タコつぼから出よう
ショールームイベントや展示会を開催するうえで最も重要なことは集客です。お客様が1人も来なければイベントは成立しないからです。さらに、この集客が最も難しいことであり、大多数の企業はこの集客に頭を悩ませています。
最も難しいことですので、主催企業は知恵を絞ってあの手この手で集客しようとします。そのもっとも典型的なものが飲食サービスです。これまで多くのイベントを見てきましたが、まず間違いなくこの手の恩典をつけて集客しようとします。
「先生、来月のショールームイベントはどうにか集客のめどが立ちました。やれやれです」
当社のセミナーを受講されて、個別相談にお越しになられた経営者の方の言葉です。
「社長、良かったですね。ところで、どんな営業方法で集客したんですか?」
「いや実は先生、屋台を呼んできて、うどん、そば、焼き鳥、串カツなんかを用意することにしたんです」
「それから飲み物も。アルコールは出しませんよ、もちろん」
「飲み食いは効きますね!」
この会社は建設資材の卸売りを事業としていて、定期的に自社ショールームで商談会のイベントを自主開催しています。しかし、思ったように集客できず、取引先や同業他社の目を気にして毎回集客のみに気を取られ、イベントでいくら売り上げがあがったのか、前年同期比はどうだったのか、データはあるものの意識は全くできていませんでした。
「社長、先日のセミナーはきちんと聞いていただいたと思っていましたが、そうではなかったですね」
「社長の会社のように、取引形態がB2Bの卸売業が飲食で集客しても全く意味がないですよ」
この様に申し上げても、
「しかし、集客できなければ恥ずかしいし、恥をさらすようなものでどうしても・・・」
この社長の気持ちは分からなくもないです。冒頭に申し上げた通り、イベントで集客できなければイベント自体の開催意義が問われることになるからです。しかしだからと言って、以前と同じことをしていては全く進歩がないということになります。タコつぼに入ったまま出てこられない状態です。
どうすればいいか・・・?
もう一度従来のやり方でイベントを開催するようアドバイスしました。屋台の手配も済んでいますし、社員の役割分担も決めてあります。今更待ったをかけても現場が混乱するだけです。ただ、社長には1つだけやってもらうことをお話ししました。
それは、前年と比較して、動員組数、売上高、利益率、経費額などの数字がどうであったか。そしてその数字は、目標に対して満足できる数字であったか。これだけです。
結果がすべてを物語ります。結果が良ければやっていることはひとまず正しいと判断できます。しかし結果が悪ければすぐに改善しなければなりません。結果は動かしようのない事実だからです。これにはこの社長も納得して、必ず数字で判断するということで個別相談を終えました。
しばらくして、この社長からイベントの結果について連絡がありました。というより開口一番、
「先生、ショールーム営業コンサルティングをお願いしたいです」
「いつから始めてもらえますか?」
この一言ですべてを理解しました。この社長、ようやく自分でタコつぼから出る覚悟をしたようです。
多くの人は自分がタコつぼに入りこんでいるなんて思ってもいないでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。タコつぼは外敵から身を守る安全な場所であると同時に、何の進歩もない自分を作ってしまう危険な場所でもあります。外敵に襲われる危険性はありますが、自分が大きくなるためにはタコつぼから脱出しなければなりません。要は、その勇気があるか無いかだけのことです。
自分や会社に進歩がないなと思っている経営者の方は、今一度、タコつぼに入り込んでいないかあたりを見渡してみましょう。もし、タコつぼに入り込んでいると感じたら、まずは、そこから出る勇気を持つことです。きっと新しい世界が目の前に開けるはずです。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。