経営者しか決定できない?業務システムの可用性とは?
ある社長さんから「鈴木さん、システムの提案書の中に可用性という言葉がありますが、そもそも可用性ってどういう意味ですか?」という質問を受けることがあります。このコラムでは前回もお話しましたが、「可用性」という日本語の熟語なのに、一般的には意味が良くわからない難解なIT用語の一つです。しかも可用性についてはその判断を間違えると、会社にとって致命的な事故に繋がることがあるので、社長は注意深く検討しなければならないのですが、それが言葉の壁でわかりにくいというジレンマを抱えています。
システムで言う可用性とは、「システムが継続して稼働できる度合い」のことを意味しています。つまり、計画外の停止や故障をどの程度許容するのか、という度合いです。「システム化したのだから故障なんて無い」と言い切っている方もかなり見かけたことがありますが、それは完全に誤解です。自動車でもいつかは故障するのと同じ様に、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで成り立っているシステムであっても、いずれ故障します。可用性を向上させる、ということは、その故障がなるべく発生しないようにしましょう、という対策と、例え故障が発生した場合でもユーザーにはサービスを提供し続けることができるようにしましょう、という対策のいずれか片方、もしくは両方を考えることになります。
例えば銀行のシステムなどは、(大手銀行でのシステム不具合のニュースは耳に新しいですが・・・)可用性を極度に上げるべく、様々な対策を施しています。もちろんその分余分にお金がかかるので、どの会社でもできることではありませんが、財力に限界のある中小企業であってもその体力や身の丈に合わせた可用性対策が必要なのです。
問題はここから。システムの可用性対策を決定できるのは、経営者しかない、ということです。例えば、新しい業務システムがあったとします。このシステムが停止した時、御社にはどのようなダメージが発生するでしょうか?受発注システムであれば、それが止まるということは受注できなくなる、出荷できなくなる、ということに直結します。システムが止まっている間、担当者が伝票を取り出して作業できるのであれば、会社に対する影響は最低限に留めることができるかもしれません。
しかし、そもそも伝票仕事は効率が悪く、人の能力に依存しやすいことなので、伝票に切り替えても仕事をこなしきれないかもしれません。しかも、受注処理はお客様との接点そのものなので、お客様に対して不便を強いることになるかもしれません。停止時間が長ければ、もしくは、お客様が巨大なお得意様であった場合など、システムの停止の会社経営に与える致命度は大きくなります。下手をすると、某大手銀行の様に信用度の失墜に繋がることも起こりえますし、最悪の場合は資金繰りに行き詰まることもあり得ます。つまりシステムの可用性については最終的に経営者が決めなければいけないこと、なのです。
当然、最大限の対策を施せば可用性は上がります。しかし、可用性99.0%を達成するのと、それを99.9%に上げるのでは、必要な投資金額が大きく違う、というのがこの世界の常識です。細かな説明は割愛しますが、比較的容易に99%を達成できたとしても、それを0.9%改善するのは莫大な資金が必要となることが多いということです。つまり、可用性の目標設定と、投資金額の決定、というバランスを上手にとらなければならないことになり、この点でもそれを責任もって決められる人は経営者である、ということになります。システム担当者任せ、IT業者任せにはできませんね?
可用性と言う言葉の本質を理解せぬまま、可用性対策をおろそかにしてしまい、故障事故が発生した際に会社が傾く・・・そんなことが無い様にしたいですね。
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