『ブランディング』考
ブランドとは何か?
「ブランド」は元々、牧場の所有者が自分の家畜などに焼印を施し、他者の家畜と区別するために行われた行為を表す北欧の言葉に由来していると言われている。商標法で保護されている「ブランド」も、同じような商品を見分けるために製造元が取り付けていた商標やマーク、タグ、デザインなどの付属物に過ぎない。しかし、その商品が優れていた結果広く使われるに従い、付属物が「商品が良質だ」「使い勝手が良い」等といった判断基準を消費者に連想させるような働きをするようになる。また、その製品やサービスが品質やコンプライアンスの面で社会的信用を失った場合はその逆もある。
以上、ウィキペディアより抜粋
あらためて見てみると「へえー」という感じで、もっと早く調べとけばよかったなと思いました。大学を卒業してアパレル会社でMD(マーチャンダイザー)として1ブランドの企画担当として仕事をしていましたが、ブランドを任されている割には「ブランドとは何か?」ということは、なんとなく周りを見て解釈していました。
当時担当していたブランドは以前から百貨店や専門店で展開している売上の大きなものでしたから「ブランドとは何か?」とか言っている余裕もなく、いかに売上・利益を伸ばしていくかが即求められる雰囲気でした。当時は、マンションメーカー※と言われる個人が立ち上げる小さなブランドもどんどん現れていて、大企業に成長するというサクセスストーリーも多く出現していました。アパレル分野が一発急成長もあり得るベンチャーであったのです。そういう時代背景もあって、ちょっとしたコンセプトとブランド名やロゴが決まればすぐスタートできるような時代感覚がありました。
※マンションメーカーとはマンションの一室で少数メンバーにより運営されるアパレルメーカーのこと。 個性的な商品で企画から販売までが短サイクルであるのが特徴で、流行の動きに敏感なのが強み。マンションメーカーから大型アパレルに成長することも少なからずありました。
↑大学卒業後、担当させてもらっていたベビー・こども服ブランドの展示会の様子
アパレルの世界ではその息吹きが見られましたが、ここ30年ほどの間にはブランドというものは更にもっと大企業だけのものではなくなってきました。資本力や規模があるからブランドになるのではなくて、消費者を惹きつける何かがあるから強く支持され大きなブランドになっていく、という空気感になりました。そういう意味では、現代は多くのブランドに可能性が開かれたといってもいいと思います。
ブランディングとは何か?
「ブランド」という言葉はずっと以前からありますが、最近になって「ブランディング」という表現をよく目にするようになりました。
「ブランディング」とは「ブランドマネジメント」とも言われ、ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく企業組織のマーケティング戦略。①「認知されていないブランドを育て上げる」あるいは②「ブランド構成要素を強化して活性・維持管理していく手法」でもあります。
また、より具体的な定義として③「競合からの差異化と顧客の忠誠心を構築する目的で、製品と顧客の感情認識との間に関係を構築するプロセス」④「顧客の期待値を満たし、常に高い顧客満足度を実現すること」というのもあるそうです。どうも定義がいろいろあるようなので要注意です。
もし、ブランディングやそのサポートを依頼するとしたら、その定義は①②③④などを挙げて「どれですか?」と確認しておいた方がいいかもしれません。このように定義が色々あるような、新しいワードでは往々にして依頼者が期待していることと、受託者がやろうとしていることが一致していないことも多くあるからです。
ここでブランディングがもたらすものを整理しておくと、
●競合からの差異化
→ブランド名やロゴなどで、競合と区別されて認識されるようになる。
●選択意思決定の単純化・固定化
→顧客の知識が整理されることで、再度同じものを選んでもらえるようになる。
●ユーザーのロイヤル化
→信頼感が増大されることでブランド・ロイヤルティ(紹介・リピート)が形成される。
●価格競争の回避
→『顧客にとっての価値』が訴求され、価格競争に巻き込まれることが無くなる。
●価格プレミアムの獲得
→同じ品質・スペックの商品について、競合よりも高い価格で販売が可能になる。
●プロモーションコストの削減
→以上のことから、販売促進策の必要度を下げることが可能になる。
といったものが考えられます。
さらに、ウィキペディアではこういった補足がありました↓
日本では、ブランディングという概念が広まる前の1980年代から1990年代後半までは、企業はコーポレート・アイデンティティ(CI)、商品はブランド・アイデンティティー(BI)のほか、店などはショップ・アイデンティティー(SI)という名称で規模の大小にこだわらず、多くの企業において計画・実行された。CI、BI、SIにおいてはロゴ・シンボルなどの「ビジュアルデザイン」の実行に留まることがほとんどであったが、現在のブランディングは顧客による「ブランドの体験」全体を範囲として扱う。
以上、ウィキペディアより抜粋
そうです。ちょうどアパレルブランドの仕事をしていた時期に会社ではCI、BI、SIをやってました。1980年代のことです。ご多分に洩れず、当時の社長に提案して自分のブランドのロゴや商品タグなども一新したのを思い出しました。ウィキペディアで解説されているように「ブランドの体験」全体を対象にするというところがポイントで、ここが現代的な捉え方だと思います。
↑フリマサイトで見つけたアパレル時代当時の商品(必死で考えたブランドのロゴネームや商品タグがなつかしいです。「タグ付き」とか書いてもらうとうれしいですね)
経営者視点で捉える
ウィキペディアを読んでいると「ブランドの価値」みたいなものと似た概念に「のれん代」というものが頭に浮かびました。「のれん代」とは会計上の用語で、貸借対照表における勘定科目の一つだそうです。具体的には、企業を売り買いする際の純資産(簿価)と実際の買収価格の差額を指しているのだそうです。
譲渡企業の価値を算定する際には、譲渡企業の貸借対照表に記載されている純資産額(資産 − 負債)を時価に置き換えた金額を基に算出します。帳簿に載っている商品を今売却するといくらになるのかを計算し直さないと、現在の価値は判断できないからです。一方で、企業にはブランドや独自の技術、社員の能力など、形のない非金銭的な資産(無形資産)も多く存在します。純資産額に形のない資産を上乗せして譲渡価格を決める場合に、これらの無形資産を評価した金額を「のれん代」と言うのだそうです。
ということは「ブランドの価値」は「のれん代」に含まれる一部ということになるようです。
長らく、日本の企業は「製品としての品質」の向上にしのぎを削ってきました。しかし、それを重視してきた反面「生活者本人が認識する品質」に目が向きづらかったことは否めない事実です。もちろん「製品としての品質の向上」が必要であることは疑いようがありませんが、実際の生活場面で感じる「生活者本人が認識する品質」の向上はブランドイメージの向上やセールスに直結していくことから、これまで以上に意識しておくべきです。
生活者側からすれば「製品としての品質」はどうあれ、あなたのブランドを買うか買わないかは「生活者本人が認識する品質」で決めるのです。 多くの企業で「顧客中心主義」が繰り返し叫ばれていますが、ことブランディングにおいて重要なのは「顧客中心主義」からもう一歩踏み込んでお客様の生活者としての「認識」から逆算して考える「感性」と「着想」だと言えます。
とは言え、提供するものに「生活者本人が認識する品質」がともなっていない場合、当然のことながら「ブランディング」としては逆効果となり得ることも申し添えておきます。ひとむかし前のように、広告やプロモーションなどのテクニックだけでは通用しないのです。
あなたの会社の提供する家が重視しているのは「生活者本人が認識する品質」ですか?それとも「製品としての品質」でしょうか?
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