“シングルタスク”でヒットを導く方法
今ある商品サービスをきっかけに新しい商品サービスに再生させるお手伝いをしているわたくしたちですが、コロナ禍以降、商品リニューアルの仕組みづくりに共感してくださる方が増え、あらためて新しい時代の息吹を感じています。2021年2月16日付の日経新聞13面に「職場救う“お節介おじさん”」という記事があります。これもまた商品リニューアルの仕組みづくりのひとつです。
この記事は、「多様性、生かせてますか?」というシリーズの第一回目で、サントリーの事例が紹介されています。職場のコミュニケーションを活性化させてほしいと63才のシニア社員の奮闘ぶりが書かれています。テレワーク社員が増える中、「隣のおせっかいおじさん、おばさん」=TOOと命名したポストをつくり、在宅の孤独感を癒す包容力で圧倒的な存在感を示しています。
コロナ禍で在宅勤務によりそもそもの組織構成が揺らぐ今、「現役とシニアとの組み合わせ」に着眼したサントリーのイノベーション。これは商品リニューアルの考え方そのものです。シニア社員の圧倒的な強み、それは「時間の積み重ね」「経験」に他なりません。人間の脳は、人体の中で死ぬまで進化し続けることがわかっている今、チームのリニューアルによって生まれる化学変化、それによって得るものは限りなく大きいと予測できます。
いい商品サービスをつくること。いい会社をつくること。このふたつの重なりを生活者が求めはじめています。いい会社を応援したい。ハート(情熱)のある人たちがつくった商品を購入したい。買い物に行くなら感じのいいお店、あの人がいる店で買い物をしたい。かつて当たり前にまえだった価値観が今、再生リボーンしはじめています。
例えば、育ち盛りの子供たちのために選んだ靴下やアンダーウエア。コストパフォーマンスを重視し、ユニクロや無印良品、“通販の割に製品がしっかりしている”セシールで買ってみます。しかし、あっという間に穴があき、家族からクレームが出ます。いまや必需のマスクでも、「安いヤツ買ったでしょう! 」とほころびを見せつけ、子供たちがクレームを言ってきます。
おうち時間が増えたことで、チクチクと針と糸で繕う時間が生まれました。家族から返品されてきた穴の空いた靴下、下着に針を通します。驚くほど生地が薄いことがわかります。針を通して縫うこともできないほど生地が薄く、直すことがむずかしいのです。安いことを理由に、そういうものを買っていたのだ、と手の感覚を通して気づかされます。
自然界の循環は、いろいろな生物が生きていること(生物多様性)で成り立っています。人間も自然の一員です。デジタルは人間にとっての道具にすぎません。道具を上手に使いならが、一人ひとり異なる才能、個性、魅力、得意を発揮させることが、新しい商品サービスを生み出します。今ある商品サービスの得意、お客様に喜ばれてきた魅力を再発見する姿勢もまた同じです。
わたくしどもが提唱する商品リニューアルの考え方は、今ある商品サービス、今いる人たちの「多様性」に力点を置いてきました。多くの企業が、自社の商品サービスに眠る、秘められた魅力を自覚していません。客観的になることがむずかしいがゆえに、眠ったままの状態になっています。再発見と磨きあげには、第三者の視点が役に立ちます。
コロナ禍、 “逆境”を嘆く社長は多いものですが、準備不足と実践不足、そして智慧不足によって招いているケースが多いものです。わたくしどもがお手伝いしている会社では、自社に眠っていた既存サービスを、時代になじませてストーリー化し、ニュースレターとしてお届けしたところ受注、利益増につながったケースが山のようにあります。
今大注目の渋沢栄一翁も、自著のなかで「順境とか逆境とかいうものがこの世にあるのではなく、人の賢愚才無能によってわざわざ順逆の二境がつくり出される」とし、「順境となり逆境となった理由・原因を突き止め、これにどう対処するかを根本から考えることである」と結んでいます。(渋沢栄一「生き方」を磨く/三笠書房/竹内均編・解説)
自社に眠る秘めたる力。原石を再発見し、磨き上げる仕組みをつくることが大切です。その起点は「考え方」です。仕組みとなるカタチをつくっていくことは、その後です。この順番をまちがえることなく、商品リニューアルの仕組み=ステップをつくっていくことが求められています。
コロナ明けが近づいています。今こそ、自社の魅力、強み、智慧の再生、すなわち商品リニューアルに一事全力、全集中しましょう。今ある技術、今いる人びと、今を築いたストーリーをどう見るか、その見方を間違える事なく、時代になじませていくことがポイントです。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。