不機嫌が連鎖する法則とその対処法
暦は3月、年度末になりました。この季節になると、比較的大きな会社では、人事異動のウワサがささやかれ、心穏やかでない人が現れます。「いや、うちは中小零細だから、3月だからといって人事異動などありゃせんわ」という社長も、すこしだけお聞きください。心穏やかでない人や不機嫌な人がチームや組織に及ぼす影響についてです。
とある小さな会社の一人の社員が、あと数週間で辞めるという時のこと。社長の志に共感して入社したこの社員、社長にも増して志が高く、それが行き過ぎて、時折、社長とぶつかってしまう。いわく「社長のやり方は甘い、もっとこうしなければ」とモノ申される。
最初は我慢して聞いていた社長もだんだん堪忍袋の緒が切れ始め、行き過ぎた進言に耳を貸さなくなってきた。そんなこんなで数ヶ月後、件の社員は退職を申し出、あと数週間で辞めますとなったとき。
退職が決まった人の行動には、その人の素の顔がよく出てくるものだといつも感心します。
いくら退職するとはいえ、その後も人生は続くわけです。だから、アフターの関係をまずくしないために、あるいは勤務中の感謝を映して、善意を尽くして退職の準備をする人がいます。
逆に、勤務期間中に言えなかった不満うっぷんを晴らすべく、心のタガが外れてしまったようにあれやこれやを口にする人も。
件の社員は、まずいことに後者。社長に進言するくらいですから勤務中の成果も悪くなく、お客さんも、そこそこついている。つまり社内外への影響力があるわけです。
それが不機嫌のオーラを発するわけですから、社内の雰囲気も悪くなってきます。不機嫌の連鎖が始まります。誰もが押し黙り、クワバラクワバラと……。
私は懇意にしている会社の社員が退職をするというとき、笑いながらこんな風にいいます。
「会社辞めても、人間関係は続くから、絶対に悪態ついて辞めないでね」と。
絶交したつもりでも、人と人はどこかでつながっていて、転職先の要人や起業後の有望な顧客の耳に良からぬウワサが伝わらないとは限りません。関係を壊す不機嫌は、損なのです。
そうはいっても感情のコントロールができないという人もいます。というか、こういう人、相当の数に上ります。私とて例外ではありません。だから、アンガーマネジメントたるものが盛んに言われるようになり、その研修サービスが人気を集めていたりするわけです。
心理学の本によると感情は伝播するもののようで、それが良いものであれ、悪いものであれ連鎖を起こします。つまり不機嫌は連鎖します。
不機嫌が連鎖する職場は集中力も仕事のペースも落ちる結果、生産性に悪影響を及ぼします。業務管理上も不機嫌の連鎖は百害あって一利なし。本来はコントロールすべき事柄です。
そこにあまり手が入れられないのは、火中の栗を拾うがごとくのリスクを冒したくないからか、そもそも効果てきめんの解決策がないせいなのか……。
この不機嫌の連鎖の発端が社長や部長など上に立つ人であったりすると、手のつけようがありません。同時に会社のなかで一番ストレスや課題を抱えているのは、こうした人たちであったりもします。つまり不機嫌になる理由が一番多い。
ポジティブワードとネガティブワードの割合が3:1以上の職場は、それ以下の職場より業績が良いという調査結果が報告されています。不機嫌のオーラはネガティブワードと同じくらい生産性に悪影響を与えます。
悪いことや嫌な状況に直面すると不機嫌になるものですが、そのこと自体を俯瞰して状況を把握すれば、不機嫌のオーラを拭い去る方法も見えてきます。意図してやっている場合は別ですが、多くは感情の問題です。でもそれは職場の生産性に直結する問題でもあります。賢く対処したいものです。
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