ゾウとネズミの共通点
仕事柄、これまでに多くの企業経営者とお会いしてきました。売上や資産などの規模も様々で、「規模の大小によって特徴が全く違うな…」と思う反面、「同じような規模だと共通点も多いな…」という印象を持っていました(ま、当たり前ですね)。実際、経営者の価値観、意思決定の進め方や人事制度、社員の働き方など、同様の規模だと似ている部分も多々あります。
動物に例えれば、ゾウにはゾウの、ネズミにはネズミの、それぞれのサイズに合った共通の特徴があるのです。一般的には、長きにわたって経営を行っている企業は比較的大きくなり(例えばゾウのような)、起業したての個人事業主など当然最初は小さいサイズ(例えばネズミのような)でのスタートになります。
ゾウはその大きさ故のメリットとして、捕食者には狙われず、少しの環境変化にはびくともせず、長生きできることが挙げられます。しかし、一つの行動に時間がかかり、また一世代の時間が長いため、大きな環境変化に襲われれば変異できず絶滅してしまいます。ネズミなどの小さい生物は捕食者に狙われ、あるいは他の様々な理由で死んでいきますが、多産で多くの変異も生み出すため、環境変化に対応した次世代を残せます。
さて、実物のゾウは100年近くの寿命を持ち、ネズミは数年の寿命を持つわけですが、意外な共通点があります。それは、どちらも一生の間に鼓動する心拍数は「20億回」と同じ数になることです。ゾウ、ネズミに限らず、哺乳類はほぼこの数字になるそうです。
共通点はまだあります。哺乳類が一生に使うエネルギー量は、体重1キログラムあたりにすると、寿命の長さによらず一定になるとのこと。つまり寿命が短い動物ほど、短い時間で激しく命を燃やすようなイメージです。
物理的な時間(時計が刻む時間)で言えば、ゾウの方がネズミより圧倒的に長生きと言えます。しかし心拍数やエネルギーの使用量、代謝などで表される生理的時間、つまり「一生を生き切った感覚」は体の大きさや寿命の長さとは関係なく、どの生物も変わらないのかもしれません。(参考書籍「本川達雄著 ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学 中公新書」)
これは企業経営にも当てはまることだと強く感じています。体の大小や寿命の長短にそれぞれメリットデメリットはありますが、決して絶対的な良し悪しではありません。加えて、大企業であっても、個人事業であっても、その一生に使うエネルギーの総量は大半の生物と同じく実は変わらず、つまり「やりがい」をはじめとした人生の充実度も大して変わらないのではないでしょうか。
隣の芝生は青く見えがちです。大企業の人からは個人で自由にやっている姿がうらやましく思え、個人事業主からは大企業の安定高収入がうらやましく思えます。誰でも生きていれば、自分がどういう生き方、働き方をしたいのか、わからなくなることもあると思います。ご多分に漏れず、私もそんな時がありました。
皆さんも生き方や働き方に迷ったときは、いろいろと視野を広げてみてください。「解決するヒント」は意外と身近な動物たちが教えてくれるかもしれません。
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