顧客数の伸びは経営力で決まる
市場は顧客の奪い合い
この10年の日本市場の動きとして、経営者が注目すべき点は2つあります。 1つは、日本の人口減少。 総務省が7月に発表した人口調査によると、2015年1月1日現在の日本の総人口は前年同期より0.21%減少。総人口が前年割れとなったのは6年連続、減少数は過去最多になりました。日本の市場規模が減少していくのは経営者に共通する深刻な課題です。
もう1つの動きは、インターネットサービスの進化。 10年前は企業規模の大小にかかわらず日本企業各社が自社サイトを開設し、インターネットで新規顧客獲得に取り組んでいた頃。その後、ブログという新しいメディアの普及により経営者ブログが次々と立ち上がり、さらに現在では、ソーシャルメディアの普及により、また新たなメディアから新規顧客を獲得しようと大半の企業が取り組んでいます。
しかし、人口が減少していく中、新規顧客獲得に注力していくのは合理的な経営なのでしょうか? 市場は顧客の奪い合いとなり、昨日の顧客が今日は他社の顧客になってもおかしくない時代。 新規顧客を獲得する前に、既存顧客を維持する方策が企業の成長戦略には欠かせない。 そう思えてなりません。
買い替えサイクル30年でも
既存顧客の維持活動といっても、業種によって商品の買い替えサイクルは異なり、既存顧客を維持するための活動が今期の売上実績に貢献するとは限らない企業も多数あります。
私は買い替えサイクル30年といわれる住宅業界に在籍していました。当時、上司から刷り込まれた 「既存顧客を大切にすると、新規顧客も集まってくる」 という教えを忠実に守り、在籍期間9年でありながら、売上実績の4割が既存顧客のリピート、紹介によって成り立っていたのです。 買い替えサイクル30年の住宅でさえ既存顧客が売上に貢献する比重は高いのに、買い替えサイクルが3年以内、3ヵ月以内など買い替え頻度の高い商品を扱う企業が既存顧客を大切にしないわけにはいかないでしょう。
いつも私がコンサルティング先の経営者に語るエピソードのひとつです。
顧客数を積み重ねていくために、ロイヤルティ経営に取り組む
宣伝部門や営業部門が、今期の業績づくりのために新規顧客獲得に注力することに異論はありません。しかし、企業の中期経営戦略、成長戦略を実現するためには、既存顧客の維持・拡大が必須です。既存顧客の維持・拡大は一部門の役割ではなく、経営が中長期の視点でアウトラインを示さなければ、いつまで経っても実現できません。
経営者は、顧客数を積み重ねて成長戦略を軌道に乗せるために、既存顧客のロイヤルティ向上に取り組むべきです。
ぜひ、経営指標に顧客数を追加してください。
顧客数のカウント方法についてはまたの機会に説明しますが、全顧客数をカウントする必要はありません。会員登録数でも良いのです。
継続して購入してくれる顧客数(会員数)を伸ばしていく。 そのために、既存顧客のロイヤルティ向上に取り組んでいく。 市場規模が縮小している日本市場において成長戦略を実現するためには、インターネットサービスの技術革新に振り回されることなく、既存顧客のロイヤルティ向上によってアクティブな顧客数を維持・拡大していく全社戦略が必須です。
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