人を頼ってはダメ!
新たにビジネスを行う時、新しい事業を始める時などは多くの人の協力と助けが必要になります。特に、自分で会社を立ち上げる時などは、立ち上げにかかわる手続きや銀行口座の作成、事務所、パソコンやプリンター、ビジネス書類の用意、ホームページの作成、などなど、やるべきことが雑多で数多くあります。
事業を法人化するには定款を作って法務局で登記して、法人用の銀行口座が必要で、・・・どこの銀行で作ろうか。メガバンクか地元の信金かネット銀行か・・・。そうそう、そもそも社名やロゴマークはどうするか。印鑑を作って、パンフレットも作らなきゃ。税理士ってどこへ頼めばいい?
やるべきことが多すぎて、あれもこれも手を出してなかなかうまくいきません。自分でやれることと外注したほうが良いこと、専門家に依頼しなければできないこと。整理して順序だてて処理していかないと、2度手間3度手間になってしまいます。
個人としてすでに事業を行っていて、その後法人化する「法人成り」の場合は、これまでの事業の継続であり、仕事の流れとしてとらえられることもできます。しかし、まったく新しく事業を立ち上げ法人化するというのは、自分自身が慣れないこともあり非常に戸惑います。そして最も大切なこと、ビジネスをどう回していくかということです。
「細井さん、ようやく事業環境が整いました。これから本腰を入れて商売をやっていきますよ」
こう話したのは、脱サラして不動産アドバイザリー機関を立ち上げた方です。前職は不動産関係の会社に勤めていましたが、自分で商売をやってみたくなり、前職の経験を活かしてビジネスを立ち上げたというわけです。
そして、様々な人の手を借りて事業環境を整えてきました。この間、営業活動も同時に行っていましたので、あれもこれもで結構忙しくしていました。しかし、いざ事業環境が整えばあとは営業活動を一生懸命やる以外ありません。
ところが、形のないモノを売るビジネスのため、そうやすやすと顧客が見つかるわけでもありません。保険の外交員なら自分の身内や親せき、知人・友人を頼りに売り込んでいく手がありますが、不動産売買のアドバイスをするというビジネスではこの手を使うわけにはいきません。
しかし、そうはいっても自分だけでは顧客をなかなか見つけられないのが現状です。前職のお客様にはアプローチしないと自分で固く決めていますので、それは守らなければなりません。そこで仕方なく親戚や知人・友人に、誰か不動産売買に興味のある人を紹介してもらうことになりました。ところがしばらくして、
「やっぱり人を頼っちゃいかんね。自分の商売だから自分で顧客は見つけないと」
「何人かの知り合いに声はかけたけど、その後連絡が途絶えたりなしのつぶてだったりで・・・」
「もう人を頼るのはやめました」
と、こういう話になりました。
人は基本的に、自分以外には興味がありません。興味がないことをいくら頼んでも動いてくれません。当たり前です。自分の利益にならないことをできる人はそう多くありません。それではどうしたら人は動いてくれるか・・・。
「細井さん、人は頼るものではなく、巻き込むものですよ。ようやくわかりました」
この一語にとどめを刺します。
「人を頼る」ということは自分が主体になっていませんし、自分の利益しか考えていないということです。それが相手から見透かされているのです。だから動いてくれないのです。しかし「人を巻き込む」ということは、自分が主体で他人の利益も考えているということです。
この不動産アドバイザーの方は当初、人を頼って自分の利益ばかりを考えていたようです。しかし、いろいろあって、人を巻き込むことはその人の利益にもなるということに気が付きました。そうしたところ、セールストークや宣伝広告が相手に刺さるようになり、ぽつぽつと問い合わせが来るようになりました。
今はコロナ禍で大変な時ですが、国や政府が何かしてくれないか、市や町や行政がだらしないからこうなるんだ、などと思っても仕方ないことです。世の中のルールが変わったなら、そのルールに合わせてビジネスを変えていけばいいだけのことです。我々商売人は、人を巻き込むことこそが事業を発展させる道と心得るべきです。
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