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企業のIT化 自由な発想が何より大切

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

新型コロナの関係で様々なビジネスに制約が加わる中、テレワークやシステム化を推進する企業が増えています。様々な取組事例を見聞きしていますが、中には非常に大胆に今までのやり方を変革する取組があるものの、その他大半は「従来の枠の中・従来常識の範囲内でのデジタル化」がほとんどです。これをただ単純に否定するものではありませんが、「惜しいなぁ、もったい無いなぁ」と思うこともあります。

例えば・・・ある製造業の中堅企業が商談の機会がなかなか無い、実物サンプルを見せる機会がなかなか無い、という最近ありがちな困りごとを解決するため、自社のホームページに動画紹介コンテンツを豊富に揃える事例を見かけます。確かに写真やカタログだけではなかなか伝わらないこだわりのポイントとか特徴を動画であれば比較的容易に解りやすく説明できますので、私は否定するものではありません。どんどんやるべきだと思います。しかし、動画で動く・音声で解説できる、とは言っても所詮2次元の映像です。平面なものから得られる情報はどうしても平べったいものになるので、見ている側の欲求を完全に満たすことはできません。

いえ、むしろ静止画像よりも多くの情報が中途半端に得られることにより、見る側に「ここが知りたかったのに・・・」という不満が残る可能性も否定できません。確かに「もっと知りたかった」という不満はそのまま問い合わせに繋がる可能性がありますので、それを良しとしても良いかもしれませんが、人間の感情的な不満というものは、即座に解決できない限りネガティブなイメージとして残ります。しまいには「もうちょっとうまく説明できなかったのか?」という潜在的なクレームに繋がるケースもあるでしょう。もちろん動画のプロであれば、そのような潜在的不満をなるべく無くす様に努力するはずですが、完璧はあり得ません。

私はそのような場面で必要とされる最後の見せ方が「3次元」であり「インタラクティブ(=双方向)」だと考えています。この二つの機能については、ちょっと調べればわかりますが、かなり簡単に精度よく実現できるサービスが世間には存在しています。これらを使えば、WEBブラウザー上で例えばあたかも3D CADを使って製品外観をぐるぐる自由に回してみたりすることも可能ですし、ミクロの視点で製品内部に入り込むことも可能です。なんなら手持ちのスマートフォンに3Dゴーグル(雑誌のおまけで配布していたこともあるぐらい普通のものです)を装着して、本当に立体視することもできます。市販の3Dゴーグルを購入すればかなり理想的な立体視もできます。動画よりもはるかに濃密に製品を知ることができ、知ることができたという満足感を高めることができるでしょう。

更に例えば・・・これは海外の一点加工を主事業とする金属加工メーカーの対応例ですが、今まではホームページで加工賃一覧表を公開していただけだったところを、素材選定、素人でも寸法入力ができる簡易的なCAD機能、加工賃自動計算機能、入力した結果完成する製品を立体視する機能等をホームページに詰め込み、完全に自動受注対応にしました。本来であれば完成図面をアップロードし、見積をもらわなければならなかったところを、簡易的なCAD機能と立体視の機能を持つことによって、セルフサービスで一点ものの加工を注文できるようになったわけです。立体視できるので、顧客は自分の入力ミスを比較的容易に発見できる、というところもミソでしょう。

更に更に、苦境に立たされている旅館業の会社も施設内部のバーチャルツアーができるように立体視できるコンテンツをホームページに追加して好評を得ているという話も聞きます。

いずれも、従来の常識である「きれいな写真と気の利いたキャッチコピーでホームページを解りやすくする」という段階を大きく越え、新しいお客様接点として最新の技術をいとも簡単に取り入れて成功しています。ここでご注意頂きたいのは「高度な技術を社長や社員が持っている必要は無い」ということです。上記に記したそれぞれの事例は、すべて「こんなことできないのかなぁ」という純粋で自由な発想に至った専門外の人が、自分の漠然としたニーズを新しい技術やサービスを使って簡単に実現できないか調べた」という行為そのものが、それにミートする技術との出会いをもたらした、ということです。調べれば大抵のことは表面上出てくる時代です。もし、従来の枠にとらわれ続けていたとしたら、上記の企業もこんな斬新な手段を思いつかなかったかもしれません。

DXが叫ばれていますが、実際にはDXを売ってくれる会社などありません。自由な発想で自らが「こんなことできちゃったりして」という無邪気なことを考えることこそ、これからのIT化を進める一つの大きなきっかけになるはずです。逆を言えば、そのような発想が無い場合、おそらく目に見えるIT化効果は得られないことでしょう。技術的なことを勉強する必要はありません。調べてみよう、人に聞いてみよう、という子供のような発想こそ、これからの企業のIT化にとって大切なマインドなのだと強く思います。

 

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