苦手意識に由来する?IT化・DX推進への障壁
「鈴木さん、システムのことについて私はよくわからなくて…」という社長の言葉、何回聞いたことでしょうか?確かにテクニカルな部分は専門用語も多いですし、何しろ変化が激しいので新しい言葉が次々に出てきてしまうことで、更にとっつきにくくなる。これは事実です。しかし、よく考えてみると、それらはすべて苦手意識を由来とし、自らが半ば無意識のうちに高くしてしまったハードルなのではないかと…。これは英語が苦手な日本人が多い、という事実と似たり寄ったりの事象なのではないかと考えています。このような苦手意識、考え方次第で克服できるというものです。
そもそも日本人は義務教育・高等教育を通じて何年も英語教育をされています。それにも関わらず日本のビジネスパーソンの実に69%が「英語が苦手」と回答しています(一財国際ビジネスコミュニケーション協会調べ 2019年)。今では小学校から英語教育がスタートしていると聞きますが、それ以前でも大抵の人は中学、高校で合計6年間は英語を勉強しているはずです。それにも関わらず、苦手意識が克服できていない。
この原因は諸説ありますが、私は「英語を使う実践的な場が少ない」ことに尽きるのでは無いかと考えています。そもそも英語を含む全ての言語は勉強して身に付けるものではありません。言語は言語で学問ではない、単なる意思疎通手段であり、どのような国で育とうとも、子供はその国の言葉を意識的に教えなくとも会話ぐらいならできるようになります。ところが日本はそれを「勉強」にしてしまった。確かに書いたり読んだりするためには「勉強」は必要かもしれませんが、会話であれば実践の場が豊富に存在すればできるようになります。
さて、一方でIT系のスキルはどうでしょうか?これも学校でプログラミングが必修となるようなのでこれから状況が変わってくるかもしれませんが、私はそう簡単とは思っていません。なぜなら、プログラミングに使う言葉も言語の一つだからです。その点では英語を学ぶのと同じ位置づけです。もし実践的にプログラミングを使う場を得られなければ、英語と同様単にテスト対策の為のお勉強になってしまうことは間違い無いでしょう。
教育者が色々と工夫されると思うので、徐々に改善されていくものと信じていますが、子供達にプログラミングを学ぶ場を提供する為に、常に楽しいことを実現するためのプログラムの場を設けたり、自分や家族が困っている身近なことを簡単なプログラムで解決したりする場を間断なく与え続ける、もしくは、そのような場を自分達で作る手助けをしてあげるのが良いと思います。
そのような場で豊富な修練をした子供達が成長して企業に入ってくれれば、IT化やDX化は今よりもっと進むとは思いますが、私たち大人はそれまで待たないといけないのでしょうか?いえ、そんなことはありません。会社に入社した時、英語検定であるTOEICの点数が悲惨な状況の人は沢山いますが、そのような人達であっても「英語を使う場を豊富に与えれば、あっという間にネイティブスピーカーと議論ができるレベルに到達する人がいくらでもいる」という事実があります。英語でもそのような事実があるのであれば、同類である「言語」を使うソフトウェアやITに関する技術習得も全く同じはずなのです。
しかも、「使う場」は英語よりも簡単に得られます。それこそ業務の中での困りごとや非効率なことは社内にいくらでも転がっているので、それらはITを使って解決する為の良い題材になります。更に、若い社員だけにこのような場を提供するだけではなく、社長自らがその場の問題を自ら解決できるような簡易ITツールも豊富に出回っています。プログラミング無しに設定だけで使えるデータベースアプリや、データ分析ツールも比較的安価に使えます。
こう考えていると、少し手厳しい表現ですが、社長が「私にはITはよくわからなくて…」という苦手意識は、社長自らがある程度は解決できるものなのだ、と断定しても良いと思います。もちろんその為には最初は良い先生の指導が必要かもしれませんが、英語の先生よりもITの先生の方が世の中には多いですし、若手社員の中にも先生ができる人がいるかもしれません。
ITやDXは特に高度なものを除いて、英語習得と同様、「実践の場」さえ豊富に与えられれば解決に向かうことができるのです。社長自らが苦手意識を持てば社員にもそれが感染してしまいます。積極的にトライアンドエラーを推奨し、ITを使った会社の成長に向けた場を提供されていくことが肝要だと思います。IT苦手意識の克服のために…
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