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SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

株式会社りぼんコンサルティング

代表取締役 

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

ぼくら このごろ すこしばかり

やさしい気持ちを

なくしてしまったような気がする

ごくたまに きれいな青い冬の空が

みえることがある

それを しみじみと

美しいとおもって

みることをしなくなった

はだかの電線が

ひゅうひゅうと鳴っている

その音に もう

かすかな春の気配をきこうとしなくなった

早春の 道ばたに 名もしらぬ雑草が

ちいさな 青い芽を 出している

それを しんじつ 

いとおしいとおもって

みることをしなくなった

まいにち じぶんの使う道具を

まるで 他人の目で みている

みがいてもやらない

ふきこんでもやらない

つくろってもやらない

こわれたら すぐ捨ててしまう

見あきたら 新しいのに買いかえる

掃除機を買ってから なんだか

掃除が おろそかになった

冷蔵庫を買ってから どうやら

食べものを よく捨てるようになった

物を大切にする ということは

やさしいこころがないと できないことだった

 

今でも広告なしで刊行されている雑誌「暮しの手帖」の初代編集者・花森安治氏の言葉です。今から半世紀前の1972年に書かれた「みなさん物をたいせつに」で、無印良品から発売されている「MUJI BOOKS」に収録されています。

およそ50年前の花森氏の言葉です。今の時代の気分と照らし合わせた時、これを読んだあなたがどう感じたか。すなわち、どういう「目」をもっているか、ということを問い直すための言葉です。

売れる商品と売れない商品の差はなんでしょうか。それは、お客さんの「目」で開発し、宣伝をしているかどうかです。わたくしたちのビジネスは、売れないものを売ることです。売れない商品をリニューアルして、新しい市場をつくることです。お客さんの目になることが起点となります。

その起点に立っているのかどうか? 冒頭の言葉をお読みになったとき、いまひとつ響かないとすれば、今を生きる生活者の「目」とは離れていると考えてください。

コロナ禍で「巣ごもり」になって、時間が生まれました。この一年間で価値観が大きく変わりました。地球環境の負荷に心をやり、人の問題に心をやる、そんな余裕が生まれました。「〇〇ハラスメント」といった言葉を目にしない日はありません。仕事の現場でも、50代と、20代30代の層とでは、価値観がまるでちがいます。

今「みがいたり」「ふきこんだり」「つくろったり」することがとても人気です。「革製品や木の家具をリペアするのが楽しい」「レコードを手入れして聴くのが新鮮」「ファストファッションをやめた。祖母の服をリメイクしてみた」り、手間のかかることに光があたっています。

「手ならい」「手仕事」といったキーワードで検索すると、たくさんのコンテンツが出てきます。高性能、高効率な掃除機も取り入れながら、昔ながらの「箒」も人気。宅配食と組み合わせながら、自分で育てた野菜を食べる。野菜のヘタを捨てないで育てる「リボーンベジタブル(リボベジ)」を楽しんだり、生ゴミを堆肥に変えるゴミ箱も注目されています。

これは “やさしい”生活者が増えたわけではありません。考え方が変わってきているのです。「人間にとって地球環境はなくてはならないものだが、地球は人間がいない方が健全にやっていける」。コロナをきっかけに、生活者が実感として悟ったのです。

実際、コロナで人の活動が止まると自然が輝きました。雲ひとつない蒼天を世界中の人がSNSでシェアしました。名もなき「雑草」が人気です。観察だけでなく、雑草を使った料理を提供するお店も出てきています。

一方、食糧難が叫ばれ「植物肉」「昆虫食」に関する情報が出てきています。ハイブランドのエルメスではマッシュルーム製の代替革の開発に成功しました。アパレルの新商品では「土に還る〇〇」といったコンセプトの商品がたくさん出てきています。

もちろん矛盾だらけです。そもそも人間そのものが地球には負荷、生活者は百も承知です。そして今日も、デジタルチラシと睨めっこし、「安い」「早い」「ラク」の買い物をするでしょう。大事なことは、そうした人間の本音と建前を直視した上で、自社が何を考えるのか。どんな「旗」を立てていくのか。それをどう考えているのかが問われているのです。

ユニクロはこうした時代の空気を察知して、地球環境に配慮していることをコミットし、「緑のドラえもん」を全段広告でアピールしました。生活者はこれをどう感じるのでしょうか。「さすがだな」と思ってユニクロをもっと好きになるのか?

生活者はバカではありません。なぜこんなに安い洋服を作ることができるのか。その背景を知っています。ネットで検索すればたくさん情報がヒットします。安い洋服を作る代わりに、「搾取」されている人たちがいる、ということを知っています。今までの歴史を知っています。それを打破する考え方がトップにあるのかどうか。それが「みどりのドラえもん」なの?

「SDGs」「ESG経営」など、お祭り騒ぎをしているのは大手広告代理店と企業です。企業と生活者との間には微妙な温度差があることに気がつかなければなりません。「大義」だけのアクションは見透かされ、ロゴマークをつけて喜ぶ「お遊び」としか映りません。

情報はすべてフィードバックできます。検索すれば過去の事実が残っています。生活者が書き込むマイナスのレビューは、足跡としてネット上にそのままになっています。

企業の「淘汰」が始まっています。それは、単にコロナのせいではありません。中小企業においては、本気で考え行動する企業が応援される時代です。商品サービスが生活者の幸せや喜びにつながっているかどうか。地球環境に負荷をかけないという基本原則、プリンシプルを持って、小さなことからでも誠実に実行できる企業が当たり前のように生き残っていく時代になります。

国のトップリーダーたちの迷走によって、まだまだ厳しい状況が続いています。しかしそんな中で、お客様の応援によって支えられてきた会社やお店があります。なじみの、地域の、いつものお客様がやってきて、何度もなんども購入してくれる。友人知人を紹介してくれる。善循環が加速した会社があります。

どんな時代に生きていても、人間は明日のことを思い煩い、不安になります。お客様は時代の流れを敏感に察知し、企業や組織の「虚」や「嘘」を肌で感じ取ります。どんなにIT化が進み、機械化が進んだとしても、どんなに便利で効率的になったとしても、人間の脳の進化は、そのスピードとは異なるのです。

お客様の目になる。心を投げ込む。本当に心を込め、心を密に通わせるような仕事をする。そこから商品やサービスをリニューアルしなければ、本物の商品やサービスにはなりません。

ぼつぼついっても田は濁る」という言葉があります。苦しかったりうまくいかなかったりしても、やがて目的に達することができるから絶望するな、という意味です。希望はちゃんと先にある、ということを意味しています。

どんな目で市場をみるか。わたしたちの生活を、いかなる目でとらえるか。そのためには、己の「目」をもつことです。経営者として、企業のトップリーダーとしての己の「目」をもつ以前に、生活者としての目をもたなければなりません。そこから全てが始まるのです。

くりかえします。売れる商品と売れない商品の差、それは、お客様の「目」で開発し、宣伝をしているかです。お客様の目線に立って伝えているかです。石段を10段いきなり飛んで上がる魔法などありません。一段ずつ工程を上がっていくことが必要不可欠です。

なぜ、どうして、お客様が集まらない? 売れない? あなたは、どんな目を持っているのだろうか。自分中心ではなかったか? 自社中心ではなかったか? おごってはいなかったか? 厳しいかもしれない、しかし、そこから米作りが始まります。そこからしか始まらないのです。ぼつぼついっても田は濁る。ひとつひとつ工程を踏み、確かめながら重ねた仕事だけが自信へと変わっていきます。

 

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