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高いものは美味しい

SPECIAL

社内独立店開コンサルタント

株式会社ストアブレインコンサルティング

代表取締役 

経営コンサルタント。アパレル、小売、飲食チェーン指導などに強みを持ち、店長再生から店舗最盛へとつなげていく独自の「社内独立店開」手法を指導する専門家。
自らは店舗を持たない「販売・運営」に特化した経営スタイルに、多くの異業種経営者、店長が注目。路面店から百貨店、都心型SC、郊外型ショッピングモール…など、多様なチャネルで成果を上げ、店舗の強みを引き出す天才と称されている。

いきなりですが、皆さんは「仕事の後の一杯」を楽しみにするタイプですか?もちろんお酒の話ですが、私は結構楽しみにしているタイプで、さすがに毎晩とまではいかなくても、割と嗜む方ではないかな…思います。

さてここに興味深い実験があります。カリフォルニア工科大学のランジェル博士らが行った実験で、ワインを味わっている時の脳の反応をMRIで調べたものです。ワインを飲むと「内側眼窩前頭皮質(ないそくがんかぜんとうひしつ)」という脳の部位が活動するそうです。この部位は「知的快楽」を生み出す脳部位であり、つまりワインを飲むということは、知的な喜びが促される行為とも言えます(でも飲みすぎはダメ)。

実験はこれだけにとどまりません。被験者に5種類のワインを用意し、それぞれ価格を教えながら飲み比べてもらい脳波を測定します。ただし、これにはちょっとした仕掛けがしてあり、実際ワインは3種類で、その中から適当に5回選び、しかも価格もまったくのデタラメを伝えるという、なかなか思い切った実験内容です(やられた方は怒りそうですが)。

気になる実験結果はどうなったでしょうか。皆さんご想像のとおり、教えた価格が高ければ高いほど「内側眼窩前頭皮質」が強く活動するという、実にわかりやすい結果となりました。味自体は関係なく、「高いものは美味しい」という脳内のプログラムがしっかりと作動し、今回の実験結果につながったわけです(参考文献「池谷裕二著 脳には妙なクセがある」)。

脳は正直です。騙されやすいとも言えます。そして先入観はなかなか払拭できません。この特徴は経営者の皆さんも理解しておく必要があります。自社で提供するこだわりの商品や高品質のサービスも、価格設定やパッケージ、見せ方を間違うとその価値は全く伝わりません。それどころか、「安いものは粗悪品」「安っぽいパッケージの商品はダメ」というレッテルを張られ、誤ったイメージがついてしまうことで売れない悪循環に陥ります。

先日ご相談を受けた会社でも、こだわり商品で価格も高い割にはパッケージがやけに安っぽい印象があったため、デザインや包装などを早めに変更するよう助言しています。粗悪品をパッケージでごまかすような悪用は論外ですが、正当な価値をきちんと伝えることには労力やお金を惜しまず投資するべきです。

商品やサービスそのものと価格やパッケージ、提供方法、接客やアフターフォロー等がすべて組み合わさり「ブランド」になります。中小企業は、ブランドの種を持っているにもかかわらず、苦戦しているところも多いのが実情です。「良い商品は黙っていてもお客様が見つけて買ってくれる」とばかりに何の工夫もせずただ待つような会社も少なくありません。私も関わった先で「ちょっとしたことで変わるのにな…」と思ったことは数え切れないほどあります。

お客様は人間です。人間は脳で感じ、考え、行動します。脳の特徴は意外にも単純で、正直です。影響されやすく、騙されやすい面も持っています。これらの特徴を理解したうえで、自社の商品・サービスを価格やパッケージから見直し、「ブランド化」の道を歩んでいただきたいと思います。

 

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