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IT化提案書 難解な技術用語の無視は危険

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

「鈴木さん、システム開発会社から提案書をもらったのですが、何を書いてあるのかちんぷんかんぷんで困っています」というご相談は実に頻繁に頂きます。どんな提案書をもらったのか現物を拝見しつつ、例えば何が解らないのか言ってみてください、と尋ねてみると、意外にも日本語熟語が良くわからないとの回答も多いものです。とかくアルファベット数文字の略語が現れては消え、専門家でないと知らない略語が使い捨てされて久しい業界ですが、実は日本語であっても業界ならではの言い回しをされていることも多く、一般の方には誤解やすれ違いを招いていることも多くみかけます。

例えば「非機能要件」。これは対を為す「機能要件」から派生している言い回しです。ややこしいことに「非機能」と「要件」という二つの単語で構成されており、わかりにくさを助長しています。「要件」と「用件」の使い分けが曖昧であることもあって、余計に謎めいていますね。更にこの言葉を使っている方に、正確に意味を説明するようにお願いすると、時としてしどろもどろになってしまうこともあります。かく言う私も短く適格に説明する方法を体得しているわけではなく、結構長々と説明してしまうことが多いものです。

しかしよくよく考えてみると、これはおそらく英語から翻訳した言葉なのではないかと思えます。非機能要件、これを英語にすると「Non-functional requirements」。日本語で書かれるよりもなにやらしっくりと腹に落ちる様に思えます。正解は・・・非機能要件とは「機能面で実現して欲しいことではない要求事項。例えば運営方法の明確化やマニュアル作成などの付帯業務といったこと。」と言えます。要件という言葉が曖昧であるが故に、非機能という言葉と組み合わさったことで非常に解りづらいものになってしまった一例と言えるでしょう。

少し遠回りしてしまいましたが、このようなわかりにくい言葉が多数並べられた提案書などの文書は、読む方に大きなストレスを与えます。日本語の言い回しだけではなく、こんな例もあります。

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一般人には何のことやらさっぱりわかりませんね。わかりにくい英単語を日本語で接続しているだけのような文章です。本コラムでこの文章の解説をするわけではありませんし、わかりにくい文章を糾弾することもしません。ただ一つ、システムを導入する側の社長にご注意申し上げたいのは、「解らないことをわからないままにしてはならない」ということのみです。前述の「非機能要件」の中に会社が本当に必要としていること、例えばシステムを導入した後に業務プロセスはどう変わるのか?システム停止事故が発生した場合、どのような対応をとってもらえるのか?といった機能ではない要求事項がきちんと盛り込まれているのか?等についてきちんとした確認をするべきだからです。

書いていないことは実現されないのが当たり前です。使われている言葉や言い回しがわからないといって、そこを無視して先に進むと、のちのち大問題に発展することが多いものだと認識頂ければと思います。その為には、文書を受け取った際にいきなり善し悪しを判断しようとせず、解らない単語や言い回しにマークを入れて充分な解説を依頼するべきなのです。全部意味がわかるように解説してもらってはじめて購入者側としての判断ができよう、というものです。

念のため擁護しておきますが、提案している会社も悪気があるわけではありません。業界全体がそのような言葉の使い方に慣れてしまった結果、「顧客にわかりにくい」ということを感じにくくなっているだけです。解らないことには解らない、ときちんと指摘して相互の理解を完璧なものにしてゆくことこそ、企業のIT化の成功への道だと考えています。

少しでも疑問符が付く言い回しを見つけた場合、是非追加の説明を求める様にお願いしてみてください。相手は技術者ですので、説明は理路整然とやってくれるはずです。手間と時間をかけても必ず理解してから進める。これが企業のIT化に必ずプラスに働くと思っています。

 

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