社長の「情報発信(アウトプット)」で自然に出来上がるアーカイブ―「蓄積の力」について考えたことがありますか?―
広告宣伝と「情報発信(アウトプット)」はいずれも、我が社の訴えたいことを、外に向かって何らかの形で発信するものです。発信する材料をこちらで作成し、それを何かの媒体に乗せることで、人々の知るところとなるという点では同様のプロセスをたどります。
つまり、広告宣伝と「情報発信(アウトプット)」は、その役割や制作過程などが、よく似ていることは間違いありません。
それでは、この両者の相違点はどこにあるのでしょうか。
一番の顕著な違いは、そのかかる費用にあるのですが、今回はその点は置いておこうと思います。
今回、検討の対象としたいのは、その制作プロセスと出来上がった結果に対する考え方です。
まず、広告宣伝というのはその制作において、通常発注者がイニシアティブをとることができません。CMの制作は、その専門である広告代理店或いは地方の場合は印刷会社などに任せることになります。それはペーパーであっても、動画であっても、広告代理店や印刷会社などが手配したグラフィックデザイナー、カメラマン、コピーライター、ナレーター、タレントといったそれぞれの専門分野の専門家が必要となります。
当然、制作費用は高額なものとなり、素人には手が出せない領域になるのです。
また、制作が完成してそれを媒体に乗せるという段階に至っても、こちら側がイニシアティブをとることはできません。テレビ、新聞、雑誌などの媒体使用料はかなり高額であり、よほどのビッグスポンサーでない限り、有効な時間枠や紙面のいい場所に広告を出すことは難しいからです。
ここにおいても、主導権は向こう側にあり、ほぼ先方の指示通りにせざるを得ないのです。
一方、「情報発信(アウトプット)」の方は、そもそも「制作」という考え方をする必要がないことになります。
極めて基本となるブログやコラムなどの「情報発信(アウトプット)」は、「制作」というよりも単なる「執筆」であり、それほど大袈裟な作業ではないからです。
とはいえ、こういった基本的な「情報発信(アウトプット)」を続けることで、一定の支持者にこちら側の意図は届けられるので、インターネットが普及した現代において、こういった手法を使わない手はありません。
またいうまでもないことですが、この執筆やそれに付随してちょっとした画像などを配信することは、自らの手でできることです。ということは、他者のノウハウや専門的手法に頼る必要がないことになります。
つまり、100%主導権は、自らの手の内にあるために、誰に遠慮することもなく、伝えたいことを伝えることができるわけです。
媒体については、すでに述べたように、インターネット上に構築された様々なシステムを使用するだけなので、その使い方に関する権限もこちら側にあります。
また、媒体を取り仕切るのは自身であり、電波や出版物のようなこちら側よりはるかに大きな業界が存在するわけではありませんので、イニシアティブを他者に握られることはないのです。
このように、広告宣伝と「情報発信(アウトプット)」は、その制作過程と発信媒体に大きな違いがあります。
そして、さらに言えるのは、これら制作し発信したあとの結果が大きく異なるという点になります。
広告宣伝は発信された都度、費消されていく運命にあります。
特に電波媒体のスポット広告などは、それが人々の印象に残り、消費につながるまではかなりの本数流し続ける必要があります。そのために、これが全国放送のメディアともなると莫大な広告費がかかることになり、上場企業クラスの大企業しかこれを駆使することはできなくなります。
とにかく、広告宣伝に関しては、それが自社の中に何らかの形で蓄積されるものではなく、極めて刹那的に費消されるという運命にあるといえます。
これに対して、「情報発信(アウトプット)」の方は、自ら制作し発信するというだけでなく、発信された情報そのものがデータとして手元に残ります。
ブログにしろコラムにしろ動画にしろ、それらはすべてアーカイブとして蓄積されることになります。
もちろんタイムリーな内容のものには、賞味期限というものがあります。時間たってしまえば、読み物としては陳腐化してしまうわけです。しかし、視点を変えれば、逆にあとで振り返ったとき、その時代の貴重な記録やエピソードとして役立つことも考えられます。また、社長の専門性が反映されている場合、その内容を整理すれば、一つの専門解説書として成立させることもあり得る話です。
このように「情報発信(アウトプット)」は、広告宣伝と同じように外に向かって、自社及び自社の商品やサービス等様々な情報を広報するものではありますが、貴重な企業資産として蓄積できるところに大きな価値があります。
このアーカイブは、戦略的活用法を駆使することで、さらにアクティブな使用価値を生むことになります。
具体的な事例としては、従来のメディアへの転用が効くということです。
書かれたものが多く残っていますので、新聞や雑誌、業界紙等への転載が容易にできますし、ラジオの場合はトークのネタ原稿としての役割も発揮します。また、専門分野についての動画などを配信する場合でも、アーカイブをテーマ別に整理すれば、かなりの本数が稼げるはずです。動画の場合、一定の本数がなければ注目されませんので、基になるテーマのデータを持っているということはかなりの強みになります。
このように「情報発信(アウトプット)」はそれを行なう際のリアルタイムでの情報伝達という役割もありますが、それが蓄積されたときの2次利用という大きな価値も生み出すのです。
現在のところ、そこまで戦略的に考えて「情報発信(アウトプット)」に取り組んでいる経営者はほとんどいません。ちょっとした目の付け所なのですが、そういう発想は現段階では珍しいようです。
少しロジカルに考えれば、納得のいく組み立てだと思いますので、是非とも多くの経営者にチャレンジしてもらいたいと思っています。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。