いくら言葉を尽くしても、言いたいことが伝わらない社長のための処方箋
最近、経営者の方からの相談をオンラインで受けることが何回かありました。オンラインは双方にとって便利ですが、反面やりにくい部分もあります。特に初対面だと、相手の背景がわからず、話す内容や言葉の選び方に苦労するのです。
たいていの方は、多少こちらの話が理解できなくても、「はい、はい」と聞かれますので、余計にやっかいです。相手が理解していないことにこちらが気付けないと、相手側の「理解できない」が雪だるま式に膨らんでしまいます。
会話の途中で相手から突拍子もない質問が出てきて、やっと相手が理解していないことに気づくこともあります。それで軌道修正ができれば良い方ですが、ここまで説明してきたことが全く伝わっていないことがわかって、これはこれでがっかりするわけです。
考えてみると、こういうこと、会社のなかで日常的に起こっているのではないでしょうか。社長や上司が一生懸命、社員に指示を出す。社員は神妙な面持ちで聞いているけれど、語られた内容は頭の中を通り過ぎてしまっている。あるいは、何割かしか頭に残っていない。悪い場合は無視されている…。
社長が見ている世界と、社員が見ている世界は明らかに違うので、100%の理解がおぼつかないのも無理はありません。背景や周辺情報を共有していないと、話される言葉のうち相手に伝わる割合はかなり少なくなります。
コミュニケーションは話し手と聞き手の言葉のキャッチボールですから、話し手が上手にボールを投げ、聞き手が上手にキャッチしないと、伝わる話も伝わりません。
だから話し方の勉強をしましょうとか、聞き手の能力を上げましょうとか、そういう話をするつもりはありません。もちろんスキルとして備えていれば役に立つのでしょうが、それよりも大切なのは、相手の文脈で話すということだと思います。
コンサルタントなどの「先生」と呼ばれる人たち、あるいは、誰かに対して指示を出す立場の人たちは、自分が相手に伝えたい情報を、自分が最も使いやすい言葉と文脈を使って話しがちです。ところが、その言葉が、聞き手にとって、異世界の言葉や文脈である可能性は高いのです。それが理由で、話せど、話せど、伝わらないし、相手も心を開かない。
そんなとき、どうすればいいのでしょうか。
まずは相手がどういう文脈で仕事をしているかを確認すること。そのためには、相手の話を聞くということが大切です。よく言う「傾聴」です。聞き手の判断を一切加えず、相手のいうことを肯定的に聞くという姿勢です。
傾聴のメリットは、相手の文脈が理解できることに加えて、相手から信頼を得るのに役立つことです。信頼していない人の話を聞かされても、大方の人は「話半分」になるでしょう。
さて、ここまで社長と社員の関係のなかで書いてきましたが、同じことが、貴社の社員と顧客との間にも成立することにお気づきになられたでしょうか。
どんな素晴らしい商品やサービスでも、目の前にいるお客さんにとって役に立たなければ買ってもらえません。目の前のお客さんにとって役に立つことを示すためには、お客さんの文脈でその価値を伝える必要があります。加えて、こちらを信用してもらうこと。
ビジネスは人と人の間で成立します。どの関係にも同じ原理が働いています。弊社主催のセミナーでもお話しします。ぜひ一緒に考えましょう。
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