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自宅見学者の『意外』な感想

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

これまで、自宅には数多くの「住まい手」(これからいい家を建てたい人)と「つくり手」(これからいい家を建てる仕事をしたい人)がお見えになりました。かれこれ18年以上も説明してきていますので、バスガイドさんの如く手順と型ができていて同じようなお話をさせてもらうのですが「見学者」それぞれの「反応」は面白いぐらいに様々で多様です。それがまた、自宅ご案内の楽しみでもあります。

今回は、その「見学者」それぞれの「反応」で「えーっ!」と思ったものをご紹介します。

 

「座る場所が32箇所ある」

 

ある人は「吉岡さんの家は座る場所が32箇所ありました!」「しかも全部が居心地のいい場所でした!」と、ドヤ顔で話してくれました。

その話を聞いた瞬間は「えーっ!」「そこまであるかなー?」と思ったのですが、改めて数えてみるとあったのです。32箇所は椅子のある場所で「椅子ではないけど座れる場所」を加えるともっとありました。また、季節によって椅子の置いてある場所が若干違いますので、延べでポジションを数えるともう少し増えます。

1階+2階で29坪足らずの家ですが、今は2人しか住んでいませんので贅沢な話です。自宅は、拾ってきたヴィンテージや折りたためるのなどもあって椅子が多いということもありますが、居場所が多い家は、いい家の条件のひとつを満たしていると思っています。季節や時間帯に応じて居心地のいい居場所がたくさんあるということは、住む人は理屈抜きに幸せ❤︎です。

ここで重要なのは、それが必ずしも物理的に広いということと同義ではないということです。むしろ小さい家だからこそ、ただ居場所が多いだけではなく「且つ居心地がいい」ということに結びついているのです。「えーっ?どういうこと?」と思われるかもしれませんが、これは事実であり実際にご覧になられると身をもって感じることができます。

 

↑自宅に到着されたら最初に目にする「居場所」です

 

↑カフェだったら絶対最初に埋まる人気席ってありますよね

 

 

「なんか酸素が濃い!」

そして、またある人は「吉岡さんの家は、なんか酸素が濃い気がします」「いや、たぶん濃いです」と話してくれました。

このときも「えーっ?」さらに「そんなアホなー」と言ってしまいましたが、改めて考えてみれば「若干は濃いかも」と思えてきました。その理由は、

①大きな木に囲まれている
②囲まれている木の大半は常緑樹である(年じゅう葉っぱが繁っている)
③鹿児島は温暖で、植物が休憩する冬場も日照量が多い(年じゅう光合成している)

さらに自宅の場合の特殊事情を付け加えておきますと「ほとんど年じゅうどこかの窓が開いている」ということもあります。以上を総合しますと「若干は酸素が濃いかもしれない」と思った訳ですが、その方は「僕はわかるんです。絶対酸素濃いです!」と言い残して鹿児島を後にされました(笑)

こんど機会があったら、酸素濃度を測ってみたいと思っています。

 

↑窓を閉めていても「出来たての酸素」が入ってきそうです

 

↑この外観を見たら「酸素濃い!」と思ってしまうかもしれないです

 

 

「今日ここに泊まるんでしょー?」

「住まい手」(これからいい家を建てたい人)の多くは子育て中です。見学の際もご家族そろってお見えになることがほとんどです。あるご家族が見学に来られた際に「おかあさん。今日ここに泊まるんでしょー?」というふうに言ってくれた子供さんがいらっしゃいました。

小学校低学年だったと思います。かなり「素」でした。到着した時点では「連れてこられた」感が全身から放たれていましたが、4時間ほども滞在されてすっかり気に入ってくれたようでした。さすがに「4時間」滞在は最長不倒記録です。皆さん30分〜1時間ぐらいの腹づもりでお見えになることが多いのですが、じっくり自宅を見学していただくのに2時間は必要です。個人差はありますが「よそいき」の緊張感を解いて、本当にくつろぐ体勢に入るのにさらに30分ぐらい必要な場合が多いです。

お時間が許し、ゆっくりされた方は3時間経過後徐々に「無口」になり家族バラバラに好きな場所で過ごすようになります。このあたりからが、生活者として居心地を感じる時間に入ります。その子が沈黙をやぶり、お母さんに「今日ここに泊まるんでしょー?」と問いかけたときには3時間半を経過した頃でした。西陽がかたむき、木漏れ日がゆらゆらする「たそがれタイム」です。この時間帯はさまざまな生物的感性が活性化する時間帯です。

子供にこう言ってもらえるような、そんな家を提供する仕事はやっぱり頑張りがいがあります。決して私がたくさん遊んであげたからではないのです。家がその子に、そう言わしめたのです。品質」の向上はブランドイメージの向上やセールスに直結していくことから、これまで以上に意識しておくべきです。

 

↑たそがれ時の木漏れ日が「お泊まりしたい」トリガーを引くのかもしれません

 

 

長くひとつの仕事をやっていても、その対価を支払う人が「何であなたの仕事を選んでくれているのか?」分かっていない事が多いのです。「いまさら聞かなくても分かっている」とか「わざわざ聞くとネガティブな言葉がこわい」とか言わないでください。進むべき方向が見えにくくなったとき、迷ってしまうときは「なぜお客様はあなたを選んだのか?」を知ることに躊躇しないでください。

その道を行くとしても、違う道を選ぶとしても、これから必要になる何かが必ず見えてくるはずです。

 

御社では、自社の商品を何で選んでいただいていますか?お客様が感じ続けられる永続的な価値を提供されていますか?

 

 

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