いっぱいなのに…」「今度は何が始まるのだろうか…」「こんなことで販売不振から回復できるのか…」といった、不安と疑問が入り混じった雰囲気が漂っています。
これが数カ月経つと、「こんな方法があったのか?」とか「こんなこと やってもいいんだ!」と、メンバーの気持ちが徐々に変わってくる。ということです。
と言うのは、自社を題材にした改善はというのは、誰もが自分自身のこととして真剣に取り組むからです。社長は活動を通じて、普段垣間見る事の出来ない、社員自身の成長する姿を見ることが出来ます。
実際に、プロジェクトのメンバーの昇進昇格は必ずといっていいほど期中で行われ、それがメンバーの貢献意欲をさらに高め、大きな結果をもたらしてくれます。
気を付けなくてはならないのは、意欲だけでは何も進まないということです。スタートすると、必ず問題になるのが、論理的に課題解決をしていくための「文章力」が問われるということです。
例えば、店舗現場のヒアリングをして、作業量の多い業務や、非効率的な会社のやり方について、まとめてくわけですが、それが、何を言っているのか?意味不明ものが出来上がってくる、ということです。
なぜ、小売りチェーン企業の幹部は、こんなにも日本語の文章が書けないのか?
その背景に、小売業は作業優先で、文章の書き方や企画の取りまとめ方を学ぶ機会が与えられなかったということと関係しています。
日本の商習慣は、江戸時代、丁稚奉公し下働きから…という商文化があって、そこでは「習うより慣れろ」「人の技は盗め」といった、ベテランの技を時間をかけて学ぶ、年功序列が重視され、人海戦術の経営基盤を築いてきました。
家族経営であればまだしも、事業規模が拡大し、数百、数千人規模の従業員を抱えその生産性を上げようとするとすれば、口頭指示や、人の得意技に頼った仕事のやり方で、生産性をあげることは不可能ということです。
実際に、取り組まれている企業では、業務項目を定義することで、曖昧な指示がなくなり「私はそう思わなかった」とか「聞いてる、聞いていない」といった行き違い、勘違い、は無くなります。
たかが言葉ですが、些細な行き違いが無くなるだけで人間関係がスムーズになるのはご承知の通りで、ムダな時間や手間は大きく削減できるものです。結果的に業務が進展することから、社員が明るくなるのはある意味当然のことと言えます。
大事なことは、「口頭」で伝えるやり方から「文章」で伝える。ことであり、これが社長をはじめ幹部社員ができるようになった時、大きな成果をもたらすようになるということです。
さあ、貴社では まだ、「人による口頭」にこだわりますか?それとも「文章力」を有する企業となり、他と一線を画し大きく飛躍しますか?
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