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顧客ニーズを気にする社長が見落としていること

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

「そのアイデアは私たちも考えたんですけど、ニーズがないかなあと思って…」― お仲間の社長とビジネス談義をしていたときの会話です。

「顧客のニーズをつかめ!」とは昔からよく言われることですし、ある意味では間違っていないのですが、こういった標語は当てはまる場合とそうでない場合がありますから注意が必要です。

たしかに「ちゃんと顧客ニーズを考えろ!」といいたい商売は世の中にごまんとあります。「これ、誰が買うの?」と言いたくなるやつです。社長が「前からこれを世に出すのが夢だった!」と言って進める新商品などでこういうものがよくあります(笑)。

例えばですが、食べることは好きでも料理は下手な私が、なぜか昔から夢だった「料理教室」を開いたところで、誰も私から料理を習いたいとは思わないでしょう。料理下手な私が徐々に料理上手になっていくYoutube動画を作ったら、もしかしたら観る人がいないでもないかもしれませんが、料理教室事業はおそらく悲惨なことになる可能性大です。

普通に考えて誰も料理下手から料理を習いたいとは思わないわけで、これを「ニーズがなければつくるんだ!」と息巻いたとしてもおそらく空振りに終わるでしょう。

しかしです。ではちゃんと顧客ニーズをつかんで、料理上手は人が料理教室を始めたら売れるのかというと、そう簡単ではないことは誰でもわかることでしょう。なぜなら、そんな人はごまんといるからです。

「もちろん、そんな普通の料理教室じゃあ駄目なのはわかっています。もっと顧客ニーズを深掘りして…」と言って出てくるアイデアも似たようなものでしょう。忙しい主婦向け、料理男子向け、超初心者向け、簡単フレンチ…などなど。いろいろ絞ったところで、どこかで聞いたことがあるようなものになってしまいます。

つまり、すでに「ニーズ」として把握されているもの(顕在ニーズ)を満たしにいっても遅いのです。池がまったくいない池で釣りをしてもしょうがないですが、魚がたくさんいたとしても、魚はその餌にもう飽きちゃってるということです。そんな「いまさら」の商売を追いかけてしまっては、たちまち「集客の悩み」に襲われることになります。

昔から大ヒット商品とよばれるものは、目に見えているニーズを拾っていないものがほとんどです。

よくある例ではウォークマンやiPhoneです。どちらも事前のマーケット調査で「音楽を持ち歩きたい」とか「PCのように使える電話が欲しい」というニーズを拾えていたわけではありません。

最近上場した、ユニークな家電でヒットを飛ばしているバルミューダの商品にしてもそうです。「2万円出していいから、サクサクのトーストが焼けるトースターが欲しい!」と明確に願っていたひとは非常に少数だったはずです。

このように、いまだ世にない商品やサービスについて、事前に「ニーズの有無」を考えてもほとんど意味がありません。なぜなら、人は具体的にイメージできないものについて明確なニーズを持ち得ないからです。提供するもののカタチを見せて初めて人は「欲しいか欲しくないか」を判断することができるのです。

ではどのようにして顧客もまだ気づいていない「潜在ニーズ」を掘り起こすか? ここが旨味のある商売をつくる鍵となりますが、ここで押さえておきたいポイントとしては、「人の欲求(欲望)というものは案外単純である」ということです。

いつの世もなくならない、不変の欲望というものがあります。たとえば以下のようなものです。

死にたくない(長生きしたい)
 金持ちになりたい
 キレイに(かっこよく)なりたい
 モテたい
 頭が良くなりたい
 ラクしたい(サボりたい)…などなど

このような、人がもつ本能から湧き出る欲望は、世の中がいかに変わろうと尽きることはありません。

このような「一段抽象度の高いニーズ」を満たすものであれば、新商品・新サービスの直接的なニーズは顕在化していなくても、火がつく可能性は十分にあります。

例えば前述の料理教室であれば、単なる思いつきのアイデアではありますが、「秘密厳守!モテない男性のための料理講座」といった切り口もありでしょう。モテない男性に対して「顔でも体型でもトークでもなく、『料理』こそがモテ男になる最短の道である」というストーリーを捏造するわけです。

「いいアイデアだけどニーズがない……」結構なことです。そのニーズに気づかせてあげればいいのです。「こういうのが欲しかった!」と言われる商品を欲しがっていた人はほとんどいないという事実を忘れないでください。

サラリーマン的な商品開発を続けた日本の大手家電メーカーの凋落ぶりは誰もが知るところです。「世の中にないユニークな商品やサービスを生み出す」― これぞ経営者冥利、起業家冥利に尽きるというものであり、顧客が望んでいることでもあります。

「ニーズを生み出す側」として道無き道を行く経営者を、当社はこれからも応援し続けます!

 

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