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首都圏マンション事情通信

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

「最強マンションTOP100」

Amazonのキャンペーンでついで買いした首都圏のマンション情報誌を読み返してみました。やたら重たいということもあっていつもはパラパラ読みですが、読書台に置いて購入希望者の目でしっかり熟読してみました。

特集は「最強マンションTOP100」というテーマで、2000年から20年間に分譲されたマンションの価格上昇率を基準に資産価値アップの要因を解説するという内容でした。なんと1位の物件は2004年に分譲されてから+108%という価格上昇率が書かれていて、首都圏ということもありタワーマンションがたくさんエントリーされているのです。

掲載データはすべての物件を80m2換算価格にしてあって、それでも1億をはるかに越える分譲価格がずらりで、改めて驚愕しました。元々好立地で高い物件がさらに値上がりしている傾向が見て取れました。

 

↑読書台に鎮座する300円なのにやたら重たいマンション情報誌

 

CG満載の物件紹介

特集記事で驚愕ののち、新規分譲物件の紹介ページを読み進めます。あらためてビジュアル品質の向上に感心。CG満載の記事構成ですが、もはやどこまでがCGか実写かは意識して見ていないとスルーしてしまうクオリティです。

新築物件ですから当然完成していませんが、そういうことは忘れてしまうぐらいリアリティがあります。CGにはめ込みで実写画像を入れてあったりして巧みです。そして、撮影日のクレジットがある実写写真も画質調整で全体トーンをCGに寄せてあって、ますます実写とCGの区別がつきにくい紙面づくりになっていました。まさに夢の世界です。昔のように手描きのイラストはほとんどなくなっています。

 

↑Q:この中にひとつだけCG(と表記されていた)があります。さて、上・中・下どれでしょう?
(こたえはこのコラム最後に↓)

 

 

マンション性能キーワード

販売物件紹介ページの見かたを解説するページに「マンション性能キーワード」という欄がありました。

 

■長期優良住宅
■住宅性能表示制度
■住宅瑕疵担保責任保険
■マンション環境性能表示制度

 

「マンション環境性能表示制度」というのは見慣れないなと思い調べてみました。

 

「マンション環境性能表示制度」とは、一定規模以上の新築マンションについて、販売広告などに建物の環境性能を表示することを定めた制度。東京都、大阪府、愛知県をはじめ、名古屋市、大阪市、横浜市、京都市、神戸市など20以上の自治体が行っている。
東京都の場合、延べ面積2000m2を超える新築(または増築)の建築物で住居部分の延べ床面積が2000m2以上のマンションに「建築物環境計画書」の提出を義務付けている(延べ面積2000m2未満は任意提出)。これをもとに、以下の5項目について3段階評価し、所定のラベルに星の数で表示することとしている。

 

(1)建築の断熱性…建築物外皮の熱負荷抑制

(2)設備の省エネ性…設備システムの高効率化

(3)再エネ設備・電気…再生可能エネルギーの変換利用、再生可能エネルギー電気の受入れ

(4)維持管理・劣化対策…維持管理、更新、改修、用途の変更等の自由度の確保、躯体の劣化対策

(5)みどり…緑の量の確保、高木等による緑化

 

以上、SUUMO(スーモ)住宅用語大辞典より

 

そして、その3段階評価の不動産業界では以下のような解釈のようです↓

 

星の数 
★・・・・・法令等が求める水準にあるもの
★★・・・法令等が求める水準を上回っているもの
★★★・環境配慮の取組が最も優れている水準にあるもの

 

東京都環境局のホームページで各物件毎の性能表示内容の詳細が公開されています↓

 

https://www7.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/

 

この一冊でいろいろと勉強になりましたが…一般の人が勘違いしてしまいそうな気もしました。さまざまな「推し情報」の実態や裏付けがとにかくわかりにくいのです。気になったことを何点か挙げておきますと、

●東京都のホームページには2009年度基準、2013年度基準、2014年度基準、2020年度基準とありました。申請年度で扱いが分かれていくようですが、同年度の物件は「星の数」で比較できても、年代が違うと「星の数」での単純比較はできないようです。

●マンションのような集合住宅の場合は住戸によって開口部が違っていたりしてかなり熱負荷に関する性能に開きがあり、さらに階数・方位などで実際の熱収支はずいぶん違うそうですから「星の数」は棟ごとの「傾向」として物件比較にとどめたほうが良さそうです。(でも、購入者は「星の数」が購入する住戸を表しているものと解釈してしまいそうです)

●「★★★」であったとしても、法令の求める水準自体が「低すぎる!」との見解もあります。行政としては、主に国の施策としての方向に段階的に誘導していく意図で制度を運用しています。ということは、当然に基準は今後変化していくものと思われますので、星のとらえ方には注意が必要です。(どうも「★★★=最高等級」がひとり歩きしていきそうです)

 

↑広告に表示するマンション環境性能表示。右下の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づき建築主が自己評価したものです。」という文言がなんとも「お役所的」です

 

世の中には移ろうものと、移ろわないものがあります。
移ろうものの中にも「早く移ろうもの」と「ゆっくり移ろうもの」があります。
ご紹介した「最強マンションTOP100」「CG満載の物件紹介」「マンション性能キーワード」はどれも価値が移ろうものであり長い目でみると「バーチャル(仮想価値)」といっても良いものかもしれません。「投資対象」としての物件を選ぶためにはいいのかもしれませんが、身の置き場である住まいの選択基準としては危ういものを感じます。

 

あなたの会社では、お客様に「移ろうもの」を説明して購入を促していませんか?「移ろわないリアルな価値」を自社のモノサシで語れていますか?

 

Q:のこたえ→下でした!

 

 

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