「AI時代に営業職は無くなる」…に真剣に向き合ってみる。
2014年にオックスフォード大学のオズボーン准教授らが発表した論文で話題になった「消える職業」「無くなる仕事」。レストランの案内係やホテルの受付係、保険の審査担当者など身近な仕事が無くなると話題になりましたね。あれから7年、実際に私たちの身の回りから多くの仕事が無くなった(人間がやらなくなった)な~と実感しています。
事前にスマホで予約しておけば店員と話をしなくても店内に入れてタブレットでオーダーできるお店ができたり(この間、誰とも話をしない!?)、保険金の請求も全てネットで完結できたり、あと、私が普段使うビジネスホテルでは、受付カウンターに一応スタッフは立っているけれど、チェックインは全て機械を使ってセルフでやります。たまに使い方が分からない人や荷物を預けたい人の対応をしている程度なので、1人いれば充分…という感じです。いや~本当に機械ができる仕事ってたくさんあったんですね。
そして更に時代は進んで、私が長く関わってきた「営業職」もAIにとって代わられるという声をよく耳にするようになりました。ただ、営業コンサルティングを生業としている私は、「そうは言っても、最後は人間対人間。BtoBではまだまだ営業は必要なんですよ!」と自分に言い聞かせてきましたが、本当にそうなのでしょうか?最近ちょっと思うところもあり、「営業職は本当に無くなるのか?」について考えてみましたので、今回のコラムはそれについて書きました。皆様の会社にも関係あることだと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
さて、『2025年、人は「買い物」をしなくなる』(望月智之氏著)という本をご存知でしょうか?とてもショッキングなタイトルに目を引かれ手に取ってみました。決して、人々が実際にお金を払って何かを買わなくなるワケではなく、買い物における様々なプロセスがなくなるのだと言います。確かに、これまで私が考える「買い物」と言えば、
①実際に店舗に出向く
②現金を用意する
③商品の現物を手に取って見る
④どれにしようか?商品を選ぶ
⑤購入して持ち帰る
ここまでのプロセスを全てひっくるめて「買い物」と言っていました。
しかし、今はどうでしょう?実際に店舗に出向くことももちろんありますが、多くの場合、ネット(私はほとんどAmazon)で注文していつものカードで決済、すると翌日にはわが家に届いている…という新しい「買い物」スタイルが日常に溶け込んでいます。この著者は、まだまだこれは入口で、「今後、消費者の自覚のあるなしに関わらず、日常のあらゆるシーンに買い物が組み込まれていく」という風に表現していました。
買い物が組み込まれていく?…え?どういうこと?
例えば…映画やドラマを見ながら登場人物が着ている服をその場で注文するとか、冷蔵庫の常備品が切れるタイミングで勝手に商品が送られてくる…といった感じなのだそうです。
確かにそうなったら便利かも?とか、すごいね~!と思いながら、まだまだそこまでは…と心のどこかで否定する自分もいますが、きっとかなり近い将来そうなっているんだろうな、と予想できます。昔、ネットで買い物をする友達を見て、「何が送られてくるか分からないし、誰が売っているのかも分からない、それにカード情報とか入力して本当に大丈夫?」と全否定していた自分が、今ではAmazonのヘビーユーザーになっているのですから。(笑)
ただ、この著者は決して人々が自由に買い物できなくなると言っているわけではなく、「ショッピング体験が多様化するんですよ」と書いています。もっと満足感を得られるショッピング体験について探っていく必要がありますよね…と。
この言葉を読んで、冒頭の「営業職が無くなる」も同様に、営業職の在り方や存在意義について再定義していく必要があるな、と感じたのが今回のお話です。
営業がAIにとって代わられる部分があるというのは紛れもない事実です。実際に、そういう分野に疎い私でも、自社に営業マンが私しかいないことから、なるべく効率の良い営業活動をしたいと考えてMA(マーケティングオートメーション)ツールを使って見込み客づくりをしていた時期があります。ターゲットとなりそうな企業リストを作成し、そこへメールDMを出す、そしてメルマガの開封率やサイトの訪問履歴を解析して見込み度の高い相手にアプローチをする…といったことが手軽にできるツールです。
昔はBtoBの営業と言えばテレアポか飛び込みかと言われていましたが、今はこのような便利なツールがありますので使わない手はないですよね。また、これまで、高い交通費や貴重な時間を割いて直接出向いて行っていた商談もほとんどオンラインでできるようになり、一人でこなせる商談件数が圧倒的に増えています。これは同時に効率化・コスト削減にもつながっています。商材によって、この「商談」というプロセスも省略できるので、確かに営業マンの役割と言われてきた「テレアポ」や「飛び込み」、「ルート(御用聞き)営業」「商談」という仕事が不要になる時代もすぐそこなのかもしれませんね。
ただ、ここで我々が考えなければならないことは、先ほどの「買い物」と一緒で、「営業職がまるっと無くなる」のではなく、「営業に求められるものが多様化するのだ」という事実です。闇雲に飛び込みをするだけ、リストの上から順番にスクリプト通りに電話を掛けるだけ、会社が作った商品を右から左へ運ぶだけ…といった過去の営業スタイルでは通用しなくなるが、その分、営業に求められるものが大きく変わってくるのだということを真剣に考えなければなりません。
以前は情報提供が営業の大きな役割でしたが、現在は情報が溢れています。顧客が求めているのは、まだ自分たちで気づいていない課題に気づかせてくれる人(会社)や、その解決策を提案して一緒に推進してくれるような「パートナー」となれる人(会社)なのです。
そのためには、商品知識や行動力だけでなく、顧客の課題を見つけ出す能力(聴く力や質問する力、寄り添う力、理論的に考える力、提案する力)が求められるのです。これは営業社員に限らず、他の社員にも必要な力だと私は思います。全社をあげて営業センスを持った人材の育成が必要な時代が来たのです。
…ということで、今の段階での私なりの結論としては、「営業職はすぐには無くならないが、求められる役割はかなり早い段階でガラリと変わる」…としました。さて、皆様はどうお感じになられたでしょうか?
今の限られた人材で営業力を高めて行こうとお考えの経営者の皆様。
「営業部」とか、「営業経験がある」という基準ではなく、「営業センスがある」という視点で社内を見渡してみませんか?
「未来の営業」ができる社員は他の部署に眠っているかもしれませんよ。
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